■日韓の『ジョゼ』比較と韓国版がこうならざるを得なかった理由考察! | 韓国・ソウルの中心で愛を叫ぶ!

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ポッドキャスト韓国語マガジン“サランヘヨ・ハングンマル”の編集長が、韓国と韓国文化の見つめ方を伝授します。

 

「私たちが最も美しかった時間」

 

 

●韓国で熱烈ファンが多い日本版映画!

 

3・1節の休日であった今日のソウルは雨と雪でしたね。とっても久しぶりに韓国映画の紹介をしますが、昨年年末に観た映画で、田辺聖子さんの短編小説『ジョゼと虎と魚たち』を原作とした『ジョゼ(조제)』(キム・ジョングァン監督)ですね。もちろん日本の2003年の映画(犬童一心監督)のリメイク作でもあります!ヾ(≧∇≦)〃♪

 

私は知りませんでしたが、昨年日本で劇場版アニメにもなっていたんですね。そのアニメは観ていませんが、2003年の妻夫木聡さんと池脇千鶴さんによる映画は私も韓国で観ていて、何より韓国で熱烈なファンがとても多い作品であることも知っています。ちょうど日本で『冬ソナ』が大ヒットを始める2004年に韓国で大きく話題になり、韓国映画サイトでの評点も最高点9点を得ています。

 

さて、いっぽうで、今回の『ジョゼ(조제)』は韓国での評点があまり高くない6点です。たぶん日本版を観ていなかった人の評価は高くて、観ていた人が低い評価をしたためではないかと思います。正直、私も日本の作品を観ていなければ、ハン・ジミンさんのジョゼは美しいし、ナム・ジュヒョク君はイケメン好青年であって、何より二人の求め合う姿は感動だし、映像もとてもきれいだし、「とても美しい、いい映画だった」と高評価をしたと思います。でも観ていたため、実際、「7点」くらいの評価です。(^^;)

 

特に、2004年、韓国の観客と共に映画館で観て、韓国人の映評を読みながらその感銘の世界に一緒に共感した者として、この韓国版リメイク作はやはり物足りなく残念であったし、それでここにも紹介せずに済まそうと思っていました。

 

ただ、その後、なぜこの韓国版の『ジョゼ(조제)』がそうならざるを得なかったのかを考えてきました。それでやっぱりそれを書いてみようと思ったわけです。あと、まずは、なぜ日本版を観た人が今回の韓国版を残念に思ったかについても書いてみます。(ここからはネタばれありです。それを願わない方は読まないでください)

 

 

●「なぜ韓国版がそうなったのか」の考察

 

批判の材料はいくつかあると思うのですが、たとえば、「日本版ではジョゼが乗るのが乳母車だったものを車椅子に変えることで、ふつうの障害者問題の話にしてしまった」。日本版では、池脇千鶴さんが演じる下肢麻痺のヒロインのジョゼは、オンボロの乳母車に乗せられ、あるいは妻夫木聡さん演じる主人公・恒夫の背中に負われながら、車椅子を使うことを進める恒夫の言葉をかたくなに拒否しています。

 

それはジョゼが、ジョゼを育てるおばあさんの固陋な障害者差別的考え方によって、社会の中で「障害者」という枠にも組み込まれずに、完全に「いない」存在として隠されて生きてきたところから始まった、独特の「ジョゼの世界」を描き出す材料だったといえます。しかし、韓国版はそれを無視して最初から車椅子にしてしまったことへの不満ですよね。(日本版でもラストはその枠に組み込まれることで終わりますが)

 

続いて、「日本版では存在したジョゼと恒夫の別れのシーンが、韓国版ではまったく描かれずに、ただ突然、『5年後』と飛んで、二人は別れを迎えて別々の道を行っていた、として終わらせてしまっている」。私も観た当時は、ここが一番納得できなかったですね。もちろん日本版を観ていなければそのまま受け入れたのでしょうが、韓国版の「別れ」は、単に時間が経って別れた、というだけになってしまっています。日本版でははっきりと主人公の恒夫が、別れの理由を「自分が逃げたこと」だといっています。

 

「日本版では一番のクライマックスであり、感情が爆発するくだりであるはずの、別れの後の恒夫の大泣きシーンがなくなっている」。これも別れのシーンをなくしたことによるわけですが、なぜ韓国版がそうせざるを得なかったのか。ここが、私が考えてきてそれなりの答えに至った重要な部分です。これが理解できて、私も初めて韓国版の価値が受け入れられました。

 

おそらくそれは、韓国の文化が絶対的な「純愛」を信じているからだし、「信じるべきだ」というものであるからだろうと思います。真の愛であれば、障害者という壁をも乗り越えて当たり前なのに、日本版では、「恒夫」が結局逃げ出してしまい、大泣きすることになる。それは、本当に永遠であるべき愛が、障害者と結婚して生きるという重い現実のたいへんさに負けた悔し涙であったはずです。

