(ちょっとの気づきで仕事が変わる)

 

戦術は「つぎはぎ」でいいと思っている。

まずは戦略からと組み立てて、新しいことにトライしても順調に進むことはまず無い。三カ月もすれば頓挫してしまう。机上で考える時間は成功した姿を想像しているから、それだけでもう出来た気分になってしまう。でも現実はそうはいかない。
 

ではどうするか? うまく行っていない細かな仕事を「つぎはぎ」で縫い合わせていく。
小さな面積を手持ちの布と糸で不器用でも自分で縫う。色違いでも、かっこ悪くてもここから始める。ポイントは、簡単なことから始めることだ。

 

簡単なことって何?という方には、こう説明している。

 

短期間に結果がわかるもの

お金のかからないもの

自分一人で出来るもの

 

結果が出るまでに何カ月もかかれば、その意欲は落ちる。お金のかかることは色々な人を説得しなければいけない。そもそも予算がない。他人を巻き込むものは時間も掛かり、人間関係の壁にも悩む。だから、まずは簡単なもので小さな成功体験を積む。成功すると徐々に戦術から戦略に興味を持つ。「さてこれからどうしようか」と自分で考えるようになる。

 

成功体験をいくつも重ねればカンも良くなる。だから大きな成功の確率も上がる。

でも多くの人は違うようだ。よく勉強している人は戦略から始めたがる。泥臭い戦術から始めることを嫌う傾向があるようだ。
 

これは、巷の「助け合い運動」にも言えることだと思う。「困っている人を助けるべきだ」と声高に叫ぶよりも、私はすぐ目の前にいるちょっと困った人に手を差し伸べる。それも自分が無理をしない範囲で出来る時だけ。

大きな真新しい布を買うより、穴の開いた部分に余った布を「つぎはぎ」で修繕していく。破れたらまた張り替えていく。布は「つぎはぎ」した数だけ色違いの華やかさが残る。

 

 戦術も助け合いも「つぎはぎ」でいい。

 

 

ある日、地元の新聞にこんな記事を見つけた。

「○○温泉 うなぎとコラボ」観光組合キャンペーン (中日新聞)

 

○○温泉観光組合(西尾市)は二十日から、宿泊者が地元の人気うなぎ料理店三店で特典を受けられる「ご招待状」を発券するキャンペーンを始める。「温泉とうなぎで西尾の観光地としての魅了をアピールしたい」と期待する。

 

この記事を見て勝手に考えたことがある。

 

・キャンペーンは戦略であり、その前に出来る方法があるのではないか

・キャンペーンには人とモノとお金が動く。ここまでくるのに大変だ。

・このキャンペーンはいつから計画されたか、実行までの期間は?

・このキャンペーンは誰に向けたものか?

 

誤解しないでいただきたい。このキャンペーンを否定するものではない。ただ疑問に思うのは、このキャンペーンの前に何をしていたか、ということ。

地元の特長ある飲食店を旅館のフロントで積極的に紹介していたか? 特産品のうなぎ料理を紹介し、お店を選び、その予約までをする。こんなことはキャンペーンでなくても今までのフロント接客で出来る。キャンペーンは、旅行先を探すお客さんにはひとつのオプションになるかもしれない。でも今日宿泊しているお客さんには以前の業務の中で出来たことだ。

 

〇〇キャンペーンというと、何だかカッコイイ。だから新聞ネタになる。キャンペーンのための会議を重ねていれば、何だか仕事をしている気分になる。

これはコンサルタントにもいえることだ。コンサルタントは、何か形に残ることを求められる。だから、〇〇キャンペーンのような名前にこだわることがある。でも結果は残しても、遺産を残すことはできない。

 

泥臭い戦術から始める。「美味しいうなぎのお店紹介します」のベタな手書きのポスターでいい。丁寧に場所を教えてお店の予約をする。うなぎに興味を持ってもらうためには、養殖場も観光として紹介することも出来る。

 

色違いの布で修繕した「つぎはぎ」は、お客さんとのコミュニケーションにつながる。そして再び来てもらう。それが無理なら、知り合いに紹介してもらうハガキカードでも作る。知り合いを紹介しれくれたお客さんには安価な特産品をお礼として送り、つながりを絶やさないようにする。泥臭いがこれが三年後のお客さんをつくる。

 

コロナ渦だからこそ必要なことだと思う。

「安いから」「お得だから」という発想は今のお客さんを作っても、来年のお客さんを創ることは出来ない。

 

コロナ感染は、名前を変えて形を変えてまた忍び寄る。

そう思った方がいい。

 

 

(ちょっとの気づきで仕事が変わる)

「何でも一番になる」をやめたとき、仕事はもっと楽しくなる