今日の担当は、不動産鑑定士の塚田です。
11月1日に、国税庁から、東日本大震災の被害を受けた土地等の評価についての通達が公表されました。
この通達は、指定地域内の土地等について、相続、遺贈、または贈与を受けた場合の、相続税・贈与税の申告時の評価について定めたものです。
震災により被害を受けた人は、相続税の減免措置が受けられる、ということを新井山先生の回(震災と相続税減免措置
)で書かれていましたが、今回の通達は、土地等の評価が減額されるというものです。
今回、国税庁のHPにはたくさんの通達が出ていますが、東日本大震災に係る「調整率表」
を見ていただくのが一番わかりやすいと思います。
東日本大震災に係る「調整率」は、震災特例法に規定する「指定地域」内の土地等の評価について、もともとの路線価や固定資産税倍率方式による評価(以下、路線価評価といいます)に乗じる割合であり、
平成23年3月11日以後に相続等・贈与により取得した土地等はもちろんのこと、平成23年3月10日以前に相続等・贈与により取得した土地等でも、平成23年3月11日以後に相続税の申告期限が到来する方に適用があります。
(「指定地域」は青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、千葉の各県全域と、埼玉県加須市(一部)、久喜市、新潟県十日町市、津南町、長野県栄村です。)
これによると、
福島第一原発事故に伴う、警戒区域、計画的避難区域、緊急時避難準備区域は評価額0。
津波による被害が大きかった地域(建物が流されるなどした地域)は、調整率0.2~0.3(路線価評価の70~80%減)。
その他、浸水の被害を受けたり、液状化の被害を受けた地域、地割れやインフラの被害、原発事故による放射能被害、風評被害などを考慮されて、調整率が定められています。例えば、液状化の被害を受けた地域ですと最大40%(茨城県鹿嶋市、千葉県浦安市など)の減額がされているようです。
また、震災により土地等が海面下に没した場合(その状態が一時的なものである場合を除く。)には、その土地等の価額は評価しない、とされており、評価額0となります。
ちなみに、同様の措置は、阪神淡路大震災のときにもありましたが、このときは、最大25%の減額でしたので、今回の地震による地価への影響の大きさがわかりますね。
なお、今回の措置は、相続税・贈与税の申告の為の評価とはいえ、震災後に不動産取引が止まっている地域も多いことから、今後の土地取引の指標になる可能性が有ります。
軽減があった地域は、相続税は安くなりますが、価値が下がったものと見られてしまい、土地取引に悪い影響が有りそうです。
土地の価値が下がるとその土地を担保に銀行がお金を貸さなくなりますから、経済活動に悪い影響が出ます。
本来、復興の為に経済活動を活発にしなければならない地域であるにもかかわらず、お金が回らないおそれが有ります。
こうした地域については、地価を上げるような政策が必要なのだと思います。