おはようございます。
不動産鑑定士の塚田です。
不動産の時価は、路線価などによって簡単に求めることもできるのですが、収益物件がいくらで売れるかは、それとは別で、利回りが何%かによって違ってきます。
今回は、この利回りというものを具体的に見ていきましょう。
【設例】
2階建て、全10室の、1棟のアパートが1億円で売りに出ている場合を考えます。
現在、1室8万円(共益費込み)で賃貸していて、9室入居中、1室空いている状態です。
(1)満室時利回り
このアパート、満室になると、
1室8万円×10室×12ヶ月=960万円
が、1年間の収入(満室時年収)になります。
このアパートを1億円(10000万円)で買った場合、
960万円/10000万円=9.6%
これが、満室時利回りです。
不動産屋さんの広告に載っている利回りは、満室時利回りのことが多いです。
(2)現況利回り(現状利回り)
このアパートを現状のまま1年経過した場合、
1室8万円×9室×12ヶ月=864万円
が、1年間の年収になります。
このアパートを1億円(10000万円)で買った場合、
864万円/10000万円=8.64%
これが、現況利回りです。
どんなにいいアパートでも、就職や結婚・転勤などで退去することは必ずありますので、1年を通して満室にすることは難しいですから、空室を考慮した利回りのほうが、現実的と言えます。
(3)純利回り
(1)も(2)も、簡単に計算できるのはいいのですが、収入だけを見ていて、経費を考慮していません。
投資金額に対して何%の収益(インカムゲイン)があるかを考えるときには、経費を控除した残りの利益(純収益ともいいます)を基準に考えるほうが正確です。
設例のアパートの経費が1年間で150万円かかったとします。
純収益は、現況利回り-経費ですから、
864万円-150万円=714万円
714万円÷10000万円=7.14%
これが純利回りです。
純収益のことをNOI(Net Operating Income)とも言いますので、NOI利回りとも言います。
J-REITでは、有価証券報告書などで、投資物件のNOIやNOI利回りが開示されています。
NOI利回りの計算上、経費になるものは、
管理費、水道光熱費(オーナー負担分)、公租公課(不動産にかかる固定資産税等)、保険料(火災保険、地震保険など)、修繕費、原状回復費(オーナー負担分)、その他賃貸事業に通常必要な費用です。
経費にならないものは、
減価償却費、ローン金利、資本的支出(資産の価値を高めたり、耐用年数を伸ばすような支出)、税金(所得にかかる所得税や住民税)などです。
ひとくちに利回りといっても、さまざまな意味がありますので、どの利回りのことを言っているのかは、そのつど判断する必要があります。
不動産を投資目的で所有する場合には、現実にいくらの利益があげられるかが問題になりますので、(3)の利回りが最も重要です。ただし、購入するときにそれを計算するのは大変です(税金等の経費については、売主さんから資料をもらわなければわかりませんので、NOI利回りは通常、すぐには計算できません)。
なお、このようにして計算されたNOI利回りが高ければ高いほどいいのか?というと、実はそうとも言えません。
これについてはまた後日説明したいと思います。