スティービーワンダー「歌を唄えば・・ImSINGINNG」

数あるスティーヴィーワンダーのアルバムの中から1枚を選ぶなら

キーオブライフだろう。このアルバムはPOPSの金字塔。

ジャズ、ファンク、フュージョン、ソウル、ラテンといったさまざまな

サウンドの要素もありながら、このアルバムにしかないメロディーが

満載。すべてが詰まっているだけでなく、世界が愛を無くし、

崩壊してゆくことに警鐘をならすというメッセージを発信している。

もう40年以上も前に、世界の未来を彼は予言していたのだ。

 

まだ20代のはじめ、スティーヴィーは自分自身の手で作詞・作曲

レコーディング、アルバムのプロデュースまで全部に関わるようになった。

キーオブライフはそんなエネルギーがピークに達した時に誕生した傑作だ。

 

この作品の後に、出たシークレットライフは植物や昆虫の世界を描き

当時まったく理解されなかったオーガニックな感覚で自然や地球の営みを

表現していた。しかし、彼のファンでさえついていけなかったのだ。

 

シークレットライフはセールス的に大こけして失敗作と言われた。

しかし、このアルバムでのオーケストレーションの美しさは比類がなく

この作品がスティーヴィーの隠れた最高傑作であることは間違いない。

 

以後、スティーヴィーが音楽セールスで失敗することは許されなくなり、

彼の音楽は形骸化していく。

 

キーオブライフは1976年、

グラミー賞8部門受賞・・POPS、R&B他、セールスも内容も

名実ともにNo.1になったスティーヴィーワンダー。

 

音楽の宝石箱のような奇跡のアルバム、

傑作が何曲も含まれているキーオブライフだが

ぼくの知りうる限り音楽史上、最高のリズムがこの曲「アイム・シンギング」の中にある。

 

キラキラと水面の輝き・・きらめき、

それがクラビネット(シンセ)のメロディーとリズムで表現されている。
歌が終わってからの、このクラビネット(シンセ)の旋律とリズムは

変奏と即興を繰り返し、やがて消えてゆく・・

 

メロディーとリズムがひとつになった理想な姿。

「神がかり」としか言いようがない演奏と歌だ。

 

天国に持っていく1曲というなら

ぼくはこの曲に決めている。

 

 

スティーヴィーはその後も時々、

彼しか作れない跳ねたリズムで名曲を誕生させている。

そんな1曲がジャングルフィーバーの「FUNDAY」だ。

 

大きなグルーヴにのって、

スティーヴィーが気持ちよく歌っている。

こんな曲もまたほかにない。

 

気分がとってもハイになるオススメの1曲。

覚えておいてください。

 

音楽聖人としか言いようのない

レヴェルに到達したスティーヴィーだが、

晩年になって、過去の遺産を台無しにするような

ことが起こらないよう・・

願わずにいられない。