自分の中では最もアレンジしたかった部分の中域であるが
まずは低域調整の際に設定したリスニングポジションから鏡で確認し初期反射面を確認する。
壁に付けるとよく落ちるのでプラスチック製の割れない鏡使うこと推奨。



800Diamondは350Hzでクロスオーバーしていて、この部屋は300Hz以上を鏡面反射でシミュレーションするので基本的にはミッドレンジを鏡像法で対応すればいいだろう。

初期反射音は正面、スピーカー側側面、反対側側面、背面、床、天井があるが、
確認した結果正面、反対側側面、天井は石井式の吸音部にトラップされるようだ。
天井は確認出来ていないし微妙なところではあるがあまり弄れる場所でも無い。
吸音されている初期反射面を改装して拡散に使うかどうかは今後の結果で判断したい。
背面は吸音材を仕込んだスクリーンで反射する。
そしてスピーカー側側面は粗く数段程度の凹凸があり少しだけ拡散されているがほぼ反射である。
つまり
現時点での反射面:スピーカー側側面、床のはずである。

とりあえず現状でインパルス応答計測。
今回は比較実験のため右のみ駆動のモノラル状態での測定



最小メモリ(1ms→34cmくらい)のディレイで10dBくらいしか減衰してない初期反射が入り、良く見ると次のメモリ(2ms→68cmくらい)に2発目が入っていて、
10ms→3.4m、28ms→9.4m、44ms→14mあたりにすこし減衰量20dB未満の初期反射が計3発入っている。
このあたりが片チャンネル辺りの現状ある初期反射音なのかもしれない。

このまえ作ったPRD風のランダム拡散体を床の反射面に置いてみる(前の計測でも室内に存在していた。床初期反射部に移動させただけ)。こんな20cm四方のものものを置いて音が変わるのか。。。?



なんてことだ。。。これは。。。激変じゃないか。。。。!(オーディオショップレビュー風)
1〜2msの初期反射音は残っていますが、減衰量-20dB前後の初期反射音が何本か新たに出ています。おそらく拡散体で何分割かされた音の数個がダイレクト、または数回反射して50ms以内にマイクに拾われたのでしょう。

じゃあ側面を吸音するとどうなるのか。拡散体を側面に仮固定するのは厳しいので毛布で実験


うーん期待したよりも変わった感ないですね。
20dB以下の小さい初期反射が少しまるまった感じはしますが。
もともとラフな拡散面を吸音しただけなので仕方ないかもですね。

それでは床に拡散体、側壁に布を付けるとどうなるのか





で比較用に一次反射面に何も置いていないもの


50ms以内の数十の初期反射音の数個が残響音(-30dB)まで減衰してくれてるみたいですね。
それでいて2ms以内の初期反射音はあまり減衰していません。

方針としては2ms以内の音は直接音の押し出し感として使いたい。
具体的には床、スピーカー側の側壁、正面壁でないと2ms以内に届かない。
壁の作る芯のある音は好きなので。でも濁りは取りたい。
他の初期反射は吸音させても拡散させるかは手間次第だ。

実測ではなくディレイでの理論値ではあるが、
2msで68cm分のディレイが生まれる。
初期反射音と直接音が干渉してコムフィルタ現象が起こり、ディップとピークを作る。
一番のディップの周波数は252Hzである。
そしてディップは252、252×3、252×5・・・と生じていく
逆にピークは252×2、252×4、252×6と生じる。

では壁に2cm厚みをつけて複雑な計算は省略するが3cm程度ディレイが早くなればどうなるか
65cmのディレイだとディップは264、264×3、264×5・・・と生じていく
逆にピークは264×2、264×4、264×6と生じる。
2cm壁を厚くするだけで周波数が6%も変わる。

そんな感じで少なくともディレイが2ms以内の非常にスピーディーな初期反射音を活用するなら、一番長い物でも数センチ以内でいいので無数のパターンの浅い方向感の無い凹凸(方向性をつけると反射角度が変わるので初期反射音ではなくなる。)を作ればコムフィルタ現象によるディップを分散させて軽減できるのではないだろうか。薄くて粗めのモザイク型PRDでもいいが、異なる大きさの半球を並べてもいいかもしれない。
これがソナのいうところの非相関された有用な初期反射音なのかもしれない。

