https://www.phileweb.com/review/article/202209/10/4869.html

これどうなの?と以前書いたことのあるオーディオ用チェアなる椅子のレビュー記事(PR記事)が出たので面白半分で覗いた。

「モダンにさりげなく仕上げるセンスは、さすがに北欧の家具職人が作ったものと言える。」
ロブスターチェア自体は中国製造だったはずなのだが、このモデルだけは北欧で生産されたのだろうか?設計は確実にデンマーク人なのだろうが、なんともきわどい書き方が行われている。

「大きく湾曲したヘッドに秘密があるようで、まず前からの音に対しては吸収能力の高い素材で濁りを吸収。これまで耳元を掠めて逃げていた良質な音も、しっかりリスナーに届く仕組みである。」
前方からの音を吸収するということだが、明らかに吸音という意味だろう。それでいて耳から逃げていたはずの音もリスナーに届くとのことだ。吸音しておきつつリスニングポジションに音が増加するというのは正直謎の理屈だが、恐らくレビュアーの概念によると「濁り」という望ましくない音の成分を除去しつつ、「良質な音」という望ましい音だけをリスニングポジションに集中させるという効果があるらしい。
いわゆるノイズフィルターのような効果を持った椅子というような概念があるのではないだろうか?有り得なさすぎて一読しただけではまったく理解不能であったが、何度か読み込んだところそういう意図にしか思えない書き方である。

「後方反射によるディレイの対策だ。普通は後ろに行った音は壁反射で遅延する。位相のズレた音を聴かされていたが、特殊形状によりその弊害を一気に解消。理にかなった工夫なのだ。」
後方の反射音はシャットアウトするとのことである。反射音の位相がズレるのはその通りではあるが、そもそも前方側方上方の反射音だって位相はズレる。だからその弊害は一気に解消するわけではない。
そもそも一定の方向だけシャットアウトして自然な響きになるとでも思えるのか、シャットアウトできればいいが、実際は大きなヘッドレストからの反射音でむしろ悪化するしかないように思えてしまうのは邪推でなければいいのだが。
9月の日本音響学会の無料公開分は高臨場感オーディオ特集号であった。
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jasj/78/3/_contents/-char/ja

なかなか興味深い特集内容であるはずなのだが、あまりピンポイントに有用と思える情報があるわけでもなかった。一番望んでいた特集内容であったのにイマイチだった理由そのものを考えつつ高臨場感オーディオの方向性について考えてみたい。

そもそも高臨場感オーディオというのは「あたかもその場にいるような感覚を覚えるような音響システム」とのことである。
ある意味ではしばしばオーディオマニアの目標とされる「原音再生」と非常に類似した志向である。
ただそのようなものを目指す場合に音響の研究者たちは概ねマルチチャネルによって達成しようとしているようだ。ほとんどのオーディオマニアは今でもステレオ再生で原音再生を目指していることから、その時点でも乖離が見られる。

そして高臨場感を演出するための研究というのは概ねスピーカーの配置であったり、ミキシングの仕方であったり、ヘッドホンで再現するための技術であったり、VR映像との連動であったりというものだ。
オーディオマニアが気にするようなスピーカーやアンプの音色などというものは高臨場感の研究にはあまり重視されているようには見えない。

ただこれはオーディオマニアが頑張る方向性が間違っているとかそういう指弾をするつもりではない。実際に今そういった最先端の音源や再生設備の入手性が悪く、結局のところステレオ再生が未だに一番魅力のある再生方式だからだ。
イマーシブオーディオはよりベターな方式なのかもしれないが、まずはそれを楽しむ環境ができなければ意味が無い。論文中にも記載されているように、需要が少ないから裾野が広がらない。需要を増やすにはローエンドでも手軽にその違いを実感できるように技術が進歩する必要がある。興味がなかった人にも数万円程度の出費をしたいと思わせるほどの高臨場感の違いが必要である。そういった意味ではまだまだ発展途上なのだろう。

