「臨時財政対策債」とは「赤字地方債」なの? | 尾張風の会・一翔会の「絆」ブログ

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 今回のブログでは、「臨時財政対策債」を考察してみましょう。


「臨時財政対策債」とは、地方一般財源の不足を補うために 「特例」として発行

される「赤字地方債」なのです。必要に応じて地方自治体が発行し、償還費用は

全額国が負担します。略して「臨財債」ともいいます。

 国の「地方交付税特別会計」の財源(所得税・酒税・法人税・たばこ税・消費税

の一定割合)が不足した場合に、従来は国が国債を発行して 不足分を補填して

いましたが、2001(平成13)年度から、国から地方への交付額を減らす方式に

改められたのに伴って、その穴埋めとして「該当する地方自治体自らに地方債を

発行させる制度」であり、「臨時措置」として導入されたものです。



「償還経費」は 後年度の地方交付税に理論的に算入されるとはいえ、あくまで

「地方債」の扱いであり、「地方債の残高が累増する原因」でもあるのです。なお、

臨財債の発行は「任意」であって、「自治体の判断と責任で発行」します。



旧来の地方の財源不足に対し「前払い」で対処してきたものを「後払い」に変更

したものと捉えることもできるでしょう。「地域主権」を掲げて政策転換を図ろうと

する民主党政権ですが、これまでのところ「地方に十分配分するだけの財源」は

見つかっていません。かつての自民党政権同様 或いはそれ以上に「臨財債」に

頼って、各地方自治体の予算は 「借金依存度」が強まっているのが現状です。

このままでは、将来に重い「ツケ」を残すことになるのかもしれません…。 

 日経新聞の4月5日付 経済面には「赤字地方債急増~国の財政圧迫」という

見出しで「交付税抑制のツケ回し」で「2012年度末、40兆円突破の見込み」と

いう恐ろしい数字が掲載されています。40兆円とは一年分の国家税収額です。


 日経新聞の記事を引用してみましょう。

“地方自治体が発行する赤字地方債が急増している。2012年度末には 残高が

初めて40兆円を超える見通しだ。赤字債は、国から将来受け取る地方交付税を

見込んで発行する。国は、交付税の財源が不足する場合に赤字債での穴埋めを

認めており、結果として交付税を抑制しても 赤字債が将来の国の財政の圧迫要

因になるという構図が強まっている。”


 「2010(平成22)年7月号 広報一宮」に掲載された、ようこそ市長室へ…では

「一宮市は健全財政に努めています」との標題で書かれています。抜粋して引用

してみましょう。


http://www.city.ichinomiya.aichi.jp/mayor/essay/201007.html


 “平成19年6月に 「地方公共団体の財政の健全化に関する法律(自治体財政

健全化法)」が成立しました。この法律のポイントは次の3点です。


・平成20年度の決算から、一般会計とは別になっている 病院・上下水道・第三セ

 クターなどの赤字や借金も、地方公共団体の決算に計上する。

・決算の範囲を広げたことにより、地方公共団体の財政の健全度を 4つの指標で

 評価し直す。

・4つの指標で 赤字や借金の割合が一定の基準を超えた地方公共団体は、夕張

市のように財政再生団体となる。

 

では、この「4つの指標」と、一宮市における平成20年度決算の数値を示します。

指標の基準値より、低い数値ほど財政は健全といえます。(中略)


 一宮市の台所は 歳入の半分近くを占める市税のほか、地方交付税、国・県から

の補助金、市債と呼ばれる借金などで賄われています。財政運営の健全度を見る

には、先ほどの「4つの指標」以外にも指標がありますが、最も分かりやすいのは、

市債の残高に注目することです。

 平成17年度~27年度の合併特例期間には 「合併特例債」という非常に有利な

条件の借入制度があります。新市建設計画に従って、校舎等の耐震化、総合体育

館・斎場・駅前ビル(図書館)・新庁舎等の建設に「合併特例債を有効に使いたい」

と考えています。

 また平成13年度から「臨時財政対策債(臨財債)」という新しい借入制度が 国に

よって設定されました。これは「地方交付税」として地方に渡すべき財源が不足した

ため、一時的に地方が借り入れる形をとったものです。臨財債の額は 景気や国の

動向に大きく左右され、地方の努力が及ばない面があります。

法律でも「臨財債の元利償還金はすべて翌年度以降の地方交付税に算入」され、

この分は地方公共団体の借金から除外されることになっています。



 合併特例期間中の「市債年度末残高見込み」をグラフで示しました。上の線は

全体の残高、下の線は「臨財債を除いた実質的な残高」を示しています。

 駅前ビル・新庁舎等 事業が集中する「平成24年度をピークに次第に減少して

いく」ことがお分かりいただけると思います。

 今後も健全な財政運営に努めながら、予定の事業を進めてまいります。”

          

               (広報一宮の記事からの抜粋引用は、ここまでです)



 自治体が「臨時財政対策債(赤字地方債)」で調達した資金は、使い道が自由

なため、税収が細るなかで 国が認めた発行可能枠の上限まで発行する自治体

は多いようです。例えば 2011年度の「臨時財政対策債(赤字地方債)」発行枠

が最大(2899億円)である、私たちの愛知県では、3月末までに発行枠をほぼ

使い切ったそうです。


 自治体からみれば、「臨時財政対策債(赤字地方債)」は「地方交付税」とほぼ

同じ位置付けですが、国から見ると実質的に借金を先送りしているのと同じです

2012年度末で過去最高の約450兆円に上る 国の赤字国債残高に、地方の

「臨時財政対策債(赤字地方債)」による財政負担が 更に積み重なる図式です。

国から地方への財源移譲を進めつつ、自治体には 一層の財政規律を求める

といった地方交付税制度自体の抜本改革が必要であるとの指摘も出ています。

 予算を 「臨時財政対策債(赤字地方債)」に依存している自治体は、私たちの

一宮市を含めて多いようですが、国の交付税財源も不足しており 将来まで国が

支えてくれる保証はないのでは…?と不安視しています。