Sound Reproductionはやはり良書ではあると思う。今回は自分にとっての疑問の解決と論点整理が進むという意味であるのだが。

音楽を作る側は良いと思う設計と音楽を聴く側が良いと思う設計に若干の違いが出る部分があるということを明確の述べてくれているし、周波数特性には悪影響はあったとしてもリスニングにはあった方がよいと言う要素をちゃんと優先すべき順位をつけて説明してくれている。
そういうものを明文化してくれなかったら、音楽を作る人間が好まない傾向がある、周波数特性には悪影響があるといわれていることに対して、そんな要素を付けたら音が悪くなる。邪道だ。ありえない。耳が悪い証拠だ。などという批判を懸念して採用するのを躊躇うケースが非常に多いと思う。
それを、音楽を作る人間は好まないことが多いし、周波数特性にも悪影響があるのは事実だ。けれども音楽を聴くときにはあった方が良いと感じるし、周波数特性への影響も部屋が広いなどの条件があれば問題ない程度だ。と言及してくれていることで救われるものがある。通り一遍の表面的な知識だけの書籍だとこういう救済をしてくれない中でSound Reproductionは拾ってくれているところが白眉ではあると思う。

またまた音楽再生の部屋はガチガチのソリッドな壁にした方が良いと言われているが、それは防音を目的としたものであって、バランスのよい低域を実現するためならそこまで分厚くない方が良いと言ってくれている。そういった部分もやはりそれなりの説得力のある立場の人が明言してくれることで救われる人はいるとは思う。

部屋の音響調整となると1番目に防音がきて、2番目に音響障害の解消が来て、最後に正しい特性が来る。そしてそこまでになってしまうことが多い。
ただ、コストがかかるものではあるし趣味性の高いものではあるのでやはり悪い所がない、正しい音が出るだけのためにそこまでやっても面白くないのではないか。
趣味のオーディオとして理想的な部屋の音響調整は1番目に最低限以上の防音を必要としてない立地がきて、2番目により好ましい音にする処理が来て、最後に音響障害の解消がくるというものではないだろうかと感じるところである。

音響設計としてITDGを10ms確保して床も一次反射面は吸音として定位を作り出す時間には直接音以外を入れないようにする。
10ms以降にスピーカー側の側壁からの一次反射音を積極的に入れる。一次反射音は正面から120°以上の角度をとってワイドにする。これによりASWを幅広くして広大な音像を作り出す。他の一次反射音は積極的には入れないようにする。
10ms以降に後期反射音を満遍なく入れてLEVまではいかずともライブ感を出しつつも音響障害にならない程度まで細かくし、なるべく上方からの反射音を多くして開放感を出すというようなものが良いのではないかと考える。残響の長さは拘らず明瞭さに欠けるようなら吸音部を作り、前の音で次の音がマスキングされるような印象がなければ小空間でできる残響時間を残しておく。

こういった設計にすると、定位は良い割にダイナミックな音像となり、広々とした空間の音になるのではないだろうか(実際にこれをやるには広々とした部屋が必要なのだが)。そんな音はすごいと思える音、気に入る音、好きになってしまう音ではあると思う。
もちろんこの設計だと周波数特性はベストではなく、明瞭さを最優先にしたものでもないが、ベストではないなりに許容範囲に収まるだろう。趣味としてやるならこういった音ではないかと自分では思えてくる。


Sound Reproductionを機械翻訳にかけたら案外読めたので調子に乗ってAcoustics of Small Rooms を読んでみる。


内容は良い意味でも期待外れな意味でも教科書的で、数式などが多く網羅的に解説されているが、応用的にこういう知見があったのかというの発見は少なかった。
備忘録で残しておきたいものというのもこれといって無かった感じ。
とはいえ新しめの本で網羅的に基礎的な学術情報が入っているので疑問に思った時に改めてこの本で調べてみるなどして読み返して役立つこともありそうだ。
ホームオーディオの室内音響に関しての書籍で大きな存在であるSound Reproductionではあるが、翻訳版がなかったので読むのを躊躇っていた。仕事でも洋書を読むのは苦手だったし、今は洋書を読まなくなって久しいのでより苦手になっている。


