この店に入るのは実に久しぶり。女将さんの赤い車が止まっているので今日は定休日ではないと分かるので入ると、お手伝いの小柄な年配の方が一人いるだけ。今日はお昼ごはんはありますかとの問いに、うどんならできますがいいですか、とのこと。この店はお昼はうどんが中心と承知しているので、頼んで席に着く。カウンターの中に茶箪笥にしては大きすぎるものが置かれている。年季の入った店内を改めて見回す。
お湯を沸かす所から始まったのでしばし待つ。できたてが食べられるという期待。お盆にはうどんと小鉢。うどんにかかっている七味は山椒が効いている。山椒は絵も描く多才な女将さんの特製と思う。まずはおつゆをすする。 先日だしの効いたうどんを食べたいと思いながら思わぬ所でおいしい食べ物屋さんに出会ったが、今日は本命に出会った。一人で感激。小さなおにぎりを二つほどでもにぎろうか、と聞かれ、では一つ、とお願いした。海苔は漆黒で、上等と目され、芯は昆布。ふと、お世話になったIさんを思った。Iさんのおにぎりも昆布が多かった。
私の家は共働きで住み込みのお手伝いさんが必須だった。山間部出身のIさんは献身的に面倒を見てくれた。妹が生まれて間もなく父が他界。母子家庭となり危機に瀕した。Iさんは私が中学生の頃までいてくれた。Iさんは独り暮らしとなったが、近所に住み、母も一人暮らしになってからは毎日のように会っていたようだ。母が亡くなり、Iさんも高齢となって実家に帰った。思い出は遠くなっていく。
目の前の老婦人を見て、小柄なことと優しそうな人柄に、ふとIさんを思いやった。この感じは、神楽坂の建て替え移転前のトレドに似ているとも思った。生粋の江戸っ子のご主人と奥さん二人で切り盛りする、美味しいお店。年季の入った店内で心づくしの料理を食べていると、まるで亡くなった両親に供されているようで、涙がにじんだこともあった。不思議なものだ。父は浅草育ちであったから、トレドとの共通点は、二人とも江戸っ子、ということくらい。ある夏、クーラーが壊れたとのことで、窓が開いた店内でお昼をいただいていたら、蝉の鳴くのが聞こえてきた。こんな都心で蝉の声を聞きながら昼食とは、贅沢なことだ、クーラーの故障もここでは吉か。トレドとの出会いは冬の東京出張だった。以来、出張の度墓のある市ヶ谷に寄りここに寄った。
うどんにおにぎり、思い出にも浸り、満足満腹。又来て感傷に浸ろう、と思った。
お湯を沸かす所から始まったのでしばし待つ。できたてが食べられるという期待。お盆にはうどんと小鉢。うどんにかかっている七味は山椒が効いている。山椒は絵も描く多才な女将さんの特製と思う。まずはおつゆをすする。 先日だしの効いたうどんを食べたいと思いながら思わぬ所でおいしい食べ物屋さんに出会ったが、今日は本命に出会った。一人で感激。小さなおにぎりを二つほどでもにぎろうか、と聞かれ、では一つ、とお願いした。海苔は漆黒で、上等と目され、芯は昆布。ふと、お世話になったIさんを思った。Iさんのおにぎりも昆布が多かった。
私の家は共働きで住み込みのお手伝いさんが必須だった。山間部出身のIさんは献身的に面倒を見てくれた。妹が生まれて間もなく父が他界。母子家庭となり危機に瀕した。Iさんは私が中学生の頃までいてくれた。Iさんは独り暮らしとなったが、近所に住み、母も一人暮らしになってからは毎日のように会っていたようだ。母が亡くなり、Iさんも高齢となって実家に帰った。思い出は遠くなっていく。
目の前の老婦人を見て、小柄なことと優しそうな人柄に、ふとIさんを思いやった。この感じは、神楽坂の建て替え移転前のトレドに似ているとも思った。生粋の江戸っ子のご主人と奥さん二人で切り盛りする、美味しいお店。年季の入った店内で心づくしの料理を食べていると、まるで亡くなった両親に供されているようで、涙がにじんだこともあった。不思議なものだ。父は浅草育ちであったから、トレドとの共通点は、二人とも江戸っ子、ということくらい。ある夏、クーラーが壊れたとのことで、窓が開いた店内でお昼をいただいていたら、蝉の鳴くのが聞こえてきた。こんな都心で蝉の声を聞きながら昼食とは、贅沢なことだ、クーラーの故障もここでは吉か。トレドとの出会いは冬の東京出張だった。以来、出張の度墓のある市ヶ谷に寄りここに寄った。
うどんにおにぎり、思い出にも浸り、満足満腹。又来て感傷に浸ろう、と思った。