■私好みの歴史ファクション映画『国の言葉』の楽しみ方!≧∇≦)〃♪ | 韓国・ソウルの中心で愛を叫ぶ!

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ポッドキャスト韓国語マガジン“サランヘヨ・ハングンマル”の編集長が、韓国と韓国文化の見つめ方を伝授します。

「歴史が盛り込め得なかったハングルの始まり」といい切ってはいますが…。

 

 

●まずは世宗の偉業自体が感動!

 

今月の初めに観たソン・ガンホさんとパク・ヘイルさん主演の歴史映画『国の言葉(나랏말싸미)』(チョ・チョリョン監督)です。ヾ(≧∇≦)〃♪

 

韓国語の文字である訓民正音ハングルの創製について描いた映画で、それ自体は、2011年のハン・ソッキュさん主演のドラマ『根が深い木(뿌리깊은 나무)』に続いて感動的でした。そもそも、15世紀という、いまだ専制君主たちが民を愚かな文盲にして力で治めるのがふつうであった時代に、すべての知識を民に平等に分け与えるために新しい文字を創製した、という世宗大王の偉業自体が感動でないわけはありません。

 

題名は昔の韓国語ですが、『訓民正音』の序文に書かれた世宗自身の言葉、「国の言葉が中国とは異なり、漢文・漢字と互いに通じないため、愚かな民はいいたいことがあってもその意を述べることのできない者が多い。私はこれを憐れに思い、新たに28字をつくったが、ただ人々が簡単に習い、日々用いるのに便利なようにさせたいだけである」から取ったものであって、その題名からして韓国人であるなら誰もが少なからぬ感動を受ける言葉です。

 

 

●仏教界大喜びの我田引水な映画

 

その上で、この映画自体が、物議を醸して「歴史歪曲」とまでいわれているのも無理はなく、かなり信憑性が薄い説を堂々と歴史映画としただけではなく、仏教徒という、韓国社会で決して多くない一部の宗教者たちが大喜びする我田引水的映画となっています。もちろん、冒頭に「この映画は訓民正音の多様な創製説の中の一つを映画的に再構成しました」と但し書きから始まっているわけですが、すなわち、実際にハングル自体をつくったのは世宗大王ではなく、「信眉」という仏教僧侶だ、という説に基づく話なわけです。

 

「信眉」がハングルを創製したという説は、まず、大前提として、「世宗大王という1個人が1人でこんな素晴らしい文字を創り出せるわけはない」という単純な疑問をもとに展開される、さまざまな異説のうちの一つであり、実際のハングル頒布時期より8年も早く出版された『円覚禅宗釈譜』という仏教古書にハングルが出ていた、ということのゆえに、その書籍の著者である「信眉」がハングルを創って世宗に伝えたんだ、という説になっているわけです。

 

それ以外にも、「信眉」がインドのサンスクリット語に通じていたので、子音と母音がある表音文字であるサンスクリット文字(梵字)を参考にハングルをつくったんだとか、世宗自身が「信眉」に「祐国利世」という諡号を与えているのは、その功労によるんだ、などがまことしやかにくっついているわけですが、しかし、その後の専門家による研究で、最も根本である、その『円覚禅宗釈譜』自体が、書体や製本方法、使用単語に現代語があることなどの9種類もの理由によって、これは現代になって造られた偽書である、ということが明確になっているわけですよね。

 

 

●日本僧侶とサンスクリット語で会話

 

ということで、ある意味、ほとんど信憑性のない説であればこそ、私は「歴史歪曲」というよりも、「ああ、ファクション(factとfictionの合成語)というやつだな」と思ったわけですが、そういう異次元世界の歴史、あるいは「こうであっても面白かったかも」というフィクション映画として見た時には、なかなかの傑作じゃないかと思いました。(*´ヮ`)/

 