また、論文中に記載されていたが高臨場「感」オーディオというのは「その場にいるような感覚を強く感じる」ことを目標にしており、「その場(原音)の音響」を再現するというものとは限らない。
原音とは厳密には一致していなくても臨場感を出せるようなミキシングを施した方が原音をよりも臨場感を出しやすいとのことである。

さらに方向性として、やはりスピーカーが多い方が臨場感に有利であるものの、多く配置することを必須とするのは敷居が高く、少ない数でもそれなりに臨場感を表現する技術の必要性は重要視されており、また多く配置する敷居を低くするためにワイヤレスのフィルムスピーカーの開発の必要性なども提唱されている。
音響的にリスニングポイントで良くなれば良いというのではなく、広い範囲で自然な音場が形成されることの重要性も言及されている。VRなど動くことを前提にすると、その項目は今後重要度が増すというものだろう。

正直なところピュアオーディオとしてのステレオ再生の場合に一致するところは多くないような印象だが、やはり音響の研究者達が高臨場感を表現するために必要としている方向性はそれなりに尊重して活かすべきだとは思うところである。ステレオ再生の場合には当てはまらないとしても、研究者達の良しと思うところとあえて全否定する方向に突き進むという考えはあまり得策ではないのかなと思う次第。
ソニーから新製品のプロジェクターが販売された。

https://www.phileweb.com/news/d-av/202208/09/56117.html


どちらの機種もネイティブ4Kの解像度を備えつつ、レーザー光源を採用している。
下位モデルは税込み88万円と、安いとは言えないまでも100万円以下のモデルが初登場した。
サイズとしてもかなりコンパクトなものとなっている。

4Kレーザーは巨大であったり高価格であったりが今までのイメージだが、それを覆すような製品だ。
その分レンズが小さかったり調整が手動であったりと上位機種に比べると高級感の少ないものではあるが、
ネイティブ4Kレーザーが普及機にも搭載され一般化されてきていることの象徴とも思える。

8Kは流行りそうもなく、マイクロLEDでの100インチ以上も普及価格帯で出てくることは当面なさそうであると考えると、大画面界隈のスペックはこのあたりで頭打ちになりそうではある。
ティアック、オンキヨー/パイオニア/クリプシュ等のホームAV製品の国内販売を今秋開始
https://www.phileweb.com/news/audio/202207/20/23520.html

先日破産となったオンキヨーホームエンターテイメントの影響で国内でのオンキヨーブランドのAV製品とパイオニアブランドのAV製品が国内では入手できない状態となっていましたが(そもそも破産する前からほとんど流通していなかったが)、海外の製造販売部門は他の企業に売却されて健在だったため、日本では入手できない最新モデルが海外では流通しているという状態でした。

国内の販売権を有していたオンキヨーホームエンターテイメントが消滅したことで、権利が宙に浮いたためティアックが海外の製造企業からオンキヨーパイオニアブランドのAV製品を仕入れて国内で販売することとなったようです。

AVアンプは一時期は日進月歩で新しい技術が実装された新製品が出ていましたが、ここのところ急ブレーキがかかっており、数年間は停滞していると言える状態です。
今後はどちらかというとバンバン新製品を出すと言うより、サポートに継続性があって撤退せず残り続けて製品が入手できるよう事業の持続性が求められていると思います。
そういった意味ではオーディオ以外の分野がほとんどなく、撤退など易々とできそうにないティアックが引き継いでくれたのは朗報と言えます。
オンキヨーホームエンターテイメントが瀕死だった時に一時期はシャープが出資するという話がありましたが、シナジー効果が薄く、メリットが多ければ撤退も躊躇なく行うであろうことを考えるとティアックの方で良かったように思えます。

AVアンプの日進月歩の時代は終わりましたが、他社と比較して魅力がなければ市場の存在価値がないことは揺るがない事実です。
オンキヨーパイオニアブランドのAVアンプはオンキヨーから切り離されPAC傘下となった開発部門が引き続き開発し、PAC傘下の海外工場が製造しています。
ティアックが販売するのであれば入手性の改善は期待できそうですが、今後の開発製造部門のオーナー企業の意向によっては日本の市場に求められる製品がでなくなる可能性もなきにしもあらずと言えます。

