これまで数多くの記事を書いてきた。
毎日書いた時もあるし、一日に2回書いて更新したこともあった。
そんな、いわゆる「筆まめ」だった私も、この頃は「筆不精」になっている。
ところが、ここ数日、再び「筆まめ」になりつつある。
そのきっかけの一つが、櫻井敦司の親子対談の実現である。記事は、雑誌が売り切れていたため、まだ読めていないのだが、きっと「あぁ、よかったな。」と思うに違いない。いや、むしろ既に羨ましい。
私は、子供を産む前、生まれてくる子供と将来、こんなことができたらいいなぁ、と思っていたことがある。それは、お互いに同じ文学作品を読んで、その感想を話し合うというものだ。できれば、平安時代の古典文学について語り合いたかった。近現代文学ならば、夏目漱石や森鷗外、芥川龍之介や太宰治。川端康成に三島由紀夫。そして谷崎・・・。
それこそ、「夢」だった。
子供がどんな職業に就こうと、どこの誰と結婚しようと、どんな大学に行こうと、あまり気にならなかったと思う。
つまんない男と結婚してしまったと気づいたら、別れてやり直せばいいと思ったし、お給料が少ない仕事に就いても、なんとかなると思っていたし、大学に至っては・・・向き不向きがあるだろうから、行かなくても構わないと思っていた。(実際、行かなかった。専門学校を選んでいた)
そして今、私が子供と文学作品について語り合うことはない。
彼らは、本を読まない。
私がこんなに読むのに・・・彼らは読まない。
そんな事実を考え合わせると、まことに彼ら父子は羨ましい。
たとえそんな話題が出なかったとしても、語り合おうと思えばきっと、長く語り合えるのだろうから。
親子のDNA、とか言うけど・・・私の家族は趣味や得意分野がことごとく異なる集団で、結果的に必要以上のディスタンスを保ち続けている。一緒に暮らしたり、暮らさなかったり。
親子だけど、子供と一緒に暮らさなかった時期がある。
そして、そんな時期ほど子供が愛おしくなったりする。勝手な生き物だ。私は・・・。
そんなシチュエーションを勝手に妄想しながら聴いたのが、BUCK-TICKの「Solaris」
例の親子対談報道後、突然注目を浴びたこの曲の歌詞。
もちろん、「はるか」はペンネーム。それでも、作家になろうと思う者は、ずいぶん早くから自分のペンネームを考えたり、すでに決めていたりするのかもしれない。かくいう私も、大学生の頃、小説を書こうとしたことがある。書き上げてもいないのに、ペンネームだけは決まっていた。それを誰かに打ち明けることはなかったけれど。打ち明けてもいいと思える人に出会わなかったけれど・・・。
アルバム「Razzle Dazzle」の15曲目。最後の曲が「Salaris」
今朝、車の中で、そして帰りの車の中で、繰り返し聴いたその歌詞は
「お願いがあるんだ さよならの季節
神様 夢を
夢を見せておくれ
幻でもいい
目覚めの朝遥か
夢で会えるね
小さな 小さな君はやがて空になり
大きな 大きな愛で僕を包むよ」
(詞:櫻井敦司)
以前、このブログでこの曲の歌詞について書いたことがある。
その時は、「蝶々になって」とか「魚になって」とかいう部分について、
まるで中国の老荘思想の荘子による「荘周、夢に胡蝶となる」みたいだと書いていた。
それは今も変わらない。
- 「昔者荘周夢に胡蝶と為る。栩々然として胡蝶なり。
- 自ら喩しみて志に適えるかな。周たるを知らざるなり。 俄然として覚むれば、則ち蘧々然として周なり。
- 知らず、周の夢に胡蝶と為れるか、胡蝶の夢に周と為れるかを。
- 周と胡蝶とは、則ち必ず分有らん。此を之れ物化と謂う。」ウィキより
自分自身を、蝶になった自分が俯瞰しているみたいなあのイメージ。
幽体離脱というものがあるが、私自身、それをやってしまった時期があるので、それを思い出しながら書いた気がする。
(今は・・・そんな遊びはしない。)
遠野遥氏の小説の書評を読んでみたら、印象としてやはり「自分で自分を俯瞰してみているような・・・」という表現があった。とすると・・・
ここからは勝手な妄想なのだが、ペンネームを聞き、書いてみたものをちょっと読ませてもらったりして、一緒に文学の話なんかして、すごくうれしくなって、それでもたまにしか会えなくて・・・あるいは、直接会わずにやりとりしていたのかもしれないけど・・・そんな出来事から生まれた詩だったのかもしれないな、なんて想像して曲を聴いていた。
「ねぇ遥、夢でこれからも会えるよね」
というメッセージも込めた曲だったのかもしれないな、と思った朝。
アルバムの歌詞カード冊子を見たら、この「Solaris」の歌詞の上にドーンとあっちゃんのソロショットがあって、
最後の曲だからというだけではないものを勝手に感じてしまったのである。
2010年の秋に出たアルバムだったのか。
10年経って、こんな感想をもつことになるなんて、思ってもみなかったな。