皆様、おはようございます。
今週は、司法書士の木藤が担当させて頂きます。

■相続人の1人が代表して相続登記はできるか?
お客様からしばし頂くご質問がございます。
例えば、このような事例で・・・
(事例)
お父様がお亡くなりになり、相続人は太郎、二郎、三郎の3人兄弟です。実家の所有名義がお父様のままでしたので、3人の話し合いにより法定相続分どおり、各3分の1ずつで相続することにしました。太郎と二郎は仕事が忙しく、なかなか相続登記の手続きを進められません。
このような事例で三郎さんから頂くご質問にこのようなものがございます。
<質問1>
「取り急ぎ、自分(三郎)の持分・3分の1について相続登記はできますか?」
<回答1>
できません。
不動産登記法上、3分の1についてだけ相続登記がされますと、権利関係を明確に表す「公示制度」の理念に反するため、そのような申請は受理されません。
それではどうするか?
仕事の忙しい太郎さんや二郎さんに代わり、二人の戸籍謄本や住民票などを三郎さんが代わりに取得をします。さらに三郎さんは太郎さんと二郎さんから登記申請についての委任状を貰えれば、
3分の1 太郎
3分の1 二郎
3分の1 三郎
の相続登記を三郎さんは申請することができ、登記も受理されます。
<質問2>
「太郎が海外出張に行っており、委任状も貰えないのですが、委任状なしで各3分の1ずつの相続登記を自分(三郎)ひとりで申請することはできませんか?」
<回答2>
できます。但し、1点注意事項があります。
三郎さんが一人で、自分の持分3分の1についてだけ相続登記を申請することはできませんでした。しかし、三郎さんが太郎さんと二郎さんの分も含めて、言わば3人を代表して、各3分の1ずつの相続登記を申請することは認められております。これを「保存行為(※)としての相続登記申請」と言います。
各3分の1ずつ法定相続分どおり相続することについては3人で合意が取れており、その登記を三郎さんが代表して登記申請をしても、太郎さん・二郎さんには(利益こそあれ)不利益はありません。仕事が忙しい兄に代わって弟が面倒な手続きをするのは良いことですが、1つ注意事項があります。この形式で申請をしますと・・・
太郎さんと二郎さんについて、登記識別情報(≒従前の権利証に当たるもの)が発行されません。
ここが委任状を貰った場合の回答1と、貰わなかった場合の回答2の、大きな相違点です。当初から登記識別情報が不発行ですと、将来、この物件を売却したり、融資に伴う担保設定をする場合などに、太郎さんと二郎さんについては、手続きが面倒になります。時間が許す限り、委任状を貰う形式がお勧めですね。
<余談>
諸般の事情により、保存行為としての相続登記申請をしようとした三郎さん。数年前から行方をくらませていた太郎さんについても住所を証明する「住民票」「戸籍の附票」を区役所でとることができたのですが・・・、なんと、住所が不明のために記載がされていない・・・。
この時も三郎さんは相続登記ができるのでしょうか? 続きは次回にご紹介したいと思います。
※【参考】民法第252条但書
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
今週は、司法書士の木藤が担当させて頂きます。

■相続人の1人が代表して相続登記はできるか?
お客様からしばし頂くご質問がございます。
例えば、このような事例で・・・
(事例)
お父様がお亡くなりになり、相続人は太郎、二郎、三郎の3人兄弟です。実家の所有名義がお父様のままでしたので、3人の話し合いにより法定相続分どおり、各3分の1ずつで相続することにしました。太郎と二郎は仕事が忙しく、なかなか相続登記の手続きを進められません。
このような事例で三郎さんから頂くご質問にこのようなものがございます。
<質問1>
「取り急ぎ、自分(三郎)の持分・3分の1について相続登記はできますか?」
<回答1>
できません。
不動産登記法上、3分の1についてだけ相続登記がされますと、権利関係を明確に表す「公示制度」の理念に反するため、そのような申請は受理されません。
それではどうするか?
仕事の忙しい太郎さんや二郎さんに代わり、二人の戸籍謄本や住民票などを三郎さんが代わりに取得をします。さらに三郎さんは太郎さんと二郎さんから登記申請についての委任状を貰えれば、
3分の1 太郎
3分の1 二郎
3分の1 三郎
の相続登記を三郎さんは申請することができ、登記も受理されます。
<質問2>
「太郎が海外出張に行っており、委任状も貰えないのですが、委任状なしで各3分の1ずつの相続登記を自分(三郎)ひとりで申請することはできませんか?」
<回答2>
できます。但し、1点注意事項があります。
三郎さんが一人で、自分の持分3分の1についてだけ相続登記を申請することはできませんでした。しかし、三郎さんが太郎さんと二郎さんの分も含めて、言わば3人を代表して、各3分の1ずつの相続登記を申請することは認められております。これを「保存行為(※)としての相続登記申請」と言います。
各3分の1ずつ法定相続分どおり相続することについては3人で合意が取れており、その登記を三郎さんが代表して登記申請をしても、太郎さん・二郎さんには(利益こそあれ)不利益はありません。仕事が忙しい兄に代わって弟が面倒な手続きをするのは良いことですが、1つ注意事項があります。この形式で申請をしますと・・・
太郎さんと二郎さんについて、登記識別情報(≒従前の権利証に当たるもの)が発行されません。
ここが委任状を貰った場合の回答1と、貰わなかった場合の回答2の、大きな相違点です。当初から登記識別情報が不発行ですと、将来、この物件を売却したり、融資に伴う担保設定をする場合などに、太郎さんと二郎さんについては、手続きが面倒になります。時間が許す限り、委任状を貰う形式がお勧めですね。
<余談>
諸般の事情により、保存行為としての相続登記申請をしようとした三郎さん。数年前から行方をくらませていた太郎さんについても住所を証明する「住民票」「戸籍の附票」を区役所でとることができたのですが・・・、なんと、住所が不明のために記載がされていない・・・。
この時も三郎さんは相続登記ができるのでしょうか? 続きは次回にご紹介したいと思います。
※【参考】民法第252条但書
共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。