こんにちは、弁護士の白木麗弥です。
さて、今日のお話は…

A子さんは、ご自宅でお父さんの面倒をみて、お父さんの家業の新聞屋さんもずっと手伝って来ました。
A子さんの弟B雄さんはむしろ、お父さんに金銭的に面倒を見てもらった方。自分の事業が困ったときにはお父さんが色々とお金を出してくれて助けてもらってました。


お父さんは、残念ながら亡くなってしまいました。お母さんはお父さんが亡くなる5年前にすでに息を引き取っていて、A子さんとB雄さんの兄弟だけが相続人です。遺言書はありません。
さて、この時に、相続はどう考えたらいいでしょう?

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えぇと…両方共お父さんの子だから2分の1………?

ですが、A子さんとB雄さん、同じ金額で相続では不公平になってしまいそうです。
法律ではそんな状況を調整するための制度があります。それが寄与分や特別受益です。

寄与分とは

共同相続人するひとの中に、被相続人(亡くなった人)の財産の増加や維持について特別の働きをした(特別の寄与)人があるときに、

1 相続財産からその寄与分を控除したものを一旦相続財産とみなす
2 各相続人の相続分を計算する
3 寄与者にその控除分を取得させる

この計算方法で、公平な相続を目指すわけです。

例で行くと、A子さんがお父さんの事業をお手伝いして600万円寄与があったと裁判所が認定したとします。お父さんの相続財産は6000万円です。

と、まずはお父さんの相続財産から寄与分を引くわけです。

6000万円 - 600万円 = 5400万円

お父さんの相続財産は一旦5400万円とみなすわけです。
A子さんとB雄さんの相続分は2分の1ずつですから、

5400万円 × 1/2 = 2700万円
B雄さんは2700万円、A子さんは先ほどの寄与分を足すので
2700万円+600万円 = 3300万円

ということになるわけです。

特別受益とは

あれ?でも、B雄さんはお父さんから援助も受けていたという話でした。その分は何も考えなくていいのでしょうか?

こういう場合には特別受益、という考え方があります。
共同相続人の中に、被相続人(亡くなった人)から遺贈とか、生前に贈与を受けたりした人がいるような場合には、特別受益分(贈与や遺贈分)を相続財産に持ち戻して計算し、各相続人の相続分を算定することにしています。

たとえば、上のケースでB雄さんは900万円を生前に贈与してもらっていたとします。
(ひとまず、関係性を整理するために、この場合は寄与分はおいときますね。)

6000万円+900万円 = 6900万円

相続財産は一回生前贈与を加えた金額でみなされます。
相続は2分の1ずつなので

6900万円 × 1/2 = 3450万円

これがA子さんの相続分。 B雄さんは
3450万円 - 900万円 = 2550万円

ということになります。


さて、本件では、寄与分と特別受益の両方の事情がありますので、

6000万円 - 600万円 + 900万円 = 6300万円
6300万円 × 1/2 = 3150万円

3150万円 + 600万円 = 3750万円 … A子さんの分
3150万円 - 900万円 = 2250万円 … B雄さんの分

ややこしいですが、こうやって計算することで公平を図っているわけなのです。

とはいえ、なくなったご家族にどんなことで寄与したことが、裁判所に「寄与分」として認めてもらえるかというのは、現実ではなかなか難しい所です。ご家族同士の話し合いや調停での話し合いでも難しいなぁと実際に弁護士でも頭を悩ませる問題ではあります。

たとえば、A子さんが一所懸命働いていたところをB雄さんが知っていればある程度の理解は得られますが、そうでないこともあります。A子さんが普段からB雄さんへの愚痴をお父さんから聞かされていれば「もっと援助されていたんじゃないの?」と疑心暗鬼になることも珍しくありません。

次回では、どんなふうにすればこの点が改善されるのか、とか、裁判所ではどんなことが「寄与」として認められているかについて掘り下げる予定です。