冗長な紅白の終わり頃、昔豊川稲荷の除夜の鐘が聞こえたことを思い出した。
 世話になっていたIおばさんと二人だった。親は帰宅前か既に寝ていたか定かでない。Iさんが、鐘の音が聞こえると言って、私も耳をすますと、確かに聞こえてきた。108つやっているのかと二人で数え始めた。途中でできなくなったが、その後も何年かは大晦日の晩に耳をそば立てていた。小学校の頃だ。Iさんは山間部の出で素朴だが家事万能、耳も良かったのだろうか。
 昔は家を出ると豊川稲荷の大屋根が見えていた。お稲荷さんまでは大方は畑か原っぱ。夜は静寂。家も隙間風が入る昔の作りで、雨戸を閉めていても聞こえてきた。
 今は家も立ち並び、大屋根も2階からかろうじて避雷針が見えるくらい。夜遅くなると東名の方からも車の音が聞こえる。家もアルミサッシで高気密になった。
 それで、家の中では無理だろうと紅白が終わって外に出てみた。寒い。晴れていてオリオン座が見える。まもなく、鐘の音が聞こえた。50年以上前に聞いたあの音、Iさんと二人で過ごした大晦日の夜。3回くらいは聞こうと思ったが、寒いのでさっさと諦め中に入った。
 「青年は未来を夢み、老人は過去を夢みる」なんて英語のことわざがあったな、と思って調べると、「Young men see visions; old men dream dreams.」と出てきた(http://www.eigokotowaza.net/proverb/yp2.html)。
 未来より過去の方が長くなった。最近仕事で知り合ったIさんは毎年正月は渋谷のホテルだそうだ。初詣は明治神宮、2日は一般参賀、その後帰宅してお年玉を渡すとか。
 真似してみようと思ったが、年末年始は高い。旧正月に京都で一泊もいいかと思ったが、相方からそんな寒い時に、と言われた。京都ならお参りする寺社も多いだろうが、寒いか。四分六で実現は難しそうな感じ、敢行いたそうか、いかがいたそう。