ただ、デジタル版を手に入れることができたので、web翻訳にかけて読んでみた。細かいニュアンスが分からないのだが、一度機械翻訳版を読んだ後で原本を読めばスムーズに読めるだろう。

気になった部分を備忘録として書き留めておく。
・ASWは聴覚上のポジティブな印象を与えるということは複数の研究から支持されている。

・ASWは30〜90°の幅広い音像を作る部分で効果的である。後方やスピーカーの内側からの一次反射音はあまりポジティブには評価されていない。

・側方反射音はリスナーにとってはあった方が良いが、ミュージシャンやサウンドエンジニアは無いことを好む傾向がある。強い作用があるだけにモニター用途では存在が気になるということである。ハイファイオーディオの場合は細かい音を拾うことを好むリスナーが多く、排除すべきなのか活かすべきなのかその中間をとるべきなのか、この辺りはかなり流動的と言える。

・LEVは小空間だと残響時間が少ないため限界があると繰り返し述べている。そして大空間のLEVを再現することは無理があると述べている。とはいえ大空間でのLEVを聴いた体験や感情を思い起こさせる目的でそれとは別物であっても小空間にLEVがあることは有用であるというような内容は述べられている。妥協の産物ではあってもそれでいいじゃないかという発想である。

・ASWの側方反射音は一般的な小空間のものよりも遅延が大きく反射が大きい音の方がポジティブな効果が期待できるということだ。パッシブな音響であれば遅延を大きくすることはできても、反射音を大きくすることはできないのでサラウンドでそのような反射音を作ることの有用性を述べている。ステレオ再生であれば音の大きさは仕方ないので目をつぶって、側方反射の遅延が大きい方がASWとしてはより良いというtipsと考えて良いのではないか。

・反射音との干渉によって起こるコムフィルタ現象は周波数特性を変化させ音のカラレーションを起こす。リスナーにとってはこのカラレーションが好意的な音の変化と捉えられるようである。周波数特性はフラットであることはリスナーにとってそこまで重要ではないのではないかというのは各所で言われていたことだが、むしろカラレーションしていた方が良いことまであると研究レベルでも言及されているのは軽く衝撃的ではある。ただカラレーションを積極的に行っていくことが設計として正しいのかというと微妙なところではある。

・直接記載されていることではないが、読んでいて感じたこと。初期反射音は聴感上の直接音をダンピングするものである。そのため初期反射音を排除すると聴感上は直接音量が減少する(能率が悪くなる)。その分を音量を上げてもうるさく感じない。音量を上げられるということは残響音の音量が上がり残響時間を長くすることができる。ただ本書では小空間では残響時間は重要ではなく0.2~0.5秒あればよいとは述べられている。有用な初期反射音はスピーカー側の側壁しかなさそうではあるので、その部分以外の初期反射音は床や天井含めて排除しても良さそうである。

・側方反射音のASWにしても、コムフィルタ現象のカラーリングにしても、LEVの存在にしても、いわゆる音の分解能に関しては正の影響とならない可能性が高く、おそらく負の影響がある。明瞭さを犠牲にしても付与した方が良い音になるという要素が研究レベルで見つかっていることの証左ではある。ステレオ再生において分解能を追求しただけでは必ずしも良い音にならないとは言われがちだが、原因は聴き疲れしやすいとかつまらないとかそういう話になりがちであった。分解能を犠牲にしてまで他の要素を組み込むとしたらどのようにすれば良いか、というのはデメリットを負いつつもそれ以上のメリットを追求するものなので難易度が高い。エビデンスのある情報を活かして追求すべきものではあると考えられる。

・コムフィルタ現象が実際にはあまり問題にならない理由は比較的しっかり述べられている。少なくとも10msの遅延があればひどいディップが起こることはなく、そもそもコムフィルタ現象の減衰も最大で-6dBに収まる。音の立ち上がりの最初の部分は反射波の干渉を受けないため聴感上の問題になりづらい。最初の周波数が1/3オクターブバンドに変換するとほとんどディップにならない程度になる。左右の耳でコムフィルタ現象の起こり方は異なるため、単純なマイク測定のものよりは現実の耳ではある程度補償される。などがその要因だそうだ。
コムフィルタ現象のカラーリングが良いと感じるのかは微妙ではあるが、側方反射音を10ms以上遅延させればコムフィルタ現象の負の面は少なく、ASWの恩恵が大きいので活かした方が良い場合が多いという説が補強されている。

