読売新聞電子版(2024/07/23 05:00)に、「住宅メーカー社員の自殺、カスハラ原因と労災認定…「銭なんか払えねえ」と客から強い口調でクレーム」という記事(*1)。
記事中、担当弁護士が「通話の記録があり、認定の決め手の一つになった」旨指摘とあったが、これはパワハラでも同様。この種の事案では録音等の物証が鍵を握っている。
あるパワハラ事案、法廷で加害者側が否定、すると被害者側の弁護士が録音を提出し、たちまち形勢逆転、という話を聞いたことがある。
ハラスメントを行う側はその自覚がないか乏しい、それ故、被害者側の主張を否定しがちなのもそういう傾向が強いからだと推測される。やばいと思ったら録音すべし。
また、自殺事案では被災者は表に出さない傾向があるとも聞いたことがある。上の記事の事案でもそういうことが窺える。
記事にあるように、厚労省は昨年9月、心理的負荷による精神障害の労災認定基準を改正し、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」という項目を追加した(*2)。
同省が公表した「令和5年度「過労死等の労災補償状況」」によると、「顧客や取引先、施設利用者等から著しい迷惑行為を受けた」ことによる支給決定件数は52件、内女性は45件、自殺1件となっている(*3)。
精神障害全体では883件、うち女性412件、これと比べるとカスハラの場合は女性の割合が相当に高い。
なお、認定基準では心理的負荷が弱、中、強の三段階あり、支給決定は強であることが必要なようだが、不支給でも弱または中の場合がある。よって、不支給になったからといってハラスメント等がなかった、ということにはならない。事案発生があった時点で決定を待たず業務の洗い直しが必要である。
*1 https://www.yomiuri.co.jp/national/20240722-OYT1T50197/
*2 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_34888.html
*3 https://www.mhlw.go.jp/content/11402000/001276199.pdf
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