その訃報を突然知った。

20年ほど前に、革工芸をしていた友人の仕事を手伝っていたことがあった。

彼は中学からの友人で、自作の皮革製品を一人で作っていた。

銅板のエッチングを革に施し、そこに何色もの彩色をする作業を手伝っていた。

芸術的センス溢れた作品は大量生産出来ないが、コアなファンが居て、あちこちで作品展などやりながら知名度を上げていった。

が、私が手伝っていた時は彼にもお金が無い時期で、材料の仕入れ代金など立て替えたりしていた。

芸術家に有りがちなのかお金と納期にルーズな人で、関わっている間に未払賃金も含め百万円ほどの未回収金が発生。

催促しても、のらりくらりで返済されない日が続いた。

貸したお金の事でこちらが心を痛めるのが嫌になり、一切連絡を取らなくなった。

その後、彼は自分の工房を作り有名な通販雑誌に採用されるなどして、業績が上がっていたと風の頼りに聞いた。

それでもあちらからの連絡は無かった。

まあ、友人でも信用出来ないと思い知る、高い授業料を払ったと思うことにした。

かれこれ十年以上経って、唐突にあの人は今どうしてるだろうと思った。

でも、電話する勇気は無かったが、一応革作家だしブログもやってたので検索してみた。

すると、2021年に間質性肺炎で亡くなっていたことがわかった

三年も前に亡くなっていたなんて、ちょっとショックだった。

未払金はお香典と思うしかないね。

中学の頃は染谷将太似の目の大きな美少年だったが、40代で再会した時は宮崎駿を彷彿させる年齢より遥か上に見える風貌だった。芸術家の貫禄ってやつ。

その彼も今はあの世に行ってしまったと思うと、自分が人生の黄昏地平線に立っていると自覚してしまった。

人の明日は分からない。

猫のように今を目一杯生きるしかないかな。

一つ守っていることは、大事な友人にお金は絶対貸し借りしないこと。

因みに、今まで一度も借金をしたことはない。