・内側の壁はあまり強固にしない方が良いと述べられている(具体的には石膏ボード2枚ではなく1枚)。定在波が明確な影響を発揮させないためということである。もし防音をするならグラスウール層の外側にする方がよいと言うことである。これはコストパフォーマンスを考慮すると賢明な案かもしれない。床や天井に関しても強固であることがどこまで良いことに繋がるかというと諸説あってもよいのかもしれない。ただコスト度外視で究極を目指す場合にこれが良いのかというと他の選択肢があるのかもしれない。いずれにしろリスニングルームはガチガチの防音室にするより、音を漏らしても構わない立地で防音しすぎない部屋を作る方が良いのではという考え方に信憑性が強くなっている印象がある。

・本書では小空間のLEVには懐疑的ではあるが拡散体の設置には否定的ではない(ただそれほど詳しくは扱っていない)。大半の吸音材は実際には半吸音であり跳ね返ってくる音も存在する。吸音層からの反射音はあまり性質が良くない。その点では拡散体は跳ね返ってくる音の素性が良いけれども、返ってくる音の大きさが減少する拡散体に優位性がある。また部屋の中の音響エネルギーの総量をそれほど減らすことなく反射波を弱められる点も有用性があるとしている。また拡散は水平方向の拡散が聴感上効果があるとしている。

・少し気になるのは本書の通りにしたとして、音が悪くない部屋になるのは間違いなさそうではあるが、感銘を受けるほどの良い音にすることができるのかは少々疑問が残る。実際に部屋の音響処理をする人間に多大な負担をかけない提案が多いのだが、「これは普通にしてても結構良いよ」みたいなものが多く、特別な音を出すためのヒントは少ないためである。

・いずれにしろ可変性はとにかく大事だとは思えた。側方の初期反射面にしても以前は吸音、少し前に拡散が提案され、本書では反射が推奨されている(ただしエンジニアやミュージシャンは吸音)。現時点で本書の見解で皆が一致している訳でもないし今後何が良いとされるか分からない。部屋のオーナーが何を好むかも分からない。ただ知識を備えた上であえて反射をさせるのも独りよがりな手法などではなく、それなりに支持されている手法だというのは一番注目したいところではある。
正面壁は間接照明や音響処理をデザイン性のあるものにして相対していて飽きない、居心地の悪くないものにすべきという話に前回なった。
それ以前の考察では、正面壁の一次反射音は中低域優位の周波数特性を有しており、スピーカーより内側から到来する初期反射音は聴感上の明瞭さを損ないやすい。そのため正面壁の一次反射面は中域やできれば低域などにフォーカスを当てて激しい一次反射音がリスニングポジションに来ないように対処すべきだと述べた。

上記の2点(+可変性)を考慮したいとは思っているが、そもそも中低域を扱うと言っている以上は正面壁は生半可に対応してもうまくいかない可能性が高い。デザイン性や可変性も大事だが、まずは正面壁の一次反射面に効果的な施策を行うことを優先して行うべきだと考えた。そして正面壁からの反射を介して逆方向の側壁に音が飛び、定位を乱す現象もなるべく軽減したいと考えている。
まずはそこから設計することとした。

正面壁の一次反射面の処理ではあるが、拡散は基本的に中高域に作用するものであり、中低域に十分な効果は期待しづらい。とはいえ吸音は最初から行いたくない。
ということでリスニングポジションに向かう反射の方向を逸らすdeflectionを用いたReflection Free Zoneで対応すべきと考えた。結構昔に同じ結論で考察した気もするので同じ思考プロセスを2回繰り返してしまったことになる。学習効果とは。。。

正面壁の一次反射面を含めてリスニングポジションの座標を中心にクサビを作った。拡散などを組み合わせてもいいが、波長の大きい音の進行方向にしっかり影響を与えるには大きさ的にもdeflectionを目的にしたクサビの方が効果がある可能性が高い。
そして逸らされた反射波はスピーカーのある側の側壁に向かい、さらに反射する。これはASWを増加させ広がり感を与えるのに効果的な後期反射音になってくれる可能性がある。
音の明瞭感に悪影響が出る可能性が高い一次反射音を変換して音の広がり感の増大に寄与する後期反射音になってくれることが期待できる。マイナス要素をプラス要素に変えることを期待したものである。