 

しかし、さすがに韓国ではそれをドラマにはできないだろうと思いました。日本版で「恒夫」が泣いたのは、彼の愛が決して「同情」などではなく本当に愛だったから、ということの説明になっているわけですが、しかし、韓国人だったならば、実際に本当にそれが真の愛ならば、決して逃げ出すことはない、ということになるだろうと思います。逃げ出したなら、それは「愛」ではなくて「同情」だったということになるのです。

 

つまり、韓国版のほうは結局、それは「愛」ではなくて「同情」だったという話になっているといえます。でも、たとえ、そういう結論にしたとしても、韓国のほうは「愛」のほうを、「純愛」、「真の愛」として守りたかったということになります。すなわち、韓国版『ジョゼ(조제)』は、美しかったけれど、若き日に経験した一つの「同情による恋の幻想」であって真の愛ではなかった、それだからこそ実を結ばなかった、という話なわけです。

 

 

●‘関西弁ジョゼ’を再構築する努力

 

原作小説も日本版映画も、題名は『ジョゼと虎と魚たち』です。ジョゼは、小さい頃から「恐ろしい虎を見るのは、好きな人ができてから、好きな人と一緒に見るんだ」ということを決めていました。「もし好きな人ができなければ見られないことになるけれど、それはそれで仕方ないと思っていた」と。日本版で、ジョゼは怖がりながら恒夫にしがみつきながらその虎を見ましたが、魚のほうはその日、水族館がたまたま閉まっていたことで見ることができませんでした。

 

その時から恒夫はジョゼを抱えていくことに少しずつ限界を感じ出し、本来、その日は実家の家族に紹介して結婚するという方向だった計画を、そこで曲げてやめてしまいます。その後、ホテルでジョゼがいう言葉が、「自分がいたのは誰もいない何も聞こえない真っ暗な海の底だった。そこから抜け出したために、自分はもうそこには戻れない」ということでした。しかし、その言葉を、恒夫は眠っていて聞いていませんでした。

 

これについて、韓国人の観客の映評に以下のようにありました。「ジョゼにとって『虎』は恐ろしくて冷酷な現実、『魚』は深い海の中の自分だけの世界。二人は『虎』を一緒に見ることはできたが、『魚』はついに見ることができなかった。悲しい映画だ」

 

まさに日本版はそのとおりだったろうと思います。しかし、韓国版ではそこをまったく無視して、虎のシーンを入れず、逆にラストで二人が魚を見に行っていた、という在りし日の回想シーンを出します。おそらく監督としては、上の考察のような意味をつけたくなくて、単に日本版に対するアンサー的作品として魚を登場させたのだろうと思います。

 

あと、もっと簡単な部分として気になったのは、日本版はジョゼの話す関西弁ゆえに、独特だけど自然な彼女の存在が、実によく表現されていたのですが、韓国版ではそれを韓国語でやろうとして、単に初対面なのにパンマルを使うアガシという感じになってしまっています。これは同じ効果にはなっていません。すなわち、韓国の礼儀の世界では、単に無礼な人とか気軽な人という程度を超えて、そのまま変な人になってしまうからですよね。まあ、それは文化の差なので仕方ありません。主人公がよく受け入れたものです。ハン・ジミンさんがきれいだったからでしょうね。(^^;)

 

以上ですが、私は原作を読んでいないのであくまで日韓の映画作品だけを比べました。実際、田辺聖子さんの原作小説では乳母車ではなくて車椅子だったようですし、どちらのほうが原作に近いのかは分かりません。その上で、最初に書いたことを繰り返しますが、日本版を関係ないという立場で観れば、韓国版も映像美にあふれた、感動的で泣ける、とてもよくできた映画だったと思います。いろいろな意見もあると思いますし、特にハン・ジミンさんとナム・ジュヒョク君のとてもよく溶け合うケミストリーが中心の、まったく新しい「ジョゼ」として、今となってはやっぱりおススメです!♪ヽ(´▽`)/

 

 

【あらすじ】 祖母とたった二人で暮らす家、そこで本を読みながら想像し、自身だけの世界を生きているジョゼ(ハン・ジミン)。偶然出会った彼女に特別な感情を抱き始めるヨンソク(ナム・ジュヒョク)は、少しずつ、そして率直に近づいていく。しかし、初めて経験する愛が胸が高鳴る一方、胸を痛めるジョゼは、自身の慣れない感情を追いやろうとするのだが…。「記憶するよ、君と共にあったすべての瞬間を…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


映画『ジョゼ(조제)』(キム・ジョングァン監督)予告編。

 

 

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