「消しゴムって間違いを消すものじゃなくて光を与えるんだって」

「デッサンの話だけどね」

 

「何かいいね」

 

(カロリーメイト CM 「光も影も」編)

 

 

 

美大を目指す受験生の伊東蒼と、理系を目指す野内まるが出演。将来を迷いながら、デッサンの人物像の鼻筋に消しゴムを使うと、そこに光が現れた。


こんなコピーも秀逸だと思う。

 

「消しゴムは光を与える道具。光も、影も、栄養にして」

 

ふと聞いた短い言葉やコピーは、自分の中で咀嚼される。想像された世界観は、いま自分の感じている世界。他人が見ている世界とは違う。でもどの世界もどこかでCMの世界とつながっている。だから共感が広がっていく。

 

私には消しゴムで消したい過去がたくさんある。消すことなんて出来ない。分かっている。でも消せるものなら消してしまいたい。だから嫌な過去は直視せず、言葉を濁して誤魔化してきた。そんな過去はいつの間にか虚ろになり、自分のことなのに正確に思い出せなくなる。でも確実に存在していた。

 

 

過去の影を消したとしたら、いま自分は何処にいるのだろうか?あのとき夢見た輝く光の中に住んでいるのだろうか?想像するとあまり住み心地がよくない気もする。何だかむずがゆく足がふわふわと浮いてきた。

 

隠したかった私の影の部分はきっと栄養になってきた。地に深く根を張り光の当たる地上では気づけない生きていくのに必要なものをじっと蓄えてきた。強がりではなく、今はそう思える。

 

 

消しゴムで過去を消そうとは思わない。

消しゴムで今いる場所に光を生み出したい。

光は過去の中で蓄えられてきた。

 

そして少しはにかんで、「ほら、これ何かいいね」と隣りの誰かに伝えたい。