ただ、「正面壁の一次反射面の反射波を逸らすこと」と、「他の壁やリスニングポジションに入るはずの反射波をスピーカー側の側壁に反射するように方向転換する」を達成するだけならここまで大きくする必要はない。
逸らし板によってスピーカー側の側壁に音波が流れるのは下記の部位だけだからである。



それ以外の場所は逸らし板があることで反射波の方向は変わるが、正の影響がないかもしれないし、負の影響があるかもしれない。
上記の図だとクサビというより側壁の案で示したようなフラップになっている。
今回はフラップのままの設計で良いのではないかと考えている。
なぜかというとフラップにするならドアのように蝶番で壁とフラップを接続することで可変性のある逸らし板にすることができる。角度を変えたり役立たなかったらしまったり取り外したりできるから可変性として優れている。
またフラップの裏側は逆ホーン型になっており、迷入した音の消音効果を期待できたり、消音できないにしてもスピーカー側の側壁に反射を返してくれる形態をしているので今回のコンセプトの目的に沿った追加効果が期待できる。


上記の設計を取り入れつつ、後壁の一次反射面をdeflectionや拡散もしくは吸音で処理する。そしてそれ以外の部分はできれば拡散、耳の高さ付近はできる場合は上に逸らすといった感じで、特別この場所はこうしなければという要素が思いつかない。
今回の石灰の反射波の挙動はこんな感じになる。


リスニングポジションに入射しない波も表示する。
スピーカー側の側壁からの入射波は残っているが、他の面からの音は抑制されている印象はあるので設計的にはいけそうな気はする。



この設計をベースにデザイン性や居住性や細かい部分を設計していく感じなるか。
以前の記事で耳の高さ付近を上に傾斜させると反射波の上方成分が増えて良いのではないかという案だが、



ディスプレイできる本棚みたいなものであれば、耳の高さに斜めに傾斜した板があってもデザイン的におかしくないと思われる。こういう使い方をするなら傾斜板を隠すものではなく見せる設置の仕方でも問題ないのかもしれない。


正面壁で見飽きない、かつ中低域まで影響を与えられそうなものを検討していたが、
ミュージアムやホテルのエントランスなどでは立体感の強い装飾壁と効果的な間接照明で魅力的な空間を演出している。





これの丸パクリでは音響的な影響は十分ではないのかもしれないが、同じようなデザイン手法を使えばできそうな感じもする。ホテルのエントランスなどの壮大な装飾建築は待ち時間についつい眺めてしまうものであり、飽きにくいものでもあると思う。
正面壁は何もオブジェなどを置かなくても、装飾建築とライティングがあれば長時間向き合う壁として十分なのかもしれない。
正面壁のインテリアデザインについて、音響調整だけでなく長時間向き合っているのだから見ていても飽きづらい仕掛けをしておくべきではないかということになったのが前回の記事ではあるが、どんなものがいいのか考えを巡らせてみたのが今回の記事となる。

案1:アクアリウム
見ていて飽きないという意味ではこれが一番ではあると思われる。ライトアップをすれば暗くしたリスニングルームで映えるし日々の変化もある。動きもある。長い時間見ていられそうではある。
ただエアレーションの音があるのが難点であるし、表面は平滑なガラスでないといけないので音響調整に支障がある。水のトラブルで高額な音響機器の故障リスクもあると実際には現実的ではないだろうし、もっと無難な案を生み出したいところではある。

案2:写真のスライドショー
自分の撮った今までの写真のスライドショーを出すという案である。モニタでもいいしプロジェクターでもよいので音響調整との干渉を最小限にすることはできそうだ。ただ写真にはそれなりに思い出が入っているわけなので、音楽聴きながら見るというのは気が散りすぎてしまいそうで音楽鑑賞の邪魔になってしまいそうな気はする。プロジェクターにするにしても今度は動作音が音波ノイズになってしまう。

