絵に描いたような | 三遊亭朝橘のどぶろぐ

三遊亭朝橘のどぶろぐ

ドロッと濁った酸っぱいブログ(密造)

3月25日、また新宿へ潜入。



末広亭での六代目円楽襲名披露興行中日。



 



平日だというのに、雨模様だというのに。



行列の出来る新宿三丁目。



楽屋も前座さんから師匠方までひしめいていた。



身も細る思いで高座を勉強させて頂く。



昨日おかみさんから「あんた腹出てるんじゃないの!



その歳でそんなんなると簡単には引っ込まないよ!」



って言われたけどきっと気のせいだろう。うん。気のせい。



円楽一門会会長、鳳楽師が高座を勤め戻ってくる。



「今日はいい客だよ」



初日は正月みたいなお客さんだと仰ってた。



確かにそんな感じではあった。



イベントがあるから、お祭りだから、そして連休だから



行こうか、っていう。



いいお客さん、って言うのはこっちの言い分だし、



お客様に良い悪いも無いもんだけど、



でもあるのだ。こればっかりは仕方ない。



落語を聴こう、面白ければ笑おう、じっくり聴くとこは



集中して、仕草もじっと見る。想像する。



サゲでフッと力を抜く。適当に拍手する。



そんなもんで十分じゃなかろうか。



無理やり笑おうとしたり、変に拍手しようとしたり



何か掛け声かけなきゃ、みたいのはどうも…。



昨日お囃子の鶴田弥生お師匠さんが言ってたけど、



「最近芝居観てると、『勧進帳』で弁慶が引っ込むとこで



手拍子が客席から起きるのが腹が立つ」



と。



プロレスで、いつからだったかなあ。



例えば小橋建太選手と佐々木健介選手が



チョップ打ち合うと客席から一発ごとに



「オォーイ!オォーイ!!」って



声が上がるのが心の底から嫌い。大嫌い。



自分の生理には合わない。



だからって周りに「やめろぉ!」とかは言わないけど。



とにかくその日の新宿のお客さんは良かった、んだそうだ。



自分上がってないから。あくまで伝聞。



 



口上も賑やか。



まあ出てるメンバーが豪華だから。



主任の六代目円楽師は『芝浜』を。



先代、当代ともに十八番の噺。



やはり勉強しにいらしてた全楽師が楽屋で言ってたけど、



主任に向かってこう右肩上がりに盛り上がっていくような、



良い流れの寄席だったと思う。



 



中日なので打ち上げあり。



近くの焼肉屋にて酒と肉に溺れる。



前座さんも居るし、何もせんと若手席で肉を喰らう。



楽京兄さんの彼女、楽市兄さんの奥様との



出会いの馴れ初めを聞く事に。



楽市兄さん…飛行機で会ったとか…何それ月9?



楽京兄さんまでそんなまともな色恋振りかざすとは



オイラが前座の頃は想像もしなかった…。



「橘也、女好きか?」



「はい、好きです!」



「そうか…俺も好きだ!」



「はぁ…」



「でも、二ッ目になったらな!」



「はい」



「まあ俺は前座の頃から行ってたけどな!」



僕が前座の頃、夜の都営新宿線にて交わした



楽京兄さんとの会話。



兄さん、錦糸町にはいつ連れてって…いえ何でもないです。



 



打ち上げ行く途中、六代目の鞄持って付いていた。



その辺のksアイドルのようにサングラスにマスクとかしない。



別に悪い事してないんだから堂々と歩く師匠。目立つ。



当然サインをねだられる。黒山の人だかり。



咥え煙草でペンを走らせる師匠。



絵に描いたような売れっ子。



その光景を見てて思ったんだけど、



サインねだる時は太目のマジック持ってくるといいよ。



ボールペンよりそっちのがいいすよ。



あと色紙か、寄席の後ならプログラムとかがいいんじゃない。



書く側の都合だけどね。



そして僕そんな風にサインお願いされないけどね!



 



新宿はやっぱり良い。



末広亭は良い。



これぞ寄席でござい!みたいな感じなんでしょう、きっと。



お客さんもそういう風に見てるんじゃないのかな。



絵に描いたような寄席。



そこを大入りにする。



サインを求めるファン。



打ち上げは大勢で焼肉。



絵に描いたような売れっ子。



自分もいつかああなりたいと夢見た一日だった。



店入る前に財布の中見てから後輩誘うような



そんな悲しい酒じゃなくて。



売れたいですなあ…。



何かきっかけねえもんかなあ。



本ですか?なにめだかですか?



文章書くの嫌いじゃないから



そういう事もしたいのよね。



で、それきっかけで名前が売れれば



難しい噺でも、笑いの少ない噺やっても



「骨太な本格派」みたいになるんじゃねえの!



まさに絵に描いた餅…。