皆さん、こんにちは!
火曜の定例コラム、今週の担当は行政書士の植松和宏です。
前回のブログ担当から約1ヶ月が経ちましたが、その間に戦後最大といわれる大災害が発生しました。
この東日本を襲った大災害で亡くなられた方と被災された皆様に心よりお悔やみとお見舞いを申し上げます。
地震発生時、私は静岡にある大学で授業の最中でした。
鉄筋コンクリートの校舎が大きく揺れ、尋常じゃない地震であることは想像しましたが、
地震発生から2週間以上が経過し、被害の大きさは予想を絶するものでありました。
先週のブログで、私たちのメンバーである白木弁護士が述べていますが、
復旧復興のために私たちkizunaではできるだけのことをしていこうと考えております。
少しずつでも今できることを着実に進めていきましょう。
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さて、私が前回ブログを担当した際には、
遺言書の中でも一番簡単な自筆証書遺言について説明しました。
忘れている方は、2月15日のコメントを見てくださいね。
実筆証書遺言のメリットをおさらいしておくと、
どのような紙に書いてもOK!
どのような筆記具を使用してもOK!
遺言書を書いた日付(確定日付)が明確なっていればOK!
すべて実筆で書き押印があればOK!
というものでした。
だから、遺言を書いた後で、遺産を受け取ることになる人(相続人)と不仲になった場合には、
すぐに書き換えることができるなどと状況に応じてすぐに対応できるというメリットがありましたね。
ただし、問題点として。
せっかく書いた遺言書が紛失してしまったらどうなるのでしょう。
せっかく書いた遺言書が、書き換えられてしまい、
当人の意思とはまったく異なる遺産分配になってしまったらどうなるのでしょう。
まったく問題のない遺言書を書き、すべての相続人が納得できる遺言をしたためたのに、
遺言書が見つからずに相続されることになってしまったらどうなるのでしょう。
遺言書が燃えてしまったら。
遺言書が盗まれてしまったら。
・・・・・
考えていくときりがありません。
では、改ざんもされずに、しっかり保管されて、紛失しないように遺言を残すには、どうすればよいのでしょう。
それは、公正証書遺言を作ることです。
公正証書とは、公証役場とよばれる法務局が管轄する役所で作成する書類のひとつです。
公証役場は、全国に約300箇所にあり、
法務大臣が任命した公証人という法のプロが、
法人の定款や私文書の認証業務、確定日付の付与などを行っています。
そのカタそうな役所で作る遺言書が、公正証書遺言です。
もう、これだけですごい効力がありそうな気がしませんか。
実際には民法で公正証書遺言の書き方はして指定しています(民法969条)。
公正証書遺言を作成する場合は、
遺言者(遺言をする人)は、遺言者があらかじめ選んだ2人以上の証人を立会人として、
公証人の面前で遺言内容を口述します。
そして、公証人は遺言者が述べた遺言内容を文章化します。
その後、遺言者と証人が内容に間違いがないか確認した後に、
遺言者、証人、公証人がそれぞれ署名押印します。
こうして作成された遺言書の原本は、
20年間、または、遺言者が100歳に達するまでの期間、
いずれかの長い期間は公証役場で保存します。
したがって、原本が紛失することもないし、
改ざんされるおそれもありません。
破られたり、捨てられることもありえません。
さらに、公正証書遺言のメリットとして、
この遺言書は法のプロである公証人と証人の立会人の下で作成しますので、
他の自筆証書遺言では必要となる家庭裁判所での検認も不要となります。
さらに、立会人には弁護士や法律専門職がつくことがほとんどですので、
何重にも専門家のチェックが入ることになります。
したがって、形式も内容も、まず問題ないといえるでしょう。
こうして作成された公正証書遺言は、非常に強い証拠力がありますので、
もし遺言の内容に不満がある相続人がでてきても、
その遺言の無効を主張することはほとんど無理です!
このように特徴を挙げていくと、公正証書遺言は完璧なものに見えてきますね。
それなら、最初から公正証書遺言を作成すれば、
自筆証書遺言なんて必要ないような気がしませんか。
しかし、自筆証書遺言にもメリットとディメリットがあるように、
公正証書遺言にもメリットがあればディメリットもあります。
では、公正証書遺言のディメリットとは、どのようなことがあるのでしょうか。
まず、公証人や証人が必要である以上は、費用がかかります。
日本公証人連合会によると、
(目的の価額) (手数料)
500万円~1000万円以下 ・・・ 17000円
1000万円~3000万円以下・・・ 23000円
3000万円~5000万円以下・・・ 29000円
5000万円~1億円以下 ・・・ 43000円
1億円~3億円以下 ・・・ 43000円に5000万円までごとに13000円を加算
というように費用が決まっています。
そのほか、証人として弁護士や司法書士、行政書士に立会いを依頼すれば、
その費用も発生します。
これだけ費用がかかるとなると、自筆証書遺言のように、簡単に書き直すわけにはいきませんね。
さらに、自筆証書遺言であれば誰にも見せずに内容を秘密にできるのに、
公正証書遺言では少なくとも公証人と証人には内容を見せることになってしまいます。
では、公正証書遺言と自筆証書遺言、どのように使い分ければ良いでしょうか。
定期的に公正証書遺言を作りつつ、若干の修正は確定日付が新しい自筆証書遺言で対応する。
また、状況が大きく変わることがあれば、公正証書遺言を作り変える、というのが望ましいですね。
しかし、必要性は理解していても、
公証役場へ行くことや、専門家に相談する機会はなかなか無いのが現実でしょう。
また、遺産を受け取る側(相続人)から、遺言書を作ることを勧めるのも、気が引けてしまうことでしょう。
けど、遺言は先祖から子孫に対するメッセージです。
法律要件は専門家に任せて、まずは子孫にどんなメッセージを残したいのか考えてみましょう。
遺言の法的要件は重要ですが、もっとも大切なことは本人の想いです。
難しく考えずに、わが子に対する想い、孫に対する想い、
こうした想いを文字にしてみることから初めてみてはいかがでしょうか。
きっと、あたたかい気持ちですばらしいメッセージが書けるのではないでしょうか。
ただし、遺産をもらえるのは子孫だけではありません。
民法によると、配偶者は最初に遺産をもらえますし、
先祖である親が子の遺産を受けとることもあります。
では、誰が遺産を受け取ることができるのでしょうか。
次回は、法定相続と遺言の関係についてご説明します。
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3月29日、東京では花粉が飛びまくっています。
東京九段の靖国神社のソメイヨシノも咲き始めたそうです。
しかし、日本列島は緊急事態のまっただなかです。
私が非常勤で教えている大学では卒業式は中止で、入学式も延期になり、
授業開始は4月後半です。
今年は大変な1年になりそうですが、次にブログ当番がまわってくるときには、
明るい話題がコメントできるように、いまできることを精一杯やっていきましょう!