こんにちは、弁護士の白木麗弥です。

皆様、ゴールデンウィークいかがお過ごしでしょうか。
今回は、この長い休みの時なのに、少しだけややこしいお話、渉外相続のお話をさせていただきます。


~渉外相続ってなんだろう~

渉外相続ってなんだろう?
これは多くの方がそう思うでしょうから、まずは簡単に説明します。

今回私が取りあげようと思っている渉外相続は、被相続人や相続人に日本の国籍を持たない方がいる場合や日本に居住されてない方が含まれている場合をさしています。

国際化社会なんていう言葉がもはや陳腐化したくらい、日本には世界中のたくさんの国からいらした人々が生活をしています。また、たくさんの日本人が世界の至る所に出向いて生活をしています。

当然、その自然の成り行きとして、その地で結婚をしたり、その生命を終える方もいらっしゃるというわけです。

ではその後の問題、相続はどうなっていくのでしょう?これが渉外相続の問題ということになるわけです。


~どこの国の法律が適用されるの?~


さて、前回の木藤先生のブログではいつの時点での法律が適用されるの?ということが話題になっていましたが、今回のこの問題では、どこの国の法律が適用されるの?ということがまさに問題のポイントになってきます。

この点について定められている法律のメインが「法の適用に関する通則法」です。

法の適用に関する通則法

この法律は相続だけのことを定めているのではなくて、複数の国の法律が適用される可能性がある場合についてどんなふうに考えたらよいかということが定められています。

さて、相続の場合を見てみましょう。相続については第6節が定められています。

第六節 相続

 


(相続)

第三十六条
 相続は、被相続人の本国法による。

 

 


(遺言)

第三十七条
 遺言の成立及び効力は、その成立の当時における遺言者の本国法による。

 

 遺言の取消しは、その当時における遺言者の本国法による。


上のとおり、36条では、相続は被相続人、つまり亡くなった方の国の法律によりますよ、となっているわけです。

まぁ、これが原則ということになります。

~ややこしい例外の話、反致~



よしよし、そいじゃあ、某国の法律を調べてみようじゃないかと弁護士Sが四方八方手を尽くして某国の家族法を調べてみると。。。。。。

「ん?この国の法律では亡くなった地の法律に従えと出てるじゃないか!!日本の法律じゃ、某国の法律に従え、某国の法律じゃ日本の法律に従え、これじゃ堂々巡りじゃないか~」

こんなこともあります。これが「反致」という状態です。

このような場合には、先程の法の適用に関する通則法では日本の法律に従いなさいと定めています(第41条)。

また、日本の法律を基準に考えるともう一方の国の法律に従うと公序良俗に反するような場合、これも日本の法律に従いなさいとされています(第42条)。

~外国籍の方が日本にある日本人の財産を相続するとき~

さて、それでは一般的なルールをご説明したところで、それぞれ具体的なケースをこれからは考えていきましょう。

亡くなった方は日本人、相続する可能性のある方の中に外国人が含まれている場合を考えます。

そして、亡くなった方には不動産がありました、こういう場合はどうなるでしょう?

先程のルールに当てはめて考えてみると、被相続人は日本国籍の人ですので、相続に関しては日本法が適用されます。したがって、相続人の範囲は日本の民法に従って考えれば良いということになります。ここで留意するのは、相続人の範囲に関して、親族をどう考えるかについてもこの 法の適用に関する通則法をそれぞれ当てはめてどの法律に従うべきかを検討しましょうということです。

その後、その方が相続人であることがわかったとなって、話も整ったのでじゃあ登記を・・・・

待って、待って、もう一つ考えなくちゃ。

この登記に関しても、法の適用に関する通則法には定めがあるのです。

第三節 物権等

 


(物権及びその他の登記をすべき権利)

第十三条
 動産又は不動産に関する物権及びその他の登記をすべき権利は、その目的物の所在地法による。

 

 前項の規定にかかわらず、同項に規定する権利の得喪は、その原因となる事実が完成した当時におけるその目的物の所在地法による。



この設定ケースでは、第13条によれば不動産は日本にありますので日本の法律に従って相続をしようということになります。

登記に必要な書類の中には住民票などご本人にはそもそもない書類もありますので、どのような書類で置き換えられるかを専門家にご相談くださいね。

ということで、一番シンプルな問題であるこの場合だけでも、結構いろいろ考えることの多い渉外相続。

ややこしいですが、また次に私の番が来た時にはこの続きを書こうと思いますので、お楽しみに(?)