【検証】パッキャオはなぜ敗れたか | Perfumeとグルメの日記

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マニー・パッキャオ対ファン・マヌエル・マルケスの4回目の戦いは衝撃的なKOによって、4度目の正直でマルケスの勝利に終わりましたが、これまで6階級(メディアによっては8階級とも)制覇を果たしてきた、フィリピンの英雄「パックマン」にいったい何があったのか、敗因を探ってみました。
(彼がどれだけ偉大なボクサーなのかはこちらからご覧ください)



敗因の1つ目は、もともとマルケスとはボクシングスタイルに於いて相性が悪い事に尽きます。
ブルファイターで体格のハンディを猛烈な突進力でカバーしてきたパッキャオにとって、自分よりリーチが長く懐が深く、おまけにカウンターボクサーのマルケスは一番やりにくい相手でしょう。
過去3戦は、それでも抜群な突進でなんとかパンチを当てて、マルケスもムキになって打ち合いに挑んでくれたから乱戦に持ち込めたのですが、この日のパッキャオにはその突進力が全く無く、マルケスが終始冷静に自分のペースで戦えていました。



では、なぜこの日のパッキャオには自慢の突進力がなかったのか?



それは一にも二にも、アスリートにとって一番避けがたいパッキャオ自身の下半身、膝の衰えです。
半年前のブラッドリー戦の時もパンチを打つ際の膝の粘りがかなり無くなっていたんですが、マルケス戦での彼の下半身はさらに衰えが進み、まるで枯れ枝のように柔軟性がなく、パンチを放とうとしても上半身にうまく力を誘導することができていません。
下半身(膝)に力が入らないまま、昔のイメージのままパンチを振り回しますから、自然に打ち終わった後の下半身はバタつきます。
ここが、マルケスのようなカウンターボクサーには格好の標的になるわけです。
彼の主武器の左ストレートを打つ時にそれは顕著に表れていて、右膝で体を支えられないものですから、自然に自身の体が前に流れます。
下のキャプ画は1R終わりのパッキャオの左ストレートを打つシーンなんですが、明らかに体が前に流れて、マルケスに左を狙われています。
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パッキャオも自分の体の衰えを察知したのか、この日は過去の試合のように1Rから相手を目掛けて強引にパンチを放つ事をためらっています。
マルケスにとって序盤のパッキャオの突進さえ止めてしまえば、ボクシング相性の良さを基に優位に試合を運べると踏んでいたのではないでしょうか。
この試合は終始上の3枚のキャプ画のような試合展開で進んでいきました。
やがて、パッキャオに往年の突進力が無い事を悟ったマルケスが過去の試合とは逆に前に圧力を掛けて来た3R後半。
強引な右ロングを浴びて後ろ向きに倒れるフィリピーナ。
もはやここでこの日の試合の行方は決まったと見て間違いはなかったでしょう。




ただ、歴戦を勝ち抜いて来たパッキャオにも意地はありました。
4R、5Rとありったけのフットワークを遣い、なんとか自身にペースを呼び込もうと必死に力を使いました。
ここではパンチを放つ際の体の流れはほとんどありません。
5R終盤には、ややラッキーパンチながら左のショートでマルケスからダウンを奪い、彼はKOを狙ってしゃにむに前に出ました。
このラウンドで採点も盛り返しましたが、しかし恐らくこの2つのラウンドで、彼は普段の10R分くらいのスタミナを使ってしまった事でしょう。



その代償は運命の6Rに表れます。
前半はやはりKOを狙って全身するパッキャオですが、もともと練習不足を伝えられて不安視されていたスタミナがとうとう無くなってしまうのです。
前のラウンドまでの攻勢をかって、自分から打ち合いを挑むパッキャオですが、パンチのスピードが鈍くなり、打ち終わりにカウンターをもらうようになり始めます。
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ご覧のように踏み込めないで左ストレートを打つも、体が流れて格好のカウンターの餌食になるというシーンを繰り返しながら迎えた6R最終盤。
不用意にパンチを放ったパッキャオに、マルケスの右のフックがまともに顎を捉えました。
まるで交通事故に遭ったように失神して全く動かないフィリピーナに無情なストップの声が掛かりました。
恐らく、彼はこの試合で脳にかなりのダメージを負ったと想像します。
このまま現役を続けても、恐らく昔の名前で試合に出て自身の過去の栄光を毀損続けるような事になり続ける事でしょう。
この試合を見る上には、パッキャオの真の意味での「カンバック」はないと思います。
彼を晩年のデラホーヤのようにして欲しくはないのですが・・・。