こんばんは、遅くなりました。弁護士の白木です。

さて、公証役場で遺言書を作る場合は別として、遺言書は自分で書く、のが原則です。
でも、重い病気を患い、自筆では書けない人はどうしたらいいのでしょうか。

実は公証人は出張もしてくれます。ですので、自宅や病室でも公正証書遺言を作成することはできるのです。なお、公正証書遺言の作成時には証人が二名必要なのでお忘れなく。

とはいえ、緊急で公証人が確保できるかも危うい、ということはあるわけで…



そんなときの遺言が危急時遺言です。


危急時遺言の場合は遺言者の口授が可能です。証人三人のうちの一人がこの口授を筆記します(手書きです。)。筆記後に証人と遺言者に読み聞かせまたは閲覧させて、誤りがないことを確認してもらい、証人が署名押印します。はんこがない!というときは、ない理由を記載した上で押印しなかったことを明記します。

推定相続人などの利害関係人は証人にはなれません。また、口授したり、読み聞かせの内容を理解する遺言能力は必要ですのでご注意ください。

本来遺言書を自筆にさせるのは、それをもって遺言者の意思に基づいて作成されたことが表されると考えているからなわけですが、この場合は自書ではないわけですからその点は担保されないですよね。
これを補うのが確認の制度です。

確認は遺言者がご存命の時は遺言者の住所の管轄の家庭裁判所、お亡くなりになったときは最後の住所地の管轄の家庭裁判所に申し立てます。20日以内に行う必要がありますのでくれぐれもご注意ください!


これと紛らわしいのが検認で、自筆での遺言書と同様にこの危急時遺言にも家庭裁判所の検認が必要です。




こーんなにいろいろ手間はかかるものの、やはりこれはあくまでも緊急時のものということで、遺言書を作成して後、6ヶ月経過すればこの遺言は無効になります。ですので、体調が持ち直したのなら先ほどの公正証書遺言の作成を視野に入れておくとよいですよ。

さて、弁護士の仕事で遺言絡みのお仕事は珍しくはないですが、この危急時遺言はかなり珍しいです。
ですが、実はこの間このお仕事がありました。

意識があるうちに、ということで時間的に大変お急ぎだったので(まぁ、そりゃそうです)、ご事情をお聞きし、原案をまとめるところまでは私の仕事。

ですが、もちろん、お話いただくのは遺言者その人であります。

かなり重い状況だというお話をお聞きしていましたが、気を張っておられたのでしょう、私が伺った時には背筋もしゃんとされていて、ご事情を訥々とお話されていました。
その人の歩んできた道が本当に見えてくるような想いがして、本当に涙が出そうでした。

先程も申し上げたとおり、この遺言状の効力はたった6ヶ月の命ですが、それを越えてお元気になって効力をふきとばしてくださればと心からそう思ったお仕事でした。