さてそれでは。

俺の出会った認知症の方々について差し障りのない程度で書いていく。どの方にもエピソードがありすぎて書き足りないこともあるだろうけどなるべく簡潔にまとめてみる。


てゆーか飽きっぽいこの俺がこんな⑦まできたか…笑



まずはHさん。

この方はかわいらしいおじいちゃんといった感じ。かわいらしいなんて、目上の人に対し思ってはいけないことかもしれないけど、家族との関係からこの表現を使わせていただく。

歳相応の物忘れがあり、認知症の程度で言えば『おれ飯食ったかなぁ』とか、それこそ短期記憶の欠落や『あれっ?財布がないんだ』程度。あ、あとなにか勘違いして口にモノを運んだりもしたかな。
それでも誰かに取られたとかそういった周りへの影響もないため、みんなから暖かく見てもらえるような方。
歌もうまいし声も良くて場の雰囲気を良くしてくれる一番の年配者。

この方は比較的認知症未経験の人でも対応しやすい。むしろ対応の仕方を教われる。所々の介助、入浴やトイレ、おむつ交換などがあるくらいだ。夕方になると同居する娘さんの名前を呼び、娘はどこだ?と少しだけ不穏になるが、うまく話してあげると落ち着いてくる。
実際介護現場初心者の俺はこの方と接しながら認知症の動きを学んでいったし介助の仕方も学んでいった。
まずは性格を把握することから。見ず知らずが初めて会って当然すべき事。そして会話をし、どこに違和感を感じたか。違和感を感じても話を合わせ色々引き出してみる。それから興味の対象らしきところにポイントを置いてその話をしてみるといった感じ。
それの繰り返しをし、性格も分かってきて興味も分かってくるとなだめたりする方法も自ずと分かってくる。もし家族ならばここまでの行為は必要ない。


あるとするならなだめ方だ。

風呂入りたくねぇよぉ〜
と言うHさん。

そこに、綺麗にしておかないとよくないですよとか正論を言ったところで、お?そうだなあ、なんてなるのはかなりレア。基本は同じことを繰り返すことになる。
正解を求めるならば、衛生面を補い気分良くしてあげること。


ならば、アドリブ利かせて
『Hさんそう言えばロシアの女の人はなんだっけ?あの、えーと…』

『なんだ?ロシアはコーヒーがうまくてなぁ…そしてロシアの女の人はもう、ものすごく美人で。ん?どこ行くの?』

『ロシアの話をもっと聞かてほしいなあ。ちょっとこっちこっち。』

脱衣所へ。

『おれは風呂なんて入らんぞ?』←脱衣所に来て風呂思い出す

『風呂なんていいからそのロシアの話がもっと聞きたいなあ。』

『ロシアはなあ…』

脱ぎ脱ぎ

『満州から北へ向かうとロシアに辿り着いてそこはひどく寒くてなあ…』

脱ぎ脱ぎ

『今寒くない?』

『今はもう、ロシアじゃないだろう。あの寒さに比べたら…』

『よしっ、じゃあ今度はお湯に浸かりながら満州の時の話聞かせてよ。』



数分後…



『朝鮮語で1234数えるときなんて言うんだっけ?それ数えたら出ようか。』

『ハナトゥー……ヨル!』

『おしっ!出よう!』


という感じで一旦大好きな話で気を紛らせてあげてなんとなーく気付いたら風呂入ってて、

『朝一番の風呂は、人生の至福の時を感じる…

ん!?もう出るのか!?』


のように気分よく入ってもらえるようにしていたな。






数年前の母の日にプレゼントしたら喜ばれた。