こんにちは。きぜんです。
前回に引き続き、オタクコンテンツとSTP分析について書いていきます。
前回の記事で、STP分析とはなんぞやという事をざっくりと説明しました。
STP分析のSTPとはそれぞれ
S・・・セグメンテーション 市場を切り分ける
T・・・ターゲティング 戦う市場を選ぶ
P・・・ポジショニング サービスや商品の立ち位置を明確にする
を指しているという事でした。
「STP分析をしっかり行わなくては、ヒット商品やサービスは生まれない!」
という旨の文章が前回の記事の終わりにあったのですが、これはオタクコンテンツにおいても同様に言える事です。
近年ヒットしたオタクコンテンツを簡単に振り返りつつ、STP分析の観点から評価してみましょう。
まずは「魔法少女まどか☆マギカ」を紹介します。
(ほむほむとか懐かしいっすね…)
これは2011年1月から4月にかけて放映されたシャフト制作の魔法少女アニメです。
アニメ3話で主要キャラの一人が怪物に頭を食いちぎられるなど、その可愛らしいキャラクターデザインからは想像もつかないような重厚なストーリーと世界観が話題を呼び、多方面のオタク達から人気を博した作品です。
アニメ放映が終了してからも、数度に亘って劇場版を放映したり、劇中曲のオーケストラコンサートを行ったり、作品展を開いたり、パチスロ化したりと、マルチメディア展開を続け、今でも根強い人気を維持しています。
さて、このコンテンツ、STP分析の観点から見た際に一体何が優れていたのでしょうか。
それは
P(ポジショニング)にある
と私は考えています。
「魔法少女モノ」と聞くと皆さんどんなイメージを抱きますか?
私なら「魔法を使える女の子達が悪い奴らを改心させる」とか「女の子同士の友情」とかそういうものをイメージします。たぶん、おジャ魔女ドレミの影響ですかね。
人によってイメージは様々ですが、女の子の頭が食いちぎられたり、人が死んだりとかそういう負の側面の強いイメージを抱く人は少ないのではないかと思います。
しかし、まどか☆マギカは魔法少女モノ「なのに」そういう事が平気で起きる訳です。
絵柄だけ見れば、可愛い女の子たちの日常モノだと言われたら納得をしてしまうような作品です。視聴する側も初見では
「ああ、なんとなくそういうふわっとした気持ちで見ていられる作品なんだろう」
と高を括ってしまいがちなもの。
この作品はその感情の機微を逆手に取った訳です。
つまり、この作品は我々視聴者側に
「作品のポジショニングを誤認させた」
ところに最大の強みがあるのではないでしょうか。
長年なんとなく刷り込まれてきた「魔法少女モノ」へのイメージを問いただすような独自性の高いポジショニングこそがヒットの要因なのだと私は考えています。
次に「ガールズアンドパンツァー」を紹介します。
(どうでもいいですが私の推しはケイさんです。)
これは2012年10月から12月までと、2013年3月に放映されたアクタス制作のアニメです。
作品の概要を述べると、女子高生が戦車による模擬戦闘を行う事が「戦車道」と呼ばれ、剣道や弓道などと同じ武道として確立されている世界で、主人公達が戦車道の全国大会で優勝する事を目指すというものです。
このブログでも度々紹介しているので、なんとなく覚えている方もいらっしゃるかもしれません。
アニメと地域振興を関連付けて研究するのであれば、まず間違いなく触れる事となるのがこのガルパンというコンテンツです。
アニメ放映から4年以上が経過した今もしょっちゅう話題になるヒットコンテンツであると同時に、地域振興の観点から、研究者の間でもたまに話題になる学術的価値のあるコンテンツでもあります。
ちなみに私の属しているマーケティングゼミの教授はガルパンオタクであり、自分の受け持つ授業の試験問題にガルパンに関する問題を一問出していました。
教授曰く
『おいら達の世代っていうのはさ、戦車とか潜水艦とか好きなんだよね。ドイツ戦車のプラモとか組み立ててよく遊んでたよ。だからアニメで戦車とか言われると食いつきたくなるわけ。』
とのこと。
さて、このコンテンツ、STP分析の観点から見た際に一体何が優れていたのでしょうか。
それは
S(セグメンテーション)とT(ターゲティング)にある
と私は考えています。
ファンの愛称に「おじさん」が付くのなんて、アイカツ!やプリパラといった女児向けコンテンツを除けばガルパンぐらいのものなのではないでしょうか。
オタク市場をセグメンテーションしていった時に、「中年男性オタク」というセグメントは確かに出来ます。
しかし、そこを主たるターゲットとして据えて展開していったコンテンツは他にあまり類を見ないと思います。
当然ですが、セグメント毎に好みやすい傾向のあるものは大きく異なります。オタク市場の中でもボリュームゾーンであろう高校生から若手社会人オタクの好みと、長年オタクを続けている歴戦の勇士である中年男性オタクの好みは当然違うでしょう。
セグメントの規模で考えれば、ボリュームゾーンとなる市場で戦った方が当たった時に大きな利益を生み出す事が出来ます。
しかし、ガルパンはあえてそれを避け、ややニッチな市場である中年男性オタク市場をメインターゲットとして展開を続けたのです。
そしてその戦略が見事に功を奏し、アニメがヒット。
結果的におじさん層のみならず若いオタク層も取り込んでコンテンツ全体の規模も拡大という良い流れを生み出す事に成功しています。
各セグメントの特性を理解したうえで、戦う市場を「あえて」ボリュームゾーンからややずらす。
ガルパンは企業がやっているニッチ型戦略を成功させ、ニッチからリーダーへと飛躍した稀有なコンテンツだと位置づけられるかもしれませんね。
なーんて色々考察しましたが、案外シンプルに
戦車=おじさんが好きそう
女子高生=おじさんが好きそう
戦車×女子高生=おじさんがめっちゃ好きそうだし今までにない
って事でガルパンのSTP分析及び戦略が始まっていたりして。
とまぁ2つほどヒットコンテンツを評価したり分析したりしてみましたが、結局のところSTPのうち何かしらが優れていましたよね。
ヒットコンテンツを作りたいのであれば、競合のみならず市場全体を分析し、それから戦える場所を探して戦っていくという事が重要なように思えます。
バンナムや角川のようなパトロンが初めから付いているコンテンツならば、金の力で市場の地図を塗り替える事も可能かもしれませんが、大体のところはそうではありません。
粗製乱造が問題視されるコンテンツ業界(特にアニメ)、今必要なのは優秀なクリエイターのみならず、精緻な分析なのかもしれません。
STP分析を含めて、しっかりと多面的な分析したうえでどこをコンテンツとしてトガらせるか。それが重要なように思えます。
トガったものの方が刺さりやすいのは刃物もコンテンツも同じでしょうから。
それでは。