AVアンプに急速に進んだ淘汰の流れが今回の報道で少し緩和されたものの、余談を許さないという状況というのが現在の状態なのかもしれません。
世の中ではサブスク配信が動画視聴のメインストリームになっており、ディスクをリアル店舗にレンタルして期限内に返却するというスタイルは過去のものとなりつつある。

この前のamazonプライムデーで一時的にサブスクを登録したのでプライムビデオで何度か映画を視聴した。
そして先日ツタヤ会員の更新期限だったので更新がてらビデオのデンタルを行い鑑賞した。
どちらもそれなりの思うところはあったので今回の記事とした。

動画配信の場合、便利であることが圧倒的なメリットである。いつでも様々な端末で好きなものを視聴でき、一定期間に何本観ても料金は変わらない。つまらないと感じたら視聴を止めても金銭的なダメージはない。これは圧倒的なメリットである。
ただ、習慣的にコンスタントに視聴する人間でないと月々にかかるコストが無駄になりがちである。コンスタントに視聴するとサブスクが扱っている動画自体も枯渇しがちでもある。見る動画がなくなった状態でお金を払い続けるというのも良くない。
どちらかというとそのコスト自体よりも「今月はほとんど動画観なかったからサブスク代が無駄だったな」と考えてしまうことの精神衛生上の悪さが最大のデメリットと言えるかもしれない。動画の鑑賞というのは気が向いたときに気が済むまで観ればいいのだが、サブスクだと気が向かなかった時に自分の気持ちに従って視聴を控えると損した気分になってしまう。これが一番嫌なところである。

さらに動画配信はサラウンド関係があまり良くない。amazonプライムの場合fireTVという端末を購入しないとサラウンドには対応しない。サラウンド対応ソフトも限定される。対応していても5.1chまでだったりとフォーマットも貧弱な傾向がある。
コンスタントに使うならまだしもお試しの場合は敷居が高いように感じる。

対してレンタルの場合は圧倒的に面倒くさい。借りたら期限内に鑑賞しなければならないし鑑賞したら期限内に返却しなければならない。借りた作品が駄作でもコストがかかっているので勿体ないとコンコルド効果で視聴を続けがちでもある。
ただオブジェクトオーディオなど対応音声が豊富であったりフルHD品質ながら配信よりも画質が有利であることが多い。シアターシステムとの親和性も高い。

オーディオビジュアルの性能面も含めると個人的には一長一短と言えるかもしれない。
ただ配信もサービスが向上するに従ってレンタルに全ての面で打ち勝つ将来もありえるかも知れない。
Netflixが限界を露呈しているように逆に値上げという形でサブスクの欠点が増加することでレンタルの方が明確に優れていくかもしれない。

そのあたりは是々非々で自分の価値観で継続的に優劣を見極めていきたい所存である。
久々にacoustic fieldsの動画を扱いますが

Corner Bass Trap Nonsense

https://www.youtube.com/watch?v=QwgrJVLniLc


この動画で述べられているのは
・コーナーを処理したところで壁面の10%未満に過ぎず多くの問題は解消されない。
・利用用途がほとんどないコーナーに置けば音響障害が改善するというセールス文句自体が魅力的に感じるため、コーナートラップは商業上有利。
・周波数帯はあまり関係なくとにかく物量が足りない。

といったところ。

定在波の節とか腹とか、板振動型多孔質型とか、活かせるためにどうするといいのかという議論があるが、そもそも足りないという核心的なところを簡潔に突いている感はある。

とはいえ、他の壁面も処理した上でコーナーをどうするとより効果が出るかの議論が置き去りになっているので、ややシンプルに考え過ぎな結論にも思える。
GamuT、音楽愛好家のために調整した“世界初の音楽リスニングチェア”
https://www.phileweb.com/news/audio/202205/24/23354.html



本文中より抜粋

“世界初の音楽リスニングチェア”「GamuT Hi-Fi Lobster Chair」を発売する。価格は1,320,000円(税込)。
中略
販売店からの送料/設置費用は別途必要となる。
中略
高級家具メーカー・Kvist(クヴィスト)が製造している「ロブスターチェア」をベースに、GamuTとKvistが共同で、音楽愛好家のために特別に調整したというモデル。

