最初の翻訳は1984年、この時の邦題は『女たちの遠い夏』(筑摩書房)だったそうだ。これが「遠い山なみの光」となり(Wikipediaより)、原題「A Pale View of Hills」に沿ったものとなった。
 映画を見る前に、読むよりはまず聴いてみよう、その方が楽でもある、と「日の名残り」に続いてオーディオブックから購入。
 「日の名残り」は朗読がよく、1,320円はお得と感じたが、「遠い山なみの光」は同額なのに1,020円だった。前の購入時に300ポイント付与されていたらしく、自動で適用されていた模様。さらにお得となった、と思いきや、懸念のとおり、登場人物が増えてくるにつれて、聴いているだけでは分からなくなってきた。
 「日の名残り」の朗読が分かりやすかっただけに、これはちと困った。

 この朗読者の作品を探すと、「暗殺」というのがあった。
 作品紹介欄には「・・・日本史上最長政権を築いた元総理が殺された、・・・この事件では多くの疑問点が見逃され・・・致命傷となった銃弾が・・・見つかっていない。被害者の体からは、容疑者が放ったのとは逆方向から撃たれた銃創が見つかった。・・・現場検証は事件発生から5日後まで行われなかった。・・・真犯人は誰だ?」とあり、確か鈴木保奈美の読書番組でも紹介されていた。相当にアクの強そうな、キワモノっぽい本という印象だが、なかなか面白そう。こっちはまた今度聴いてみよう。
 さて「日の名残り」の登場人物は少ない。主人公の執事と主人のダーリントン卿、そしてミスケントン、この3名を軸に展開していく。

 「遠い山なみの光」は今の悦子とニキ、昔の悦子とその夫二郎、、佐知子とその娘万里子、うどん屋の藤原さん、二郎の父緒方さん、など、無論聴いているだけでは姓名の字は分からない。これは映画の公式サイトで拾った情報。そして景子が出てくる。原作は英語なので漢字がどういう経緯で当てられたのか、ことに景子が何故こういう字となったか、これは漱石の三四郎に出てくる美禰子の「禰」の字と同じく、気になるところ。
 ともかくこれだけ人が出てきて朗読者は一人、だんだんこんがらがってきていたのだが、そして最後まで聞き終わらずに待ちきれずに映画館に足を運んだのだが、さすがに映画では一人一役、こんがらがることはなく、筋は追いやすい。ホッとした。

 ミステリーとあったので用心して観ていたが、自分なりに得心がいった。最後の方で出てきた木箱、アメリカ行きがイギリス行きになり、吉田羊が広瀬すずと万里子を陰から見つめるシーンなど。そういうことか。
 幼な子との記憶は懐かしく、痛切。記憶の過去は輝いてはいないがうっすらと明るみを帯びている。明るさは暗さあってのこと。それは優しい陰影を見せているあの山並みに似てもいる。

 また、いやに日本風の映画だ、と思いきや、これは全くの邦画であった。英語のシーンが多かったからそう思われたか。「日の名残り」では美しい田園風景が描写されていて親しみを感じたが、本作も懐かしさを感じる映像が印象として残った。
 自分としては名作の部類に入れておこうと思う。