人は誰でも青春時代の夢をいつかどこかで置き去って、何事もなかったように今を生きているのかもしれない。

 

ニューヨークで活躍するジャーナリストであり、尊敬する友人でもあるシェリーめぐみさん。米国政治経済を独自の視点から報道していて、鋭い視点をもったかっこいい女性というイメージの人。

 

そんな彼女が、40年ぶりに歌います!とニューヨークのフリーペーパーで大々的に発表して、友人たちに声をかけたのが9月初め。

 

 

実は彼女は中学生くらいから歌を歌い始め、高校生の頃にはプロダクションに出入りするようになり、西城秀樹のバックコーラスをしたり、8時だよ!全員集合の聖歌隊で歌ったりと活動を続けて、ソロデビューの話もくるくらいまで歌手への道を突き進んでいた。

 

そんな彼女、早稲田大学に進学して学業を続けていく中で、歌手への道は自分には向かないのではないか?ときっぱりと歌から離れることを決意。歌が大好きだった彼女は、中途半端に歌いながら別の道を行くことが許せずに、一切自ら歌うことから遠ざかって生きてきた。



その後ニューヨークで単身ジャーナリストとして身を立てて、ニューヨーク滞在も32年。歌を歌うことをやめてから40年。60歳を過ぎて、ふっとそれまでの生活を見返したときに、ふつふつと、歌を歌いたい!という気持ちがよみがえってきた。

 

そんな気持ちを後押ししたのが、ニューヨークでの彼女の30年強の生活の同志であり、支え合ってきた日本人女性たち。ニューヨーク日本人会では恐らく知らない人のいない作曲家でグラミー賞ノミネートのビッグバンド指揮者である宮嶋みぎわさんが、シェリーめぐみさんのリサイタルのプロデュースを買ってでた。そして、めぐみさんが20歳の頃につくったデモテープから音を書き起こしてアレンジ。

 

ピアノ伴奏がみぎわさん、中央がAKこと柿原明美さん


ニューヨーク在住オペラ歌手の田村麻子さんが、めぐみさんのボイストレーニングを買ってでて、シンガーソングライターの柿原明美さんが、その昔今井美樹に提供した「空に近い週末」を恵さんのためにアレンジして提供。

 

そして、今日、観客数ほんの30人ほどの小さなスタジオでだけれど、シェリーめぐみさんのコンサートが実現。観客もみな、何年もめぐみさんのことを知っている友人達ばかり。音響も、照明も、すべてその道のプロたちによるボランティア。

 

めぐみさんのジャーナリスト仲間である黒部エリさんがMC


歌い終わった後に、めぐみさんが、ようやく自分の中に欠けていたピースがぴたりとはまって自分がひとつになれた気がする、と話していたのがとても印象的。彼女が意図的に忘れ去ってきた、青春時代の自分の大切な一部を、ようやく取り戻したんだな、と。

 

彼女の30年強のニューヨーク滞在、いろんな辛いこと苦しいこともあっただろうことを思うとそれだけで心が熱くなるし、それをずっと一緒に見守ってきた友人たちが、彼女が自分に欠けていたピースを取り戻すのを全力でサポートする姿をみて、涙がでた。

 

60歳を超えるころ、私はどんなふうに自分の人生を顧みるのかな。