案3:家庭用プラネタリウム
音楽再生中は室内を暗くするので相性が良いような気もする。星という気にしようとすれば興味に対して返ってくるものはあるが、気にしようとしなければ気にならないので、音楽鑑賞中の引き立て役の存在的には丁度いい感じもする。部屋をほぼ真っ暗にしないと使えないのが難点ではあるし、内部にプロジェクターが入っているはずなので動作音が問題になってしまう。
ただこれはそもそも設計段階というより完全な後付けで対応できるものにはなる。

案4:オブジェなどの置物
光が出たりモソモソと動くようなインテリアがいろいろあったりする。正直こういうものが無難ではあるとは思われる。ただ丁度いい大きさであったりギミッグであったりがなかなか見つからない。

今のところ現実的にはそれなりに複雑な反射が期待できそうでありつつも芸術性のあるオブジェ(中低域への影響を期待して大きめのものにする。大きければ距離があっても鑑賞できるメリットもある)を一次反射面に設置して、ライティングを複雑にしたりバリエーションをつけたりして飽きにくくさせるのが現実的かなあと考えている。
スピーカーの後ろにある正面の壁の壁面処理であるが、スピーカーからの音は無指向性スピーカーで無い限りは高域ほど指向性があるため、後ろに飛んでくる音は低域が多く含まれ高域は少なめである。そのため正面壁からの一次反射音は前述の周波数特性を有している。
そしてスピーカーより内側から到来する初期反射音は聴感上の明瞭さを損ないやすいと言われている。
そのため正面壁の一次反射面は拡散や吸音などを用いつつ、ターゲットを中域やできれば低域などにフォーカスを当てて対応するのが望ましいと考えられる。
中低域まで十分に影響を与えられるような音響調整材はそれなりのサイズになる。正面壁はリスニングルームの顔なので、巨大な拡散体が正面壁に設置されたリスニング専用ルームはSNS映えするので、マウント合戦するときも自分のシステムの強さを誇示することに大いに役立つことだろう。
という音響学的?な理屈の話はそれで済むことなのだが、それで話が終わらない難点があるのが正面壁と思い知らされている。今も決定版となる解決案が定まっていない。定めていくための論点整理のための記述が今回の記事になる。

まず何より視覚面での問題が一番大きい。一定以上の真剣さを伴うリスニングの場合、正面壁は好き嫌い関係なく視界に入り続けなければならない景色になる。
音楽鑑賞は聴覚上の体験を目的とした行為とは言え、視覚的に良いとは言えない正面壁とずっと相対していたのでは、オーディオシステムがどんなに素晴らしいものだったとしても至上のリスニング体験だと言えないのではないか?自分はそうと考えている。
リスニングの鑑賞にしても壁の視覚的効果にしても心理的効果を期待するものである。視覚から心理的に望ましくない効果を受けている中では聴覚上の心理的効果の足を引っ張ってしまうことは避けられない。
いくら真剣なリスニングの際には目を閉じていることが多いとは言っても再生中全く目を開けないで鑑賞することはほとんどないので正面壁の視覚的効果から目を背ける訳にはいかない。

良好な視覚的効果を狙うというのもそうそう簡単ではない。音楽再生中に長い時間を正面壁を見続ける訳なので見飽きないというのはほぼ不可能に近い。音楽鑑賞と合わないような視覚効果を用いることも望ましいものではない。
そのため以前の格子を多用した部屋の設計では正面に窓を取り入れて庭の季節の移ろいを眺めたり、飾り棚に置いた展示物を眺めて楽しめるようにしたら良いのではないかと考えた。
正面に鑑賞用の窓を置くのは現在でもそれが良いとは考えている。やはり外の景色というのは何かしら変化があるものであるからだ。変化があるものは長期的に考えても飽きづらさはあるはずだ。
ただ飾り棚はちょっとどうなのかなと思えている。本当に長い時間みていられるようなオブジェや骨董品や美術品などの鑑賞物を自分は持っている訳ではないし、自分がそういうものに飽きずに眺められるほど好きな訳でもない。それにリスニングポジションからでは飾り棚は遠すぎるのでじっくり鑑賞できる距離ではない。飾り棚はあっても良いけれども、それで十分と考えて良いのか疑問になってきている。