ヘッドレストには、耳の周りの音がより良く反射されるよう設計された特別な素材を配置。また、特別な音響減衰材料に対応するためチェアの制振材と表面を変更し、効果的な音響処理を実現。

リスニングポジションの背後からの反射音が耳に届かないようにするとともに、ヘッドレストの前面領域に音が反射されるのを防止。サウンドステージがより正確で自然になり、音楽が生き生きと再生されるようになるという。

オプションとして、ロブスターチェア用に設計されたオットマンも用意。価格は660,000円(税込)

抜粋終わり

この“世界初の音楽リスニングチェア”なるものは価格はオットマン込みだと200万弱で送料含めると200万を超えてきそうですが、ベースとなるロブスターチェアは中国で20万程度で発売されているものです。
https://www.google.com/search?tbm=shop&q=%E3%83%AA%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%80%80%E3%83%AC%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%96%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC



ベースモデルから10倍近く高く設定された価格ですが、変更点としては耳の周りにカスタム素材を配置したこと、チェアの制振材と表面を変更したこと程度の小変更に留まっています。
また「ヘッドレストには、耳の周りの音がより良く反射されるよう設計された」とありますが、次の段落では「ヘッドレストの前面領域に音が反射されるのを防止」と書いており、ヘッドレスト周囲の音を反射するのか反射を防止するのかイマイチよく分かりません。まあおそらく座る側が吸音で、外面が反射なのでしょうけど。

そもそも頭部を中心とした同心円上にヘッドレストが配置されているのって、反射するにしても吸音するにしても設計的にどうなのかなと思ってしまいます。

反射するのであればヘッドレストが集光レンズのようになって、反射音がすべて頭部に向かって反射してくるので反射音過多で論外です。

吸音するにしても、表面素材を変える程度で大して吸音率を上げられるとは思えません。耳の近くで耳を取り囲むようにヘッドレストが広範囲に設置されているので、音楽鑑賞中にヘッドレストからの反射音がかなりの割合で入ってくると思われます。そしてレザークッションで反射された音というのは周波数特性的にもあまり良い音とは思えません。

もし仮にヘッドレストが「特別な素材」により高度な吸音を達成できていたとしても、側方後方の音を全てシャットアウトしてしまうので側方由来の音を削ぐことで「音像の広がり感」が低下し、後方からの残響音を削ぐことで「音に包まれた感じ」が低下すると言われており、設計思想的に学術的な知見とは相反しています。

実際に使用したレポがあるわけではないので、断定は控えたいですが、検証するほどの価値があるものなのかというとあまりそうは思えません。
オーディオ専用と銘打ったらよいものなのか、価格が高ければその分だけ価値があるものなのかというと、やっぱり違うよなあと改めて思わされ、今あるハイエンドオーディオの中でどれだけの物がこういった類いの商品なのかと考えると、なんだかなあと考えされられます。
ミュンヘン・ハイエンドで続々と各社のフラグシップスピーカーの新製品の発表が行われている中で最近のオーディオが向かっている先がどんな方向性なのかなというのを個人的に考えていたので、それを文章にしてみる。

・ミドルハイブランドのスピーカーの同軸化
・ハイエンドブランドのスピーカーの仮想同軸化やラインアレイ化
・ミドルハイグレードのスピーカーのアクティブ化
・DACとプリの統合
・アンプのD級化の進行
・高級ターンテーブルの増加


・ミドルハイブランドのスピーカーの同軸化
KEFは古くから同軸ではあるが、最近評価が上がっている。他にもGENELEC、FYNE Audio、Technicsなど同軸スピーカーを採用したメーカーが増えている。
それらに特徴的なのは、比較的特性重視であること、積極的に新しい技術を取り入れること、比較的手の届きやすい価格設定のモデルが豊富にラインナップされていることなどが共通している。
最新の評価基準で良く出す為に同軸が有利であることは事実のようで、どの周波数も同じ部位に定位し、どの周波数も同じような指向性で音が広がるように設計すると、ライブな室内環境では最終的に周波数特性が良くなり、リスニングポジションのずれによる音質低下の影響を受けにくくなるのだろう。
実際のところ同軸の欠点を克服できるなら、同軸の方が望ましいわけで、今後どのメーカーにも波及するかというとそうではないのだろうが、同軸自体は緩やかに増え続けるのではないだろうか。