まずは、冒頭のほうで、韓国が国教としての仏教を捨てて儒教の国になったということで、日本の仏教者たちがやってきて、高麗時代の八万大蔵経の木版を譲り受けたいといってくるわけですが、そこで「信眉」と日本の僧侶たちがサンスクリット語で問答をするという場面が出てきます。韓国側が唱えるお経も原語です。この場面であまりの大胆なシーンにぶっ飛びましたね。実際、私も大学時代にサンスクリット語の原語経典を勉強したので懐かしかったし、まだけっこう聞き取れました。

 

もちろん、「ハングルはサンスクリット文字をもとにつくった」と主張したい映画なので、そのような場面が冒頭に来るわけですが、「真なる仏教者ならばサンスクリット語くらい話せる」という台詞には「うーん」となりましたよね。中国語ならまだしも、サンスクリット語が自由に話せるというのは、さすがに中国やインドでそうとう勉強した高僧だけだったのではないかと思うのですが、いずれにせよ、仏教好きにはたまらないシーンだといえるでしょう。

 

それをはじめとして、とにかく映画全体に仏教色や思想が散りばめられていて、それが実に自由で豊かであり、さらには仏教美術的にも美しく、ちょうど朝鮮時代の儒教朝廷のクソまじめな空気の真っ只中で輝きを放っている、という姿が苦笑いでもありながら、とても小気味よくもありました。私は別に仏教徒ではないですが、でも仏教も儒教も愛する東洋思想愛好家の一人として、「これもありかも」と思えましたよね。何よりもパク・ヘイルさん演じる「信眉」がカッコよくてほれ込んでしまいました。(*´▽`)/

 

 

●ハングルはやはり世宗が1人で創製

 

まあ、でもやっぱり歴史的な事実のほうは、あくまで訓民正音ハングルは、世宗が臣下の儒学者たちの反対を押し切って1人でつくった、という説が一番信頼できるものです。当時の文献による証拠としては、1443年12月の世宗25年実録に「王が直接、諺文28字をつくった」とあり、申叔舟の文集『保閑齋集』にも「王が28字をつくって諺文だといった」とあり、ハングルが頒布されてから3年間もかけて、朝廷最高の学者が集まる集賢殿の学者たちが「訓民正音解例本」をつくるのですが、その序文にも「殿下創製」と書かれているなど、枚挙に暇がありません。

 

中国語の音をすべてハングルにした『東国正音』の序文にも、「声と音を一つひとつ定める時にもすべて世宗の裁可を受けた」とあるし、成三問の『直解童子習』にも「世宗がハングルをつくった」とあるし、何より『朝鮮王朝実録』には、集賢殿の最高学者で、世宗のハングル創製に反対した崔萬理でさえも、世宗との言語学論争では、「王のその学識ゆえに何もいえなくなった」と記録されています。「経筵」という王と儒学者たちの学術議論の場でも、世宗は文句ない優秀な言語学者であったわけです。

 

その上で、1443年のハングル創製後、3年かけて解例本ができた後に、1447年、世宗大王が最初にそのハングルで編纂させたのが、朝鮮王朝の始まりを称える『龍飛御天歌』であり、そしてその次が、釈迦の一代記である『釈譜詳節』、釈迦の徳を称える『月印千江之曲』であるわけです。それは民のために最初につくった本として、儒教国家として出発したその当時は、いまだ高麗時代の名残の仏教文化の中にあった、ということなわけであり、さらには世宗自身も晩年には結局、自身で仏教に帰依しているんですよね。

 

もちろん、その過程で仏教書籍をハングル化することにおいての「信眉」の功績による「祐国利世」という諡号でもあることが分かります。だから、そちらの一般的な歴史の事実どおり描いても、けっこう仏教讃美にはなりそうだし、それも面白いのになあと思いましたよね。それにしても大きなくしゃみならぬ、大胆な「ファクション」をやってしまったものです!♪ヽ(´▽`)/

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


映画『国の言葉(나랏말싸미)』(チョ・チョリョン監督)予告編。

 

 

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