2012年の大晦日。
1年の最後は園田競馬場の年末開催実況で締めくくることになりました。
この日はメインレースとして行われる重賞「園田ジュニアカップ」の実況を担当することになっており、いつも以上に観客も入っていることも相まってかなり気合が入っていました。
そんなメインレースの前に衝撃的な話が飛び込んできたのです。
オオエライジン、南関東へ移籍決定!!・・・・・・。
あまりに電撃的すぎる話で、まさに雷に打たれたような衝撃を受けました。
デビューから無傷の10連勝を飾り、今年はダートグレード戦線中心のローテーションで奮闘を続けていたオオエライジン。兵庫県デビューの生え抜きで久々に登場したヒーローでした。
今年のダートグレードレースの成績は、佐賀記念(Jpn3) 5着、帝王賞(Jpn1) 10着、東京盃(Jpn2) 7着、JBCスプリント(Jpn1) 6着、兵庫ゴールドトロフィー(Jpn3) 3着。
残念ながら中央の強豪馬相手に勝つことはできなかったものの、兵庫県の至宝として1年間夢を与えてくれました。強い馬と戦い、敗れ、それでもトレーニングを積んで再び立ち向かっていく姿に、園田競馬ファンは熱い声援を送りました。
来年こそは悲願のダートグレード優勝を成し遂げてくれるはず・・・そんな思いで新しい年を迎えられると思っていた矢先の移籍決定でした。
オーナーサイドや関係者の間でどういう経緯があってこうなったのかは分かりませんが、大事なものを失ってしまった気持ちで、心にポッカリと穴が開いてしまいました。
そんな中迎えた、園田ジュニアカップ。
2歳馬チャンピオン決定戦に勝ったのは圧倒的1番人気に支持されていたエーシンクリアー。
後方待機策から鋭い末脚を繰り出し完勝。
オオエライジンと同じ橋本忠男厩舎に所属する期待のホープは、兵庫若駒賞に続く2つ目の重賞タイトルを手にしました。
2歳でこの2重賞を獲得したのは厩舎の先輩オオエライジンと同じ。
オオエライジンを失った虚無感があったからか、実況ではつい「来年は是非この兵庫県競馬を背負って立つ存在になって欲しい」という言葉が出てしまいました。
衝撃の裏で確実にバトンは次世代のエースに託されたのです。
さて、話は前後しますが、遡ること4週間前。
12/6にも衝撃的な出来事がありました。「園田金盃」でオオエライジンが初めて他の地元馬に敗れる事件が起こったのです。
オオエライジンに土を付けたその馬の名はニシノイーグル。
2歳3歳時にもオオエライジンと4度対戦も全敗。オオエライジンが勝った兵庫ダービーでは2.4秒もの差を付けられての4着でした。
その後も、決して目立つ存在でなかったニシノイーグル。
しかし、クラスを一つずつ上げながらレース毎に一歩一歩着実に成長。
そして、ダービー以来1年半ぶりの対決となった園田金盃で、過去全く歯が立たなかったオオエライジンを半馬身差し切って大金星を挙げたのでした。
年が明けて1/3。この日は古馬の重賞レース「新春賞」が行われました。
豪華なメンバーが揃った正月競馬のこの名物レースはハンデ戦。前走でオオエライジンを破ったニシノイーグルにはトップハンデとなる58kgの斤量が課せられました。
「オオエライジンを破ったとはいえ、相手はゴール前でハミを取らずまともに走っていなかったしなぁ」「あの時は展開が向いただけで・・・」「斤量58kgではちょっと・・・」といった声も多く聞かれ、前走の勝ちをフロック視する人も多くいました。
ニシノイーグルのポジションはいつものように後方から。
向正面、残り600m手前から鞍上川原騎手の手が激しく動きます。先頭からは10馬身。しかしなかなかその差が詰まっていきません。
4コーナーでもまだ後方から2頭目。しかも進路は距離ロスのある大外でもう万事休す。
前では2頭が抜け出して叩き合いを演じ、デッドヒートの様相。
どちらが勝つのか手に汗握る攻防に目を奪われていたその刹那、大外から視界に飛び込んできたのはなんとニシノイーグル!
物凄い脚で一気に追い込み、内の2頭に一瞬のうちに並びかけた所がゴール。
きっちりとアタマ差差し切り、重賞2連勝達成したのです。
オオエライジンを破った豪脚はマグレではありませんでした。実力で勝ち取った大きな2つのタイトル。
2,3歳時は優等生の陰に隠れ、日の目を見なかったニシノイーグル。雌伏の時を経て大きく羽ばたく時が来たのです。
「俺がお前の後、しっかり兵庫の屋台骨を支えてやるよ!安心して出て行きな!」と去りゆく同期生へのはなむけの言葉がニシノイーグルの後ろ姿から聞こえてくるようでした。
突然兵庫を去ることになったオオエライジン。しかし、ライバルへ、次世代のスターへと確実にバトンは託されたのです。
オオエライジンのいない2013年の兵庫県競馬も、たくさんの夢と希望に満ち溢れ、千両役者達が素晴らしいドラマを見せてくれそうです!