・ハイエンドブランドのスピーカーの仮想同軸化やラインアレイ化
逆にミュンヘン・ハイエンドで出品されているような超弩級のモデルは同軸ではなく仮想同軸の設計が非常に多い。ラインアレイも増えている。
ツィーターが真ん中に1つ。ツィーターの上下にミドルレンジが2つ。一番上と一番下にウーファーが2つ。物によっては後ろや側面に対向配置でさらに大きなウーファーを備えているものが目立つ。
そしてそういったスピーカーは1千万円〜1億円台のウルトラハイエンドモデルに採用されていることが多い。
こういった設計を行っているブランドは優れた同軸ユニットを作れないから仮想同軸にしているかというと、違うだろうと思われる。
優れた同軸ユニットを用いれば、比較的シンプルな構成で特性の優れたスピーカーを作りやすい。KEFやGENELECがそれを証明している。
ただ、素性が良いというだけの製品を超えた満足感を追い求めるのがハイエンドオーディオである。同軸スピーカーでは点音源の発想のためステレオで結ばれる音像の上下的な幅が原理上狭くなる。素性は良いがこじんまりした感じなる。大規模な仮想同軸で構成されたスピーカーは原理上は点音源であるが、音源の点が凄く大きな球となるので、上下的な音像の幅が広くなる。その分音像が大きくなり迫力のある音になると考えられる。
同軸は素性が良いがこじんまりしており、非同軸の3wayは迫力のある音にはなるが時間軸や方向性が不正確になりやすく、大規模な仮想同軸は素性の良さと迫力を兼ね備えたものとしてウルトラハイエンドでの1つの答えになりつつあるのではないだろうか。
また仮想同軸は不完全ながらラインアレイ的な特徴も持っており、直接音の影響を増やし、間接音の支配力を減ずる。それによる押し出し感の良さなども狙っているのかなと思われる。
音像が大きい方が良いかというと必ずしもそうとは言い切れないので、モニタースピーカーや特性とコスパ重視のブランドは同軸の設計にする傾向がある。ウルトラハイエンドスピーカーでは前述のコスパ重視の音にはないような「すごい音」を作らねば存在価値を見いだせないため、大規模な仮想同軸の設計にしているのではないだろうか。

・ミドルハイグレードのスピーカーのデジタルアクティブ化
KEFが最近LS60 wirelessというオールインワンのアクティブスピーカーをリリースした。高級モデルであるBladeの設計思想を普及価格帯に落とし込んだ同社にとってかなり重要な位置を占めるモデルであると思われる。
LS60自体は今後パッシブスピーカー版も発売する可能性が十分あるが、最初にワイヤレスのアクティブスピーカーとしてリリースしたことが時代の変化を感じさせる。
アクティブ化はかつては非マニア層が導入しやすくするためのセールス優先、音質妥協のモデルの位置づけのことが多かった。だから戦略的なモデルで最初からアクティブスピーカーを優先してリリースするというのはあまりないことだった。
アクティブ化が現在も妥協の産物であればこんなリリースの仕方をするはずがないもので、むしろ音質的に有利と考えているからこそアクティブスピーカーを先に出したのではないかとすら考えているようにも見える。

丁度ミュンヘン・ハイエンドでYGアコースティックの代表的なモデルSonjaもデジタルアクティブスピーカー版が発表された。
下位モデルのVantageは先んじてデジタルアクティブ版が発表されていたが、Sonjaまでアクティブ版を発表するとなると、販売層の裾野を広げるためのカジュアルモデルとは言い難い姿勢に見える。

パッシブとアクティブで一長一短はあるが、パッシブのクロスオーバー回路と比べて、アクティブだからこと可能な特定のスピーカー用にカスタマイズされたDSP+DAC+アンプを用意することのメリットが魅力的になってきているのではないだろうか。

