韓国では、『猟奇的な彼女』で知られる女優のチョン・ジヒョンさんが、セウォル号犠牲者に対し、赤十字を通じて1億ウォン（約1000万円）を寄付するとともに、「小児癌などを患う子供たちの治療のために使ってほしい」と、峨山社会福祉財団に同じく1億ウォンを寄付したと話題です。
ところで、私もずっと気に掛けながらも、高校生たちの犠牲についてばかり書いてしまいましたが、以下の日刊紙の今日の記事を読みながら、それ以外の犠牲者を悼む気持ちを強くしました。
この記事が紹介している主人公は、小学校の同窓生と共に還暦旅行に出かけたお母さんがいまだに行方不明状態で、自分の結婚式の日が近づくのに、お母さんに祝ってほしいのに…と願うある息子さんの訴えです。最後の通話が、息子を安心させようとする落ち着いたお母さんの声であったということに涙が流れます。翻訳してご紹介します。
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■「『大丈夫だ、心配するな』といったのに…オンマ、いつ来られるのですか」
セウォル号惨事から半月目…結婚控えた息子の哀切な“思母曲”
「愛する僕らのオンマ！
どれほど寒いか想像もできないよ。
オンマに会えなくなって半月が近い。
今も冷たい海中に閉じこめられたオンマを思えば
止めどもなく涙だけが流れる。
ただ一度だけでもオンマを温かく抱いてあげたいのに。
そうできないかと不安で恐ろしいよ。
海に向けてオンマを限りなく呼んではみたけれど
波の音に埋もれては、ただ座りこんでしまう。
それなのに、この国は嘘ばかりいっているんだ」
4/29、セウォル号沈没事故で行方不明となったインさん（59、女性）の次男であるキムさん（32）が、肉声で伝えた母への手紙には、お母さんが生きて帰ってくることだけを待つ、切々たる心とつらさが色濃く滲んでいた。彼の時計は依然として事故当日の4/16で止まっている。
「船が沈む直前までも、『大丈夫だ、心配するな』といったオンマの落ち着いた声に、心がもっと痛む。お兄さんはオンマの最後の声も聞けなかったと苦しんでいるよ」
仁川龍遊小学校の同窓生たちと「還暦旅行に行ってくる」といって家を出たお母さんが、息子のキムさんに電話をかけた時は4/16午前9時43分。しかし、直ちに電話は切られた。荒てた息子が電話を掛けた。お母さんは、「船に事故が起こったが、救助隊が来たといっている。大丈夫だから心配しないでいいし、お父さんと兄さんにもいわなくていい」と話した。
お母さんの声は震えもせず落ち着いていた。それが最後の通話だった。それが息子には苦痛となった。お母さんの行方不明は、結婚を控えたキムさんにとってよりもっと痛ましい。
「オンマ！ オンマが経験している苦痛を、僕たちがとうてい推し量ることなどできないけど、すぐに戻るオンマを迎えようと、ご飯も頑張って食べ、力を出しているよ。オンマがかわいがる未来のお嫁さんも、ずっとオンマのために祈っているよ。帰ってきて、結婚式の日に次男の敬拝を受けなきゃならないじゃない」
息子は午前11時10分、もう一度電話をかけた。しかし、ついにお母さんの声を再び聞くことはできなかった。この時はもうセウォル号が完全に沈没していっていた。
キムさんは珍島に駆け付けた。途中、「学生全員救助」という誤報を聞いたが、一般人たちの救助の知らせはなかった。その後から今までお母さんの便りに接することはできなかった。
お母さんのインさんは事故当時、セウォル号3階の右舷客室にあったことが伝えられた。インさんと同じ部屋にいた一生存者は、「突然、水が入ってきて、窓を消火器で割ろうとしたが失敗した」とし、「10人あまりがライフジャケットを着た後、左舷のほうの水の下に泳いで脱出したが、切迫した状況でインさんの手を逃してしまった」と涙を流した。
還暦を迎え、2泊3日の日程で済州島旅行に発った龍遊小学校の同窓生17人のうち、5人は救助され、8人は死亡した状態で発見された。インさんを含めた4人はまだ行方不明状態だ。
キムさんは、「一般人の行方不明家族たちは、生徒たちのかわいそうな事情に隠されて、支援を訴えることができない」と語り、「皆が一日も早く、家族の懐に帰ってきてほしい」としきりに涙を拭った。
「愛する僕らのオンマ！胸が張り裂けるほど会いたい。助けに行くまでもう少しだけ力を出して！最後に温かく抱いてあげるその日を待つから」
彼の“思母曲（母を思う歌）”は、こだまさえ残し得ずに水平線の向こうへと消えた。
［原典］ ”괜찮다， 걱정 말라더니… 엄마 언제 오실거예요”
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