さて、次はどうするか…。

引き剥がしたは良いけど、ダックスフンド君の生命力が弱い。

瘡蓋を想像して欲しいんだけど。今の状態は、それを無理に剥がした状態。バイキン(霊)が入りやすい状態でしかない。

傷口を癒やす、塞ぐイメージを送りながら、霊には炎関係の真言を唱えるかと考えた。

面倒だけど、火渡りの導師よりは簡単だろう。

あれは口で炎関係の真言、頭の中では水関係の真言を唱えるものだし。

しかしキツネ、面倒臭いのが大嫌いだった。
とは言え…。

「私のカバン取ってきて!」

と知人に頼み、持ってきてもらったカバンの中から、粗塩の袋を出して貰った。

ダックスフンド君の口を抑えていた手を、キツネゆっくりと外す。吠えだすダックスフンド君。

たまたま、キチンと清めていた塩を、多量(500グラム)に持っていたのを思い出したのだ。

その手でガバッと塩を掴むと、口の中で祝詞を唱えながらダックスフンド君に塩を振りかけ、また振りかけ…。何度も繰り返した。

どうかな?と、塩が足りるか不安になった頃。

密かに、腕のダックスフンド君が軽く感じた。

瞬間!

何かがダックスフンド君の上に、黒く、丸く形作られていく。

それは次第に顔の輪郭になり、目になり、鼻になり…男の顔になった。

恨めしそうな目と、髪が洗ってない、ベタベタとした不潔な顔。

ダックスフンド君、君はどうしたいの?

まだ自我はあるよね?

少し離したから、意思表示できるよね?

あんなに暴れていたダックスフンド君は、別人(別犬)のように大人しくなっていた。

いつも唸って皺だらけにしていた顔を、ツルンとさせて。黒い可愛い目で、ただキツネを見上げていた。
散歩中のダックスフンド君が見えてきた。

いや、正確に言うとダックスフンド君の視点。

電信柱をチェックして、匂いつけのお小水。

楽しいなぁとご主人である知人を見上げて、また歩き出す。

歩き方が元気で安定しなくて、多分、子犬の時期だとキツネは予想した。

次は近くの家の、境にある木のチェック。

そして不信感を露わにするダックスフンド君。

嫌だなぁと見上げると、黒くて嫌な靄。靄を認識すると、途端に上から、それが落ちてくる。

靄は無くなり、しかし、背中に重い、タールがへばりついてくる。

重くて、イライラして、何度も体を揺する。

落ちない。

振り向いて唸る。

落ちない。



ああ、憑衣されたのか…。

キツネは、ダックスフンド君に話しかけた。

長い年月をかけて、ジワジワ喰われるように、意識を乗っ取られ、憑かれたにしろ。

ダックスフンド君の魂はある。

どうしたいの?

助かりたいの?

こればかりは、本人(本犬?)の強い意志が必要だった。