特にYGアコースティックのような密閉型の場合、バスレフがないので低域の質は良いものの、超低域の量感を得るのは難しい。ウルトラハイエンドモデルのXVのようにウーファーを何発も用意すればどうにかなるが、ウーファー1発だけしかないようなモデルだとパッシブでは限界があるように思える。
ただデジタルアクティブ化するとDSPで積極的に量感を増やすことが可能なのでメリットが多いように思われる。

ただ自社のそこそこ戦略的なモデルは積極的にアクティブモデルを出す傾向が強くなっているが、KEFのMUONにしろYGのXVにしろ自社のウルトラハイエンドモデルはパッシブを貫いているのも共通している。
ウルトラハイエンドモデルの場合、そもそも買える層が限られており、買う層がアクティブ化を望んでいるかというとそうではないのは明らかであり、恐らくウルトラハイエンドがパッシブというトレンドは継続するのではないだろうか。ただその下の現実的な価格のモデルではアクティブモデルがそれなりに増えてもおかしくないように思われる。

アクティブスピーカーはオーディオ趣味の人達の所有するアンプやDACを否定するものとなりかねず、反感を買うリスクがある。それでも特性重視のメーカーほどアクティブ化する傾向があり、客の顔色をうかがいつつではあるもののアクティブ化は今後の普及する方向であるように思える。


・DACとプリの統合
以前からも雑感として述べていたが、それがさらに進んできた印象がある。アナログプリアンプよりもDAC+プリの方が新製品として多数派になってきたようにすら感じる。


・アンプのD級化の進行
D級アンプモジュールのHypexが主力製品NCoreの後継製品となるNilaiを発表した。大幅な特性が向上を果たしている。
ここのところピュアオーディオでも普及がめざましいD級アンプであるが、スイッチングの高速化も含めてまだまだ伸び代がありそうである。DACの性能向上がここ最近落ち着いてきたので、一番めざましいのはD級アンプとすら思える。
前述のスピーカーのアクティブ化もD級アンプの性能向上が重要な役割を果たしている。
今後はA級AB級は趣味性重視の需要がメインとなり、D級に負けない駆動力が要求されるため超弩級のものをメインに残るのではないだろうか?


・高級ターンテーブルの増加
このところLPレコードが世界で賑わいを見せており、ターンテーブルも複数社が超弩級のものをリリースしている。
LP自体の再評価の流れもあることは間違いないが、前述のようにアンプやDACなどがコスト目的ではなく音質目的で統合されるケースが多い中、DACやアンプが大規模であればそれで良いのかどうか疑問を持たれるケースも出てきているのではないかと思われる。
ターンテーブルはLPを利用するのであれば、統合されることはありえない機材であるので、ターンテーブルのハイグレード化に価値を見いだすケースが多いことも想定される。
また完全アナログな機材であるため、物量が高音質化に寄与しやすく、コンポーネントの中ではスピーカーに次ぐ趣味性が高い、コスト投入により見返りを得やすいものであるというのが影響しているのかもしれない。
オーディオビジュアルに関するニュースや提灯レビューなどを配信しているサイトのPhile web内にコミュニティという私的なブログや私的な製品レビューを行うコーナーがあるのですが、そのサービスが今年の後半に終了するそうです。
自分は一切やっていませんでしたが、少しやってみようかなと思ったりもしたサービスでした。
ただ、以前は投稿すると他の新しい投稿で埋もれるまで、ニュースサイトの右側の割と目立つところに自分の日記やレビューが載るので、それなりに自己顕示欲がないとなかなか辛いし、逆に言えばひっそりと書きたいものを書くことができない仕様ではありました。

このサービスが始まるまではFacebookやtwitterなどがない時代だったので、今やSNSが発達しすぎて独自サイトでのコミュニティ機能を維持する理由がない(そのサービスを運営する運営費を負担しようというメーカーがない)ので仕方ないのかもしれません。

blogなんかもこの先どうかなというとやや怪しいところはあります。スポンサーがSNSに広告打つ為にブログの広告の出稿を控えるという傾向が強くなるかもしれませんので。