ただそれでは不十分なのが一番周波数の小さく深い一次ディップである。
この前低域の調整後のf特


250〜400Hzにいくつかあるディップはおそらく床と側壁からの初期反射音の干渉によるコムフィルタ現象の一次ディップである。
それでもって床の1時半斜面に拡散体、側面に吸音のクッションを置いた後のf特はこれ



後者の測定の条件がずれてしまったかもしれないのだが
明らかにコムフィルタ現象の一次ディップは拡散体ではわずかな軽減効果しかないのである。
もともと一次ディップ250〜400Hzだが拡散体は今回のデザインでは1000Hzくらいまでの拡散効果しかないので、まったく手に負えていない(そもそも250~400Hzはおおむねウーファーから出ている音なので今回拡散体を設置した場所はその帯域の反射面ではない。バスレフからは出てこないだろうけれども)
このあたりにはもっと大きくて粗い拡散か位相を変えるものを用意する必要があるだろう。

実測による直接音と一次反射音との距離差
天井のディレイ       2.9m(吸音?)
 ディップ 59Hz 178Hz 297Hz・・・ ピーク119dB 237Hz 356Hz・・・
後壁のディレイ       4.0m(吸音?)
 ディップ Hz Hz Hz・・・ ピークdB Hz Hz・・・
正面壁のディレイ      1.8m(吸音)
スピーカー側側壁のディレイ 1.1m
反対方向の側壁のディレイ  未測定(吸音)
床のディレイ        0.75m

では測定結果の初期反射音でなるべく削除した方がいいものがどこ由来であるのか分析してみる。


なにより潰したいこの初期反射音はドットを読むと0.08〜0.09msの遅延であることがわかる。
音の進行距離で言うと2.7~3.0m。
候補として天井と後壁を疑っていましたがこれは天井からの一次反射音ではないのかなと思っている。
後壁は本当に吸音されていたのだ。(それでも-20dB前後なので厳密には吸音が十分とは言えないがスクリーン部なのでこれ以上の介入は困難)
天井の一次反射音はなんとかしたいところだが、3.5mの天井の一次反射面に拡散体を設置するのは現実的じゃあ無い。
難易度と落下の事故リスクを考慮すると吸音一択だろう。
天井からの初期反射音がなければ上からの圧迫感の減少にもなるので無理に拡散させて活かすメリットもない。

ということで今から4年前に戻れれば石井式の天井の吸音部の位置を変えたいところだがそうもいかないので、
新たに吸音材をピンポイントで設置するか、スピーカーを動かして一次反射面が吸音部に入るようにするか、が現実的な解決策になる。
まあスピーカーを横方向に壁に寄せるのが手軽なのかもしれない。
側壁のコムフィルタ現象の一次ディップ周波数も上の方に行くから対応しやすくなるはず。

では28ms→9.4m遅れてくる初期反射音の正体はというと。
一次反射10mも要する面は自分の部屋にはなさそうなので二次反射三次反射になるがなかなか大変だ。
低域を測定しつつ調整。まずは縦5/8の位置で測定。

相変わらず定在波によると思われる39Hz85Hzのディップが確認される。
そこからなくなる場所はないかと前後に動かしてみると39Hzのディップが浅くなるところは85Hzのディップがゆるくなり、39Hzのディップが深くなるところは85Hzのディップが浅くなるようだった。



横方向の一次定在波と思っていたら少しつじつまが合わないようで、横方向の壁際にマイクを置いてもディップがピークになることはなく目立たなくはなるもののディップが残ったままになっていた。
ドアの影響もあるのかもしれないとも思いドアを開けてみて計測してみる



