出所:「我が国の情報通信市場の実態と情報流通量の計量に関する調査研究結果 (平成21年度)―情報流通インデックスの計量― 」平成23年8月  情報通信政策研究所調査研究部


大島です。今日もきずなメールは34の自治体で、約3万2000人の読者に読んでいただいています。きずなメール事業では、自治体の子育て応援メール事業としてやることが多いので、「自治体が市民に届けたい情報をどうしたら届けられるか。市民のSOSに応えられる事業を自治体はたくさんやっている。それをSOSな状況の市民にどうしたら目にしてもらえるか」 ということを日頃考えてばかりいます。
 

上は総務省発表の「情報インデックス」。日本で流通している情報量を調査したものです。これによると、日本で流通している情報量である「流通情報量」の増加率は、インターネットの場合、調査している9年間で約70倍。 一方、実際に消費されている情報はせいぜい3倍しか増えていません。


つまり僕らは歴史上、かつてない大量の情報にさらされて日々を暮らしているのです。

 

こんな状況を個人レベルで見た場合、どんなことが起こっているか? たとえば昔、この調査の最初の期間である平成13年(2001年)だと、こんなイメージ。下図のオレンジ色の顔の大きさは「人間一人が受け取れる情報量」と思ってください。

 


 

この頃だと、自治体がウェブサイト作っても、けっこう見に来てくれました。「情報発信」として機能していました。では今は? こんな感じ。

 

 

 

流通情報量は70倍に増加し、さらに増え続けています。でも目、耳、脳の容量など、人間一人が受け取れて対応できる情報量は、限られています。つまり皆、自分のスマホに目と耳を奪われている状態です。


情報発信は2つに大別できます。必要な人が、自分で探して情報を得る「プル型」。紙なら配架してあるチラシ、ネットなら検索して飛んでくるウェブサイトがわかりやい例です。もう一つが「プッシュ型」。最初に受け取りに同意したら、あとは自動的に手元に届くタイプです。紙なら手紙や新聞、ネットならメールやLINEが代表的です。

 

 

何がいいたいかというと、情報流通量が激増して皆スマホに目を耳を奪われているような状況では、

 

「プル型」の情報発信は瀕死の状態。届けたい情報は、「プッシュ型」でしか届かない時代

 

ということです。

 

 

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さらにいうと、すでに「プッシュ型ですら届かない時代」にまで来ていると思います。

 

「プッシュ型」は、こちら一方的にプッシュしても、相手が受け取りに同意してくれないと拒否されるのが難しいところ。これを情報の「受け手」の立場から整理すると、

 

・自分の知りたいこと=とにかく検索して探す。

・プッシュ型=信頼とか自分がOK出した人だけ、プッシュ型で送っていいよ。

 

だから、流通情報量が70倍に増えて目と耳の奪いあいになっている今、始まっているのは

 

情報にも人格が求められている。情報の擬人化

 

ではないでしょうか。

 

プッシュ型で送るとき、送る側が自分本位だと簡単に見抜かれしまう。送り手として選ばれるためには、「中身」や「姿勢」が問われるようになったようです。

 

これを人間関係に例えると、たとえば「わーわーわーわー聞いて聞いて!という人と日々のコミュニケーションはけっこうつらい。いつも空気みたいにいて、いざというときにも逃げ出さずにそばにいてくれる人がいい」ということのようで、まさに夫婦や恋人のような感じでして…汗 とまれ、情報あるいはメディアも「擬人化」されているのです。いわゆる「インフルエンサー」とはこういうことではないでしょうか。

 

最後に少しだけ手前味噌ですが、「きずなメール」はコンテンツだけでなく、その届け方や、VisionMissionまでも含めた総合的な事業活動として従来にない形で展開しているのは、まさにこうした状況や時代の流れに形造られたといえそうです。「送り手」の世界観が問われる時代。大変ですが楽しくもあるので、活動を見守っていただければ幸いです。