時代の変化は抗いがたいものはありますが、しかしSNSは拡散力には優れるものの欠点も多く上位互換的サービスではないので、考えが古いと言われたくはないものの、新しければ良いという考えに陥らないようにしたいなとは考えています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/aa45a08a0bc678fa1d7a98d4a2af380a5f0f6060

元JASDAQ上場の音響機器名門、オンキヨーホームエンターテイメント(大阪)が破産

とうとうこの日が来てしまいました。山水みたいに死にかけで粘るのかと思いましたが、割とあっけないものです。
ほとんどの部門を売却しているため、本体が生き残ったとしてもあまりAV機器に選択肢が増えるというものではないのですが。

実際の所、散り散りになって最終的に破産したのはオンキヨーホームエンターテイメントで、主要部門は一部他社に売却されたり切り離されて残っていたりするので話がややこしいです。
AVアンプなどを販売するオンキヨー・パイオニアのホームAV部門の海外事業に関してはVOXXに売却しており、まだ稼働しているように見えます。
https://www.intl.onkyo.com/index.html


ただ国内のAV機器の販売に関しては今回は破産したオンキヨーホームエンターテイメントが行っていたため、完全にストップしています。(元々ここ1年以上据え置き型のAV機器を売っているところを見た記憶がありませんが。)

一番肝心な製造はVOXXグループとオンキヨーホームエンターテイメントが運営していたオンキヨーアジアエレクトロニクス(マレーシア工場)で行われており、現時点では事業は継続しているようです。

シャープ+VOXXに売却したのだからシャープがなんとか続けてくれるみたいな根拠なき希望があったのですが、少なくとも国内に関してはそういう訳ではないように思えます。
パイオニアのAVアンプがまだ自宅で現役ではありますがiOSアプリの更新は5年前で止まっており、アップデート関係は絶望的に思えます。できればAVアンプやUHD-BDプレーヤーの次に買う機材もパイオニアにしたかったのですが、叶わぬ夢となりそうです。。。

クラウドファンディングで募集していたオンキヨーブランドの幻の最新ネットワークレシーバーTX-8390(S)とパイオニアブランドの幻の最新AVアンプLX904は破産管財人によるとリターンとなる製品の提供は破産によりほぼ絶望的とのことです。。。

製品紹介動画https://www.youtube.com/watch?v=eHP6KdzK7VM&t=1s
破産管財人
https://www.ohe-kanzai.com/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E/QA

ちょっと自分も欲しいとは思いましたが、クラファン自体が怪しいのとAVアンプは値落ちが激しいイメージがあったので、値落ちしてない価格で買うのに気が引けたので参加しませんでした。
参加していたら危うく破産債権者でした。

議決権行使した株主にQUOカード(300円)とONKYO DIRECTクーポン(700円)配布すると言われていたものも配布は結局絶望的なようです。
要らないからと回ってきた去年の株主優待でPioneer SE-C8TW-ODというワイヤレスイヤホンを注文し、今も自宅にありますが、正直ケースに重厚感があるだけで他は全てがイマイチという製品でした。


ハイレゾ音楽のダウンロード購入サイトであるe-onkyoはQobuzを展開している仏Xandrieに売却しているため、今回の破産と関係なく事業を継続できているようです。
https://av.watch.impress.co.jp/docs/news/1354526.html

なのでe-onkyoで購入した楽曲が再ダウンロードできなくなるとかそういった心配はないようです。


パイオニアはホームAV部門はオンキヨーに売却しグチャグチャにされてしまいましたが、ホームAV部門以外は今回の破産と関係なく健在です。
PC用のBDドライブ部門は特に影響はなさそうです。(以前はそのあたりがよく分からず、オンキヨー上場廃止の際に音楽CDリッピング用途にBDドライブの現行機種を1台確保しましたが、急ぐ必要はなかったようです。)
カーオーディオのカロッツェリアも健在です。
TADもアンプやプレーヤーも含め健在です。

