この夏、同じ歳のゴルフ仲間が急逝した。

 形見としてドライバーと3番ウッドを引き継いだ。

 パワーヒッターだった彼。私の技術不足も重なり、容易には使いこなせない。

 だが故人をしのび、しばらくはこのクラブでラウンドする。

 いつも気さくで奔放だった彼の分まで、楽しんでプレーようと思う。

 

 

 

 

 

 共通の知人を交え、年に3度はゴルフをしていた。

  パワフルな体型通り、飛ばし屋だった。

  ふっくらしたお腹をうまく丸めて、小技も上手だった。

  お家芸は、6番アイアンを使ったランニングアプローチだった。

  スコアは、4回に3回は負けていた。

 

  パワーヒッターにありがちな、OBも随所にあったが、その都度、笑い飛ばしていた。

 「よく言いますよ」「遊びですから」。

 彼の口癖。

  でも、どんなミスショットの後も、場の雰囲気を壊さない人だった。

 

 

 彼はトレーナー、私はコーチとして、ともに高校バレーに関わっていた。

 公式戦の試合会場でいつも顔を合わせ、冗談を言い合っていた。

 彼の関わるチームには、直接対決で一度も勝てなかった。

 そしてこの春、偶然なのだが、同じタイミングで、互いに身を引いたところであった。

 

 

 突然の訃報だった。

 翌月は一緒にラウンドする予定だった。

 バレー関係者が詰めかけ、大きな葬式だった。

 教え子たちの泣き声が響いていた。

 祭壇には、高校生と楽しそうに映る写真、寄せ書きが添えられていた。

  奥様に挨拶すると、「名前は何度も聞いてます」とご返事があり、悲しみが一層増した。

 

 その後、彼のゴルフクラブのチャリティーオークションが行われた。

  私のたっての希望で、ドライバー(キャロウェイ製エピック)と3番ウッド(ナイキ)を落とさせていただいた。

  四角いヘッドの3番ウッドは、ふた昔前の流行クラブだが、私も同じものを持っていて、「四角を利用して、真っ直ぐ引いて、真っ直ぐ出すんですよ」と、教えてもらった。

 その場面が頭から離れない。

 

 ドライバーもとても難しい。

 だが、正しい打ち方で芯を食うと、実にきれいな弾道で飛んで行く。

 練習場で会った別の知人にこの話をすると「これはいいクラブだよ。君にはもったいないなあ」。

 想像以上の高価なクラブだった事が分かり、気持ちがさらに高まった。

 

 

 「何としてもこのクラブをモノにするぞ」

 秋以降、家族の冷たい視線を尻目に、練習回数が増えている。

  いい球を打ちたい。

 いつになく、真剣に取り組む自分がいる。

  まだスコアにはつながらない。

 でも、胸に秘めた思い、楽しんでゴルフをすることは実践している。