おはようございます。

不動産鑑定士の塚田です。



今日は、私の担当では初めて、相続の話をしたいと思います。


相続時には、相続人間で遺産分割が行われます。この、遺産分割おける財産の評価額については、「被相続人が相続開始の時において有した財産の価額」(民法903条)とされています。すなわち、時価によって財産の評価が行われます。時価とは、特定の時点における市場価格(客観的な交換価値)です。


時価は、現金や預金や上場株式などは客観的な価格がわかりますが、不動産は、客観的な価値がわかりにくいので、不動産の時価をどう見るかが問題になります。



相続における土地の評価で相談を受けるケースで多いのが、遺産分割と相続税の評価についてです。




(相談)

遺産分割の際に、土地を公平に分けるにはどうしたらいいでしょうか?


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相続財産が図の左側のような、間口が狭く奥行が長い土地を二つに分ける場合に、相続人間(兄弟間、姉妹間)でどう分けるのが公平でしょうか?

(建物はないものとします)


間口が狭く、縦に分けることが出来ないので、必然的に、手前の土地(図のAの土地)と奥の土地(図のBの土地)に分けられることになります。

このときに、ABを公平に、すなわち、同じ時価になるように分けるにはどうしたらいいでしょうか?


Aの土地は長方形で使いやすそうです。


一方、Bの土地は通路部分には建物が建てられませんし、自動車は止めにくそうですし、大きな自動車は止められないかもしれません。また、四方を隣家に囲まれているため日当りが悪かったり、風通しが悪かったり、ということが多いですし、前回(5/17)の私のコラム でも書いたように、アパートが建てられないなどの建築制限があることもあります。


したがって、同じ面積ならAのほうが時価も高いでしょうから、Bの面積のほうをAより大きくすることで、公平に分割できそうですね。


では、どの程度、面積の差をつけるのが公平でしょうか?


このケースでは、面している道路が同じですから、相続税の路線価方式によって求めることも出来ます。



(路線価方式による評価


上記の土地がこのような土地だったとします。



* 前面道路の路線価を平米当り20万円

* 対象地の地域(路線価図で表示されている地域)を普通住宅地区

* Aの土地を間口・奥行とも12mの正方形(144平米)

* Bの土地の通路部分の幅2m、全体の奥行23m(178平米)


このとき、

Aの土地の単価=200,000(路線価)×1.00(奥行価格補正率)=200,000/平米

∴Aの土地の価格=2,880万円


Bの土地の単価=200,000×1.00(奥行価格補正率)×0.90(間口狭小補正率)×0.90(奥行長大補正率)=162,000/平米

∴Bの土地の価格=2,884万円


となり、ほぼ、Aの価格とBの価格が等しくなります。


しかし、このように分割した土地を実際に売却しようとすると、Bの奥の土地よりもAの手前の土地ほうが高く売れるような感じがします。もちろん、土地がある地域や土地の面積、最有効使用(その土地の経済価値が最も大きくなるような使用方法)によっても結論は異なります。


例えば、分割前の土地の最有効使用がマンションの場合、Bの土地にはマンションが建てられません(東京都の場合)ので、Aの土地とBの土地では価値が大きく違ってきます。


このような評価が必要になる場合には、専門家である不動産鑑定士に鑑定してもらうのも一つの方法です。