新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で開催されている「DOMANI・明日展2007」展を見に行きました。
文化庁が昭和42年から行っている、若手芸術家を国の予算で海外に研修のために派遣するという「芸術家芸術家在外研修」事業の成果を発表する展覧会が毎年この時期に行われています。
毎年、このDOMANI展を見に行っていて楽しみにしていますが、今年は些か展示方針もあってか物足りない内容だったように僕には思えました。
今回は、新しい試みで派遣先の国別に作家の作品を並べる構成にしていましたが、どの作品も平面であり、立体やインスタレーション、映像作品は一切展示さえていなかったので、現在のアートシーンを投影する展覧会とはとても言えないものでしょう。
近年、平面での表現方法の再評価がなされているのも確かですが、海外のアートフェアやビエンナーレ等を見ていると今回の展示内容は現在のアートシーンのほんの一部分を紹介したに過ぎません。
文化庁の予算で行う若手芸術家の海外派遣という事業の成果を紹介するという、展覧会の開催趣旨から判断して今回の展示方針が果たしてその目的に資するものであったのか甚だ疑問に感じます。
芸術家在外研修で派遣された芸術家はこれまで2,000名を超えています。
今回展示されている作家の派遣時期も大概は今から大分、年月を経っています。
そうでなく、最近の派遣成果を広く紹介することが、現代のアートシーンを広く紹介するという啓蒙効果や新たな鑑賞者の拡大という需要拡大、また若手作家育成という観点からも必要だと思います。
さておき、20日の東京新聞で美術評論家の中村隆夫がこのDOMANI展について「派遣先や興味の多様さは、世界をリードする美術が存在しなくなって久しいことも大きな一因」と指摘する一方、「日本の美術が海外に追随する時代はとっくに終わっている」と述べていますが、まさしくその通りなのでしょうね。
ポストモダンで大きな物語の存在しない時代において、世界をリードする芸術を生むことはもはや出来ないのではないかと思う一方、新たな表現方法の創出とその理論的支柱となる哲学を併せ持った芸術家が現れることを期待しているのが現在のアートシーンであるように感じます。
最後に、今回、宮いつきと平木美鶴の作品は印象に残りました。
宮は洋画、平木は版画と異なりますが、どちらも派遣先のアイルランド、イギリスの文化受容の経験を作家自身の精神性のなかで総括し、作品表現へと昇華させているように僕には感じました。
2月18日まで開催されていますので、寄ってみてはいかがでしょうか。