そもそも音楽鑑賞以外で同じ壁の景色を見続けるという機会があまりないので参考になるアイディアが少ない。宗教家の修行においては神仏像や絵などと相対して長い時間を過ごすのだろうが、音楽鑑賞趣味は修行ではない。少なくとも自分はその方向で探求するつもりはない。だから視界に同じ壁の景色があるという苦痛は、音楽鑑賞において乗り越えなければならないという解答を是としない。
音楽鑑賞での視覚的効果という意味では、音像のイメージ作りとして演奏者を題材とした写真や絵画や立体作品などを置いてイメージを膨らませるというのもあるかもしれない。ただ様々な音源を鑑賞する中でそれがどこまで役に立つかというとあまり期待ができない。それに絵画や写真を扱う場合、平面を作ることになるので音響調整の支障になってしまう。
窓以外に良い案がないから窓を大きくするかというとそれはそれで音響調整の支障になってしまうのであまりやるべきではないと思う。そもそも自分の案では真剣なリスニングの際には内扉で窓を隠して音響調整するという案になっているので、真剣なリスニングの際には窓からの景色に頼ることができない。
変わり続ける情報で音楽鑑賞に関連したものとして、リスニングポジションでの音圧レベルや周波数特性のモニタリングなどを映すのも1つの案として考えられるが、それが常に視界に入ってくるのが良いのかもやや疑問ではある。モニタを置いたらプロジェクションしたりするにも電気的にも動作音という意味でもノイズの原因にはなりえる。
では何が良いのだろうか。難しいというかそもそも自分の提示した要件を満たすものがないのかもしれない。ただ探求すべき課題であることをしっかり認識できる機会になった。
側壁に空気抵抗をかけるような壁面デザインがよいのではないかという案を現実的に落とし込んでいく作業をする。
リスニングルームは他のインテリアデザインと異なり、基本的にはリスニングポジションからの視点での見た目が整然としていれば問題なく、逆の視点からは雑然としていたとしても問題ない。それを利用してみる。
斜め45°のパネルを並べていけばパネルの間の部分はリスニングポジションからは見えない。
パネルの間に音響調整のための拡散材や吸音材などを設置したとしても見えないことになる。
下のシミュレーションではリスニングポジションからの視点では斜めのパネルが並んでいるだけに見えるが、

スピーカー側からの視点ではパネルの隙間に20cm×20cmのマネキンが入っているのが分かる。マネキンの部分は音響調整材を設置すれば見た目の悪い音響調整材を使っても見た目には目立たないが影響は期待できる。


ただこの45°のパネルというのは決め打ちで仕込むほどの自信はないし、若干角度を調整できる方が音響調整効果が期待できるし、別のコンセプトへの変更もできる場合もある。

パネルを回転できるようにしてバーチカルブラインドを回転させて間仕切りにできるというアイディアがpinterestにあった。


https://pin.it/2ZTgnxj


この機構を取り入れてみる。
45°、幅45cmの回転式パネルを並べてみる。斜めが含まれるので寸法計算が煩雑なのである程度やってみると9枚程度必要そうだ。

この設計だと回転中心は壁から159mm離すことになるが、ちゃんと360°回転できない設計もどうかと思えてくる。
壁に隙間つくって360°回転できるようにするとどうなるか。

パネルの間に音響調整材を入れるから隙間があっても問題ないんじゃないのかなあと思うところではある。
パネルが回転するということはパネルの間の音響調整材の設置は固定式の棚を使うことはほぼ不可能である。可動式の棚を使うことになるのではないか。つまり音響調整材の設置は建具で対応するのではなく搬入や搬出の自在な家具での対応ということになる。
新たに仮想リスニングルームの設計を一からやりなおそうという件で、
反射をなるべく天井を経由した間接音が多くなるのでは良いのではないかと考えた。
では壁面を上向きに斜めにすれば良いのではないかと思ったりもするがそう単純でもないような気がする。

耳よりも下方のエリアの壁面を上向きにするとレンズのような効果を発揮して、本来一度の反射では耳に届かないような音も耳に到達してしまうケースが考えられる。
垂直的な断面図で表すと以下のようになる。

