明日を拓く現代史
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読書の備忘です。
著者の谷口智彦氏は、安倍首相の「戦後70年談話」の原稿を書いた人です。
僕はこの談話で、他国の批判をかわしながら、踏み込んだ歴史観を示すというアクロバットに成功しているように感じました。また世界がかなり、似たような歴史観を共有しているなのだとも感じました。グローバル化ですね。
翻訳されて中国や韓国でも読まれただろうけど、大きな反論はなく、結果的に文化の異なる多くの人々に橋をかける形になっていると感じました。「内容がない」という批判もあるけど、無味乾燥でもないし、何かひとつ通った軸のようなものがあります。Amazonで検索したらすぐ出てくるので、悔しいけどAmazonって凄いですね。
著書は、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授としての講義をベースとしたもの。人気の講義だそうです。以下備忘。
・終戦後、日本での共産主義は、今の僕らが思うより存在感があったらしい。そういえば戦前のヨーロッパもそんな感じだったと、ドラッカーの自伝に書いてあった。
・高校時代、黒板にラテン語を書く社会の先生がいて「ゲルマン」というあだ名でした。そのゲルマンが「西洋史はギリシャとローマとキリスト教を軸にしたらわかりやすい」といっていて、年をとるにつれて確かにその通りだと思います。そして同書は、戦後史で同じような「ふたつの軸」を教えてくれました。
■ブレトン・ウッズ体制(1944年)
米ドルを基軸とした金兌換による固定為替相場制ができた。
■ニクソンショック(1971年)
ニクソン大統領が、米ドルの金兌換一時停止を宣言し、ブレトン・ウッズ体制の終結を告げた。これにより変動相場制に移行。
このふたつで、米ドルが世界の基軸通貨になった、基軸通貨を決済する言語が世界の標準語になったと。
・ソ連崩壊について「ソ連には、例えば自国通貨建ての国債を大量に発行し、それを日本の生命保険会社に買わせて資金調達するといった、米国なら容易にできたことが全くできなかった」。これができなければ結果的に国民から搾り取るしかないので崩壊した、と。国債の運用って、こういう意味があったんですね。
・米国はドルでサウジアラビアの石油を買う。その代金は、サウジアラビア王族のニューヨークの銀行口座に入金されて、サウジアラビアにはもどらない。王族はニューヨークで買い物をする。石油はサウジアラビアから届くけど、ドルは米国内でぐるぐる回っている。不思議。基軸通貨って凄い。
著者はちょっと極端な親米に見えるかもしれませんが、それなりに説得力がある親米でした。