篠山紀信さんが亡くなられた。誰もが知っている写真家である。
2014年5月3日、まだ出来て新しかった大阪梅田グランフロント大阪で開催された「篠山紀信展 写真力 THE PEOPLE by KISHIN」を見に行った。その時新歌舞伎座の「舟木一夫シアターコンサート2014」のために大阪にいた。
その時の感想は
〈学生服を着た舟木さんの顔写真。瞳が輝いて白黒の写真がまぶしいほどである。透明、純粋、愛嬌、憂い、少し下唇をかんだような口元と、きらきらと何かを見つめる澄んだ瞳。瞳の中に星が三つくらいあった、オスカルのようだ。明るくて未来を信じているような表情をされている。〉
篠山さんにとって舟木さんは大スターだと何かの雑誌で話されていた。だから「STAR」のコーナーに展示されていたのだろう。
篠山紀信さんの写真集を一冊持っている。『十五代目片岡仁左衛門』。今の舟木さんへの思いと同じくらい大好だった(今も大好きです)仁左衛門さん。この数年前にも淡交社から『十五代目片岡仁左衛門-片岡孝夫の軌跡』という写真集が出ていたが、誘惑に負けてこの写真集も手に入れてしまった。
篠山紀信さんは、写真集のいきさつを次のように書き始めている。
写真集「片岡仁左衛門」は中村勘三郎氏50歳の誕生パーティーでたまたま、「ぼくの写真も撮ってぇな」という仁左衛門氏の発した一言からはじまった。 以下略
写真集は、菅原伝授手習鑑「松王丸」から始まって伽羅先代萩「細川勝元」で終わっている。
仮名手本忠臣蔵の主立った役、大星由良助、早野勘平、寺岡平右衛門、加古川本蔵。
他にも河内屋与兵衛、いがみの権太、錨知盛、伊左衛門、弁慶、玉の井、岩藤、綱豊卿、俊寛、荒川の佐吉etc. 当たり役が網羅されたような写真集である。それも15代目襲名後の充実期の仁左衛門さんだから迫力が凄まじい。
紀信さんはこの時『十八代目中村勘三郎襲名記念写真集』を出しており、坂東玉三郎さんの『五代目坂東玉三郎』の編集中だったとか。そんな話を聞いて先述の「ぼくの写真も撮ってぇな」ということになったらしい。仁左衛門さんらしい頼み方である。
紀信さんに撮って貰った皆さんは倖せですね。