無処理の場合の断面図は以下のようになる。角度が急ではないのであまり音波を上に持ち上げる効果が発揮できていないように思える。


では、耳よりも上では上向き斜め、耳よりも下では下向き斜めにすれば良いのではないかということになる。

以下はpinterestの参考画像。


この画像の場合はあまり問題にならないのだが、耳よりも上では上向き斜め、耳よりも下では下向き斜めというのを完遂してもどうなのかなという疑問は生じてくる。
何故かというと、耳よりも下のエリアを下向き斜めに傾斜させて得られる事はなんだろうか?それは床方向に反射させる割合が多くなるということである。
耳に届く間接音のうち、側方からの反射音が減って床からの反射音が多くなることがあまり良好な結果につながるとは考えづらく、床からの反射を増やすことを支持するような言説を知らない。
側壁から反射してリスニングポジションに入射する音をあえて、側壁→床→リスニングポジションにするメリットとして到達するまでのタイムラグが増えるのでそれを期待してというのもあるのかもしれないが、床を経由したところで到来時間の延長はあまり期待できない、少なくとも天井経由したものよりずっと延長時間は少ない。
そもそも、早期反射音に関しては耳よりも低い位置の反射音は傾斜させるにしろさせないにしろ、スピーカーが耳の高さに設置されていることを考えれば下方向のベクトルが入っているので遅かれ早かれ床に反射する。
以上から耳から下の位置の反射面は上方向に傾斜させることも下方向に傾斜させる意味もあまりないように感じられる。
では拡散させるかということにもなるが、垂直方向の拡散はあまり意味がない気もする。床に反射するか、早期に耳に入ってこなくてもいいはずの音が入ってきてしまう原因になりえるからである。水平方向の拡散もしくは二次元的な拡散、吸音などが適切であると考えられる。

耳の高さ周囲は上方向に傾斜させるのが良いとして、高所はどうするべきかというと低い位置の話と同じ理屈が通るように、傾斜させようがさせまいが、スピーカーが耳の高さあたりに設置されているのであれば、高所の初期反射面に到達するような音波は上方向のベクトルを持っているので遅かれ早かれ天井に反射する。なのでそのあたりも傾斜する必要性があまりないように感じられる。

https://av.watch.impress.co.jp/docs/series/dal/1464767.html
“ハイレゾストリーミング再生”を支える「ITF-NET AUDIO」「Taktina」って何?

上記の記事を読んで、ようやくストリーミングのハイファイも整ってきたなという思いだ。
日本国内でのストリーミングはまずサービスの選択肢が少なかった。TidalやQobuzなどが国内提供されず、mora qualitasは曲数が微妙。Spotifyはカジュアルすぎる。
そこにamazon musicやApple musicがハイレゾ参入でかなり風向きが変わると思われたが、操作アプリが限定されていたり不備があったり、勝手に設定が変えられたりするなどあまりオーディオマニアには十分な音質や使い勝手を確保できないものという評価が主ではあった。
自分も視聴用で新しい音楽を探すものと割り切って扱っていた。

ただ上記の記事を見るとTaktinaはピュアオーディオで音楽配信の利用が十分にできるような仕様に尽力しているようで期待が持てた。
また出力中の楽曲のbitや周波数を表示するなどして内部で勝手に設定を変えられているというような何されているのか分からないという不安を感じさせない透明性を確保しようとしている点が好感が持てた。

透明性がない技術はあまり自分のコンポーネントに入れたいとは思わない。企業独自の技術だけどその詳細は教えない、でも音は良いよみたいなのは正直好きではない。
出音の差別化のために何をやっているのか信用ならないからだ。デジタル部分だと理屈上は大きく違いが出ないはずなのに、技術情報が公開された一般的な技術を用いて出力した音と比べてブラックボックスの独自技術で出力した音が大きく違ったとしたら、独自技術がすばらしいというより視聴くらいの短期間では良くなったように思わせる加工をしているんじゃないかと疑いたくなってしまう。

ただやはり配信は通信の信頼感などを考慮すると不利は否めない。繰り返し高音質再生して楽しみたいと思うようなお気に入りの楽曲はやはり購入してローカルに保存して再生するのが基本になるだろう。そう考えると配信は探索用、試聴用寄りの利用がメインにならざるを得ず、結局そこまで利用法が変わらないような気もしてしまう。
ただハイレゾ音源の質が良いかどうかなどの判断ができるという意味ではやはりそれなりにしっかり配信のハイレゾを出力できるTaktinaは自分としても有用と思えるものであると考えられる。