おはようございます。
今回の担当は、不動産鑑定士の塚田です。よろしくお願いします。
不動産鑑定士というのは一般の方にはなじみがないかもしれません。初めて会った人には、「不動産鑑定士って何をするの?」とよく聞かれます。
不動産鑑定士は、その名のとおり不動産を(鑑定)評価している(※1)のですが、そもそも鑑定評価とは何なのか、鑑定評価が必要になる場合はどんな場合か、など、今後のコラムを進めていうちにわかりやすくなるように書きたいと思います。
不動産は相続財産の価値の中でも、大きな部分を占めることが多く、遺産分割においても、相続税の申告・納税においても重要性が高いと思います。
また、不動産は預金や上場株式、投資信託などと異なり、全く同じものは世界中にたった一つしかないので、客観的な価格・時価がわかりにくく、遺産分割の際にも問題になる場合が多くあります。
不動産の価格(時価)は、不動産鑑定において正常価格と呼ばれているもので、適正な市場価値を表すものです。
「適正な」とは何か、というのは説明が難しいところですが(※2)、特殊な事情が無い場合における通常の取引価格と考えておけばいいと思います。
なお、相続税申告のときの評価も時価による(相続税法22条)とされていますが、この時価の解釈、具体的な評価方法については、財産評価基本通達(※3)に規定されており、土地の評価はいわゆる路線価方式により求められます。
時価とは、通常売買される価格ということですから、どんな人が買い手となるのかによって変わってきます。
例えば、住宅街の更地や住宅(土地家屋)、空室のマンションであれば、その土地や住宅、マンションを購入して自分で住みたいと考える人が買い手になるでしょうし、住宅街にある不動産でも入居者のいるアパートやマンションであれば、資産運用、不動産投資を考える人や会社が買い手になるでしょう。
不動産に限らず、物の価値というのは、
(1)その物がどれぐらいの費用をかけて作られたものか
(2)それがどれぐらいの価格で売れるのか、どれぐらいの価格で買えるのか(相場がいくらぐらいか、と言い換えることも出来ますね)
(3)それを利用する事でどれぐらいの利益(便益とも、効用とも言い換えることが出来ます)が得られるか
という3つの点が考慮されることにより、決まるものです。
(これを、価格の3面性といいます)
不動産鑑定士は、評価の対象となる不動産(対象不動産)について、これらの3面性の観点から、データを収集し、複数の評価方法を適用し、比較検討することにより、不動産の鑑定評価を行っています。
前置きが長くなってしまいました・・・。
相続のときに、不動産の価値(時価)が問題になる理由は、不動産が相続財産の中でも大きな部分を占めるにもかかわらず、法定相続分できれいに分割できる場合がまれであるためだと思います。
ここまで書いてきたとおり、不動産の価格(時価)を性格に求めるためには、専門家が複雑な計算をする必要があり、費用もかかります。
そこで、ここからは、不動産のおおよその価格を簡単に調べる方法を書きたいと思います。
(1)土地の価格を調べたい場合、調べたい土地の路線価図 http://www.rosenka.nta.go.jp
を調べる
例として、私の事務所の所在地(東京都港区虎ノ門4-1-28)の、一番新しい路線価(平成22年度)を調べてみますと、http://www.rosenka.nta.go.jp/main_h22/tokyo/tokyo/prices/html/19003f.htm
の真ん中あたりに、1480Cと書かれています。
1480というのは、1㎡当たりの価格(千円単位なので、㎡あたり148万円ということになります)です。路線価は公示価格(≒時価)の80%ですので、0.8で割り戻せば、おおよその時価になります。
148万円÷0.8=185万円/㎡
これが、平成22年1月1日時点の、土地1㎡あたりの価格になります。
1年以上前の価格ですし、同じ道路に面していても、土地の面積・形状・道路に面している長さ・面している道路の向き・道路との高低差・傾斜の有無・現在どんな建物が建っているか・隣接地にはどんな建物が建っているか、等によって価格は変わってきますが、近隣のおおよその土地の相場というものがつかめると思います。
(2)不動産情報サイトで調べる
http://realestate.yahoo.co.jp/
Yahoo不動産
http://www.athome.co.jp/
アットホーム
http://www.homes.co.jp/
Home's
等のサイトで、現在売りに出ている不動産で、調べたい不動産と似ている不動産の価格(単価)を調べることができます。
不動産情報サイトで調べることが出来る価格は、売り出し価格ですので、実際に取引されるのは、これより5~10%程度低いことが多いようです。
調べたい不動産と似ている不動産を5~10個選び、比較してみると、おおよその相場がわかると思います。
路線価は土地価格しか調べることが出来ませんが、不動産情報サイトでは、やや手間はかかりますが、マンションや、建物付の土地の価格(売り出し価格)を調べることができます。
これで、不動産のおおよその価格を求めることが出来たと思います。
但し、この方法はあくまで「相場」を知るためのものです。
不動産によっては、相場の半分でも売れないような、危険な不動産があります。このような不動産を見抜くには、不動産鑑定士のようなプロに見てもらうのが一番ですが、次回の私の担当のときに、危険な不動産を見抜くための不動産調査の方法について書きたいと思います。
(※1)不動産の鑑定評価に関する法律第2条第1項に、「不動産の鑑定評価とは不動産の経済価値を特定し、その結果を価額に表示することをいう。」と定義されています。また、不動産鑑定士でない者は、(報酬を得て)不動産の鑑定評価を行ってはならない、と規定されています(不動産の鑑定評価に関する法律第36条第1項)。
(※2) 詳しくは、不動産鑑定評価基準 http://tochi.mlit.go.jp/kantei/20090828kijun_zenbun.pdf の下から11行目以降を参照してください。
(※3)法律ではないので法的拘束力はありませんが、相続税の申告では殆どこれに準拠しています。