皆さん、こんにちは!

火曜の定例コラム、今週の担当は行政書士の植松和宏です。

今回は、遺言の前提として、法定相続と遺言について説明します。



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さて、私が前回ブログを担当した際には、
公正証書について説明しました。

忘れている方は、3月29日のコメントを見てくださいね。



公正証書遺言のメリットをおさらいしておくと、

改ざんが困難。

家庭裁判所の検認も不要。

遺言の無効を主張することはほとんど無理! という特徴がありました。



しかし、作成には費用がかかりますから、

現実には公正証書遺言と実筆証書遺言を組み合わせて、定期的に見直すとよいでしょう。

ここで、今回のテーマとして基本的なところに立ち帰ります。

さて、遺産を受け取れることが出来るのは誰でしょうか


配偶者?

子?

親?

兄弟姉妹?

見ず知らずの赤の他人?

恩師?

日本国内閣総理大臣○○○○?



じつは、いずれも遺産を受け取ることは可能です。

しかし、法律では内閣総理大臣の相続順位など書いていません!

では、どうして??



相続順位について規定しているのは民法です。

民法900条では、配偶者は常に相続人としていますから、その遺産を受け取ることが出来ます。

ただし、ここでいう配偶者とは、正式に婚姻届を提出している法律上の夫婦であることが必要です。

したがって、「内縁の妻」には相続権がありません

たとえどれだけ長い期間の苦楽を共にしてきても、届出があるかないかで大きく変わります。

結婚していた同士が離婚をしてしまっても、配偶者ではなくなりますから相続権はなくなります



そして、同順位の相続人が数人いる場合についても、民法では細かく規定しています。



1.子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。

夫が配偶者と子ども2人を残して亡くなった場合、

その遺産は妻が2分の1、子ども2人で2分の1(子ども1人当たり4分の1)となります。

では、同居の両親が健在だった場合はどうなるでしょう。
その場合でも、民法に従えば両親の取り分はありません。
配偶者と子どもたちだけで分けておしまいです。

では、これまで育ててくれた両親は?

2.配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、

  配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。

結婚はしているものの、子どもがいないまま夫が亡くなった場合、

その遺産は妻が3分の2、直系尊属で3分の1となります。

直系尊属とは、直前の先祖のことを言います。この場合は両親です。
両親とも健在であれば、父母それぞれの取り分は6分の1ずつということになります。
両親が遺産を受け取ることができるのは、子に子(孫)が居ない場合だということです。

では、幼少の頃からずっと一緒に育ってきた兄弟姉妹は?

3.配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、

  配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。

結婚はしているものの、両親はすでに亡くなり、子どもがいないまま夫が亡くなった場合、

その遺産は妻が4分の3、兄弟姉妹で4分の1となります。
兄弟姉妹が多ければそれだけ一人当たりの取り分は減ってしまいますが、ここまで民法では規定しています。

では、配偶者がいなかったら?

その場合は、
子どもがいれば子が100%、
子どもがいなくて直系尊属が健在なら両親が100%、
子どもも両親もいない場合には兄弟姉妹が100%、
を受け取ることになります。

では、天涯孤独であったら?

その方の遺産は最終的に国のものになります。

細かくは、相続人の不存在が確定した後、3か月内に財産分与を申立てる特別縁故者があれば、財産分与の審判を行ないます。
それでも、その後なお相続財産が残存している場合には、その相続財産は国庫に帰属することになります。


このように、遺産の帰属先はすべて法律で定めています。

ところで、これまでに自筆証書遺言や公正証書遺言を書くことをお勧めしてきました。
しかし、どうして相続人が法定されていることを遺言に残すのでしょうか。


民法902条では、

被相続人は~

遺言で、共同相続人の相続分を定め、又はこれを定めることを第三者に委託することができる。

としています。

これは、法定相続の割合よりも、亡くなった方の遺言の内容を重視するということです。

つまり、法律の定めより、当事者の意思が優先されるわけです。

このような、法定事項よりも当事者による任意の取り決めが優先されるものを任意規定といいますが、

相続についてはその典型ともいえます。

したがって、法定相続人ではない者に、遺言で財産を渡すことも可能ですし、

法定相続人の中でも渡す財産の額に差をつけることも可能なのです。


遺言は、亡くなった方の最後の意思表示であり、残された方へのメッセージです。

遺言が無くても、民法に則って法定相続がなされるのに、あえて遺言書を残すというのは、

被相続人(亡くなった人)がそれだけ残された人たちのことを考えていたか、

と考えると暖かい気持ちになりませんか。




さて、では被相続人が最後の意思表示として、

遺言で「内閣総理大臣○○○○に遺贈する!」とか「母校○○大学に寄付する!」というメッセージを残した場合、

相続人としてはびっくりするでしょう。

もらえると思っていたものがもらえない訳ですから。

まあ、内閣総理大臣がこれを受け取るかどうかも分かりませんが。。。

いずれにせよ、この状況では、遺産をもらえるかも、と考えるであろう相続人に対してあまりにも酷です。




そこで、民法902条では、

~被相続人又は第三者は、遺留分に関する規定に違反することができない。

としています。

これは、たとえ遺言があったとしても、法定相続人には最低限の割合(遺留分)を残さなくてはならない!という規定です。

遺留分が認められていることで、相続人は一定の遺産を受けることが可能になるわけです。

つまり、全額寄付しなくてもよく、一部を相続できるということです。

ただ、この遺留分、すべての相続人に認められているわけではありませんが、、、それはまた次回の担当回で説明いたします。





東京は少しずつ汗ばむ気温になってきました。

体調を崩しやすい時期ですので、十分にご自愛ください。




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