オンキヨーブランドとパイオニアブランド自身がホームシアターシステムのカスタムインストールを行うという「オンキヨー&パイオニア一級建築士事務所」はすでに公式サイトのリンクが切れており、巻き込まれているようです。2020年7月にくらいから始動したようなので、もしかしたら工事中に飛んでしまったなんて悲惨な施主もどこかにいるのかもしれません。
https://www.phileweb.com/interview/article/202009/28/776.html

オンキヨーホームエンターテイメントは破産しましたが補聴器の販売やオンキヨーダイレクトを運営しているオンキヨー株式会社は2022/05/13時点では存命のようです。
https://onkyodirect.jp/shop/

一通り調べた感じはこんなところでしょうか。最後の最後は細分化されてしまいややこしくなってしまっています。
オーディオの入門機、普及機は国内ではパナソニック、ソニー、デノン・マランツ、ビクター・ケンウッドあたりしか残っていないようですね。かなり淘汰されてしまった印象にはなってしまいます。



自分が保有しているオンキヨー・パイオニアブランドの遺産

SE-U55X
https://ascii.jp/elem/000/000/330/330215/

2000年発売。20年以上経過してますが、USB入力を備えたオーディオインターフェースとして周波数特性やインパルス応答の測定に現役で使っています。
安物で古い物ではありますがPCから出力されるテスト音をRCA出力に変換してくれればいいだけなので十分なんです。壊れるまで使います。

SE-150PCI
https://av.watch.impress.co.jp/docs/20041115/dal168.htm


2004年発売。現在ではマザーボードが対応していないPCI接続なので、利用できません。今も家にありますが。
大学時代にPCに付けていました。コンデンサー積みまくりで強者感出ていて人気がありました。
今考えて見ると音質と言うより視覚的インパクト優先だったのかもしれません。
C.E.CのエントリーヘッドホンアンプHD53に接続してヘッドホンオーディオをやっていたのが最初のヘッドホンオーディオの構成でした。

DV-610AV

https://news.kakaku.com/prdnews/cd=kaden/ctcd=2025/id=2395/?lid=k_prdnews


2008年発売。SACDも再生できるDVDプレーヤーです。遺産と言いつつこれは故障して捨てたので今手元には残っていません。
低価格ながらもDVD再生だけでなくSACDのマルチチャネルをDSDのまま対応できたのが個人的に差別化されていたポイントでした。
SACDのマルチチャネル部をHDMIを出力できるだけでなく、アナログで5.1チャンネル分対応できていました。
これにステレオアンプを複数台繋げて組んだのがマルチチャネルオーディオの最初のシステムでした。
今や伝説となっているゴールドムンドの高級DVDプレーヤーの中身はこの機種の1世代前のものです。

SC-LX59
https://jp.pioneer-audiovisual.com/components/avamp/sc-lx59/


2015年発売のミドルクラスAVアンプです。
・プリ出力なら11.2chまで対応(パワーは9chまで)
・ドルビーアトモス、DTS:X対応
・マルチチャネルに相性の良いD級アンプ
・ESSのDACを全チャンネル搭載
・位相調整機能
・4K/60p、HDCP2.2対応
という今でもそこそこ使える機能を持っています。この頃までのパイオニアが出した音響研究の論文を読んでみてもしっかり基礎的な技術を蓄積しており、他では出せない素晴らしい製品を出せる力がありました。(その後はご存じのとおりですが)
HDMI2.0は時期的にも対応してないのでシアターシステムを最新にしようとすると買い換えは必要ですが、そもそもシアターシステムをアップデートするほど4K映像を見る機会がないので当面は現役です。

SE-C8TW-OD
https://www.phileweb.com/review/article/201805/15/3016.html


株主優待のポイントを使おうにもまともな選択肢がなく唯一と言えるものがこれだったため3個注文しました。
おそらくほとんど外注だったのではと思える個性のないものです。
・充電ケースは重厚
・音質は数千円クラスで無個性
・装着感はイマイチで抜けやすい
・接続は売れてる中華と比べると安定性悪い
サブPCで音楽鑑賞以外の音声をイヤホンで聴きたい時に現役で使っています。
正直Soundpeatsの方が使いやすいです。