■素晴らしい“パンソリ入門映画”としてアツく!オススメです!≧∇≦)〃♪ | 韓国・ソウルの中心で愛を叫ぶ!

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ポッドキャスト韓国語マガジン“サランヘヨ・ハングンマル”の編集長が、韓国と韓国文化の見つめ方を伝授します。

「最も韓国的なミュージカル映画」

 

 

●私が「パンソリ」の大ファンとなった経緯

 

韓国の梅雨がいよいよ終了した、めでたい今日、ご紹介するのは、先月初めに映画館で観た作品ですが、私の無条件のオススメ作で、韓国の伝統芸能「パンソリ」の魅力を知ることができる韓国映画『ソリクン(소리꾼)』(チョ・ジョンネ監督)ですね。パンソリの基本かつ決定的な「味わい」を美味しく堪能することができます!♪ヽ(´▽`)/

 

歌で感動的な物語を語る「パンソリ」の、「ソリクン」は歌い手の意味ですが、今、どうしてこういう、あまりにも典型的なパンソリ・ダイジェスト版のような映画がつくられたのか、と疑問に思って紹介文を読んだら、「韓国人なら誰もが一度は聞いたことがあるが、しかしほとんどがきちんと鑑賞したことがない韓国伝統音楽“パンソリ”をミュージカル映画にした作品」とありました。大ショックでしたね。「韓国人のほとんどがきちん鑑賞したことがない」とすればいったい誰が鑑賞するというのでしょうか。(ⅰДⅰ)w

 

そういう私自身は昔からこの「パンソリ」の大ファンで、直接、公演を聴きに行ったことも何度もありますが、YouTubeでいつも思い出したようにしょっちゅう聴いては感動し、毎回のように観るたびに涙しては、何百回、何千回と「鑑賞」しているからです。感動的なくだりの部分はふとした時に口から出てくるほどになっています。

 

韓国の伝統芸能のうちでも、個人的に最も魅力的であると感じるこの「ソリ」の世界といちばん最初に出会ったのは、韓国に住み始めた翌年の1993年春のこと。このような映画の先駆けとしての元祖パンソリ映画であった、巨匠イム・グォンテク監督の『西便制(서편제)』を映画館で観た時だったと思います。

 

しかし、ここまで好きになった契機は、その後、いろいろな公演を自分から探して聴いていくうちに、「韓国パンソリ保存研究会」の理事長で人間文化財でもある趙相賢(チョ・サンヒョン、조상현)名唱の「ソリ」と出会ったことでした。何よりその一番最初に、まさに今回の映画のクライマックスに歌われる『沈清歌』の「沈盲人の目が開くくだり」を聴いてしまったことだったのですが、いまだにその時の歌の節が強く記憶に残っていて、脳裏にそのまま再現できるほどです。それほど感動し過ぎて、その場で嗚咽といっていいほど泣いてしまったからなわけですが、その後、数年間は、講義のたびに毎回、その『沈清歌』のクライマックスの解説をしていたくらいの入れ込みようでしたね。

 

ちなみにその後も、いろいろな作品を繰り返し耳にしていくうちに感じた個人的意見として、このパンソリの特定部分のリズム感や言葉の繰り出し方は、米国発祥のいわゆるラップ・ミュージックのそれに匹敵し、さらにそれをしのぐ歴史と芸能的完成度を持っている、ということがあります。個人的に日本にいる時から、米国の50年代のビートニク文化や60年代のラップの発祥に関心があったのですが、たとえばそれこそ、「沈盲人の目が開」いた後に、連鎖反応で世界中の盲人たちの目がいっせいに順に開いていくくだりなどは、まさに“韓国式ラップ”だとしかいいようがないです。何がいいたいかというと、私のそちら分野に関する欲求も、このパンソリの魅力を堪能する中で解消されていったという話になります。(^^;)

 

 

●キム・ドンワンさん中心のどんでん返しも

 

ということで、なんか個人的な昔話ばかりをアツく書いてしまいましたが、この『ソリクン』は、物語としては、朝鮮時代の若い名人ソリクンの話です。時の悪徳地方領主が犯罪組織を操ってそのソリクンの妻を誘拐し、他の女性たちと共に奴隷にしてしまいます。幼い娘のほうも、母と共に拉致されかけたのですが、母親の助けで何とか脱出し、しかし、その過程で頭を打って娘の目が見えなくなります。ソリクンは愛する妻を捜して、娘と鼓手(ソリクンの横で補佐をする太鼓打ち)と共に旅をしながら、各地でパンソリを披露する、という話です。

 

クライマックスを中心としてソリクンが歌うのが、前述の『沈清歌』という、目が見えない父親の目を開かせるために、自ら仏の前に犠牲になる孝行娘「沈清」の話になります。歌の間、その話の再現ドラマが流れるわけですが、その中で「沈清」役を演じているのが娘と同じ俳優であり、現実の中で幼い娘が盲目になりながら母を捜すのと、歌の中で「沈清」が盲目の父のために命を捧げるのとが対比的構造になっています。しかも、それはまさに1993年の名作『西便制』と同じ構造であって、一種のリスペクトなのでしょうが、『西便制』のほうは、ソリクンの父親が娘の「ソリ」を完成させるために、あえて韓薬で娘の視力を奪う、という衝撃的な話となっていました。

 

本作のラストに、男性アイドルグループ「SHINHWA」のキム・ドンワンさんを中心とした一つのどんでん返しがあるのですが、それはパンソリ・ファンであれば誰でも予想できるものです。「まさかそんな簡単に予想できる展開は来ないだろう」と思っていたら、本当にそうなるので笑ってしまいそうになりました。そういう意味でも、「本当にこれはパンソリを知らない初心者にパンソリの基本的魅力を伝える目的でつくられた映画なんだなあ」と思うとともに、「それほどまでに今の韓国の一般市民はパンソリを知らないのか!」と、一外国人古参ファンとして深刻な衝撃を受けてしまいました。(>_<)

 

まあ、もういいです。パンソリは別に韓国人のものではなくて、パンソリを愛するすべての人のものなわけですから、私が外国人としてこれからもパンソリの魅力を変わらず愛して万民に伝えていくしかないですよね。という意味で、ぜひ、パンソリ初心者であられるであろう多くの日本の方々にこそ、多く観ていただきたいと思った、素晴らしい“パンソリ入門映画”『ソリクン』、アツくアツくオススメです!ヾ(≧∇≦)〃♪

 

 

【あらすじ】 英祖10年(1734年)、消えた妻カンナン(イ・ユリ)を捜しに出た名人ソリクンのハッキュ(イ・ボングン)。唯一の助力者であるデボン(パク・チョルミン)と、途中で同行するようになった没落両班(キム・ドンワン)と共に朝鮮八道を流浪する旅が始まる…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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