■ちっちゃい世界に憧れてしまう日本人的私の「趣向狙撃」作! | 韓国・ソウルの中心で愛を叫ぶ!

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ポッドキャスト韓国語マガジン“サランヘヨ・ハングンマル”の編集長が、韓国と韓国文化の見つめ方を伝授します。


「12.7cmに小さくなる瞬間、お金の心配は終わった!」


韓国映画以外に、最近観たアメリカ映画でとっても記憶に残っているSF映画が二つあるのですが、一つは2月公開の『シェイプ・オブ・ウォーター(The Shape of Water)』(ギレルモ・デル・トロ監督)で、ご存知、半魚人と人間の女性の純愛を描いたディズニー名作映画にも匹敵する名作SF怪奇映画ですよね。


で、もう一つが、これは1月に観たと思うのですが、マット・デイモン主演で、人間を13センチの「小人」に縮小する技術で環境問題を解決しようという取り組みを描いたコメディ映画である『ダウンサイズ(Downsizing)』(アレクサンダー・ペイン監督)です。これは個人的に心がとても惹かれてしまい、観ている間中、幸せな思いがずっと続いたんですよね。一言で個人的に趣味に合う一本、韓国語ではこれを「趣向狙撃(취향저격=ドストライク)」などと表現するのですが、韓国ではぜんぜんヒットしなかったこの作品に、なぜ私が惹かれたのかをちょっと分析してみました。♪ヽ(´▽`)/



●人類の問題をまじめに描いた「ダウンサイズ」


これらは両方、日本で今上映中だったと思いますが、とりあえず、『シェイプ・オブ・ウォーター』のほうは第90回アカデミー賞で作品賞など4部門を受賞し、第75回ゴールデングローブ賞でも2部門を受賞した名作ですから、いい映画であることは間違いないですよね。実際とっても感動しました。でも、『ダウンサイズ(Downsizing)』のほうが、私にとってなぜそんなによかったのか。これはまず、「コメディ」というには、とってもまじめに人類の問題について考えた作品ではないかと思いました。


すなわち、動植物の細胞縮小技術が確立して、すべてを小さくすることで、地球の環境問題が解決されるというのですが、そんな解決法が提示されても、実際に「小人」になる人は人類の3%にしかなりません。実際、究極の省エネですから、地球のためだけじゃなく、今持っているお金でも生涯、最高の贅沢をしながら暮らしていけるという夢の解決策なのに、です。「小人」たちのための広くて豪華なコロニーが造られ、夢の世界に誘う宣伝文句もしきりに流れ、実際に踏み切った人々の多くも「小人」生活をエンジョイしているにもかかわらず、いつの間にか、世界にはふつうの人たちと「小人」たちの別々の世界ができてしまって、互いに相手を馬鹿にしていたりします。


特に「小人」にならない人間たちが「小人」たちを馬鹿にし、差別している姿が見られます。というのは、「小人」になった人たちは、たしかに小さくなった彼らの視点からは、生活が絵に描いたように豪華になったし、金持ちになったように見えるのですが、しかし結局はそれは分母を変えただけであって、豊かになった気分になっているだけだ、という大前提もあるからです。所詮は「小人」になって小さな幸せに満足している人たちでもあるからです。


それで実際、「小人」となった主人公も、しばらくはその一見豪華な金持ち暮らしを楽しもうとするのですが、自らの最愛の人物がその世界への壁を乗り越えられなかったこともあって、それが空しくなっていくわけです。そしてさらに、その「小人」の世界の中でも、お金を持たずに小さくなってしまった貧困層というものがいて、その人たちはコロニーの外の掘っ立て小屋で、また別のコロニーをつくって暮らしているという現実を知るようになります。ダウンサイズの中のさらにダウン貧困層です。


主人公は、金持ちの家に掃除屋として来ている彼らの中から、ある有名な活動家のベトナム人女性と出会うのですが、彼女によってその差別された別コロニーの現実を知るようになり、さらにその援助もさせられます。そのようにして、彼は彼なりに何が正しいのかを探していきながら、彼女と共に、また別の、今度はさらに特殊なコロニーと出会っていくことになるのですが、まさに人間というのは、それぞれのコロニーにそれぞれの世界をつくって生きていくしかない存在である、ということを感じさせられます。



●“縮小志向”の日本人と“拡大志向”の韓国人


そのようなストーリーの中で、私が何を感じたのかというと、この喜んで「小人」たちの世界をつくってこじんまりと楽しく生活しているのは、ちょっと私たち日本人と似ているなあということです。実際、私自身がこれを観ながら、「小人」たちの世界にとってもあこがれたし、現実でないことが悲しくなるほどでした。


日本人は“縮小志向”などともいわれますが、実はこの箱庭的な、小さくてかわいい世界が大好きな人々なのではないかと思います。私も小さい頃から「ミクロマン」という彼らと同じくらいの「小人」玩具で遊び、レゴや折り紙やプラモデルの世界を構築していくことが大好きで、フィクションの趣向でも、佐藤さとるさんのファンタジー童話「コロボックル」シリーズで夢を膨らませたり、『とんがり帽子のメモル』や『借りぐらしのアリエッティ』のアニメを観ながら「ああ、これが本当だったらなあ」と思ったりした、まさにそんな私をはじめとする、私たち日本人の得意なミニチュア世界であるわけです。


この映画は、韓国でははっきりいって興行に失敗し、目を疑うような低い評点と不評の嵐でしたが、それは私たちとは逆に“拡大志向”の文化を持つ韓国人が、この「小人」たちの生き方に共感できずに、むしろ彼らを馬鹿にする側の人たちになりがちだからではないかと思ったわけです。どんなに「金持ちになるんだ」と誘われたとしても、「それは自分をごまかすことだ」、「小さな金持ちよりは大きな貧乏人のままでいる」といいながら、「いつかは本当のビッグになって見せるぞ!」と夢を膨らませる、そちら側の人たちが多いからではないかと思ったわけです。


そして人間たちは、自分も知らないうちにそんな自らの趣向だけを肯定しながら、いくつものコミュニティをつくってコロニーを成しては別々に暮らし、相手を馬鹿にしてしまいがちなのではないでしょうか。しかし映画のクライマックスは、その“コロニー”たちの間を乗り越える普遍的な価値を叫んできた一人の人物の勇気を通して、その壁を破らしめる力の影響力を表現してくれています。それはもちろん「愛」という力ですね。


何よりもマット・デイモン演じる主人公の悩みと彷徨に、最初から最後まで共感できました。さらに彼を変えるきっかけとなる、差別されていることが当たり前の世界の中で、愛だけを力に現実に立ち向かっているベトナム人女性の登場人物の魅力に、何度も涙が出そうになりました。私はこれが名作であると思ったのですが、ただ単にその舞台が「小さい」からといって、感動や評点まで小さくとどめる必要はないのになあ、というのが、日本人の私が叫びたい結論でしたね。お勧めです!(*´ヮ`)/























映画『ダウンサイズ(Downsizing)』(アレクサンダー・ペイン監督)予告編。

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