こんにちは。弁護士の白木麗弥です。
今回は亡くなった時、について書いてみようと思います。

家族の皆に見守られてその生命の火が消えていく…
それはひとつの命の終え方ではあります。

ですが、ケースによってはそうはならない場合がありますよね。
こういうとき、法律はどのようにして「命を終えた時」として考えるのでしょう?

(失踪)

Aさんのお父さんはある日突然家を出たまま、かれこれ60年間音信不通。
生きていれば90歳。でも、生きておられるかどうかもわからない…
お母さんはお父さんを待ちわびたまま亡くなってしまい、一人娘のAさんがぽつんと残っています。

Aさんの住んでいる家はお父さんの名義なのですが、ある時家に車が突っ込んできて家が大分壊れてしまいました。
Aさんとしては車の運転手に対していろいろと損害賠償したいのですが、家の修理に関してはAさんのお父さんが請求しなければなりません。でもお父さんはどこにいるのやら…

このような場合、失踪の宣告を受けることで解決を図ることができます。

不在者の生死が7年間明らかではないときは、家庭裁判所は利害関係人の請求によって失踪の宣告をすることができます。この宣告を受けた人は行方不明になってから7年間が満了した時に死亡したものとみなされます。なお、失踪宣告が確定したら、10日以内に死亡届をお忘れなく。

ところで、ひょっこりお父さんが帰ってきた場合はどうでしょう。
このときには失踪の宣告を取り消すことができます。Aさんが既に賠償金をもらっていた場合、残っていた限度で返還する必要があります。

(同時死亡の推定)
BさんとC美さんは夫婦。二人の間にはX子ちゃんがいます。
BさんはX子ちゃんと遊園地に遊びに行く途中、交通事故に遭い、間もなく2人とも遺体で発見されました(悲惨やのう…)。Bさんのお父さんとお母さんはご存命です。
死亡時刻の検証が行われましたが、どちらが先になくなったのかは明らかになりませんでした。

さて、このような場合、死亡のタイミングでいろいろと問題があるわけです。

何が問題?と思われるかもしれませんが、ゆっくり考えてみましょう。

Bさんが先になくなったと考えると、Bさんの財産はC美さんとX子ちゃんが2分の1ずつ相続します。その後X子ちゃんがなくなるので、結果的にX子ちゃんとBさんの財産はすべてC美さんのものになります。

一方、X子ちゃんが先になくなったとなれば、X子ちゃんの財産は2分の1ずつBさんとC美さんに、そして、Bさんの相続がありますので、Bさん(X子ちゃんの2分の1の財産もここに入るわけですね。)の遺産の3分の2がC美さんへ、6分の1ずつがBさんの親御さんにそれぞれ相続されるというわけです。

そう、命を終えたときは、残された人に影響を与えるわけなんです。

さて、本題に戻って、本件では法律はどう考えるかということなんですが…
こういう場合には法律は同時死亡の推定という規定を置いています。つまり同時に死んだと推定しましょうというわけです。

と、どうなるかといいますと同時死亡によってお互いに相続が発生しないことになります。

Bさんの財産(X子ちゃんの財産は入りません。)の3分の2がC美さんへ、6分の1ずつがBさんの親御さんにそれぞれ相続されます。X子ちゃんの財産は全てC美さんに。

ほんの一瞬でも先後が違うと帰結がわかれるのが相続。
でも、命を終える時は誰にもわからないし、コントロールすることも本来はできないはずですからね。