そうすると85Hzのディップは相当に小さくなるが39Hzのディップはその周波数をさらに低くなりながらより深いディップを形成していた。33Hzの緩いピークも無くなっている。
理屈は詳細には説明できないが、ドア付近が少し凹んでいるので85Hzのディップはドアの閉めたときの平面が作っているものであることは間違いなさそうだ。
少し凹んだドアは85Hzのディップという新しい問題を生み出してしまっているが、同時に39Hzの定在波(おそらく一番対策のしづらい横方向の一次の定在波)を成立しづらくさせているのではないか。
防音ドアから定在波抜けている疑惑は自分の中ではあったがそうではないようだ。

どちらかのディップを消しにかかるとどちらかが顕在化していくので難しかったが、やはり39Hzよりは85Hzを優先しつつ39Hzのディップも大きくならないようにと計測すると
丁度一番バランスがいいポイントがドア枠の境界線上の真横であった。上記の仮説の至った原因はそれが理由である。



測定は小さめの音で行っていたが最後にボリュームアップ
(縦軸のdBはキャリブレーションの問題によるもの。直し方が分からないので放置しているが、周波数に関わらずおそらく30dBくらい多目に表記されてる。)


低域はあまり変わらないが200Hz以上にあったディップが減っていることからノイズと思われていた情報の影響が減っている。

f特の大波の振幅が20dB程度、小波が10dB程度で抑えられるようになった。
高次の定在波は簡易シミュレーションと現実との乖離が激しく、左右の内耳の位置が完全に正中というわけでもないのでモノマイク自体がそもそも現実と乖離している。節と腹の間隔が数十センチだとその影響も無視できない。
2次元3次元の定在波の影響も考えないといけない。そのレベルはもはや無理

200Hzまでで自分が調整できるのはここまでか。まだまだ大きいゆらぎだがこの部屋と予算と自分の実力ではここまでだろう。
次は中域の調整。
少しだけ初期反射面を弄った時のf特
定在波は分かっているようで分かっていなかったので少しお勉強して自分の部屋でシミュレーションしてみる。

音速は344m/sと仮定
リスニングポジションは縦5/8、横中央、高さは26%の位置とした場合
一次元の定在波の分析(二次元、三次元の分析は自分には無理)
縦5.2m 定在波 33Hz(25%腹) 66Hz(50%腹) 98Hz(75%腹) 131Hz(節) 164Hz
横4.2  定在波  40Hz(節)    81Hz(腹)      121(腹)    162(節)
高さ3.5 定在波   49Hz(50%腹)       98Hz(節)    147(50%くらい腹) 
容積76.44m^3 〜300Hzが低域扱い

実際の測定結果に当てはめてみると
縦の定在波を青 横の定在波を黒 高さの定在波をピンクで表すと


割とシミュレーションと実測が同じような感じになっている。
定在波の問題が(当然ではあるが)改善し切れていないことよりも、ある程度シミュレーションが通用したのと、測定結果が説明できたことが嬉しい。
測定マイクも高級品ではないし、測定ソフトも安物だし、全面コンクリート内壁という理想環境なわけではないので、測定しても結果の分析ができるか、する意味はあるのか不安が残っていたからである。

85Hzくらいのところのディップはこれでは説明できないが、おそらく2次元か3次元の定在波だろう。また位置を変えて測定しなおせば変化はあるはず。
どうしようもないのが横方向の定在波である。ステレオ再生の室内音響的に考えれば左右どちらかに偏位させることはあり得ないし、中央にリスニングポジションを取れば確実に横方向の定在波の節や腹が存在する。
特に1次定在波の40Hzのディップは波長的にもディップであるということからも難しく、アマチュアでかつ大元から作り直すわけでもない限り解決の糸口が見当たらない。
ただ、場所として左右が中央であることを維持しつつ、40Hzのディップが比較的浅い傾向が見つかった(実はこの結果がマシな位置の結果なのだが、)
丁度真横が防音扉の部分をリスニングポジションにすると40Hzのディップが解消される。
防音扉は厚みがないぶん壁よりも少し凹ませてあるのだが、それにより定在波が成立しにくくなってた面もあるのだろう。
だがそれよりもたかだか普及品の防音扉では40Hzを防ぎ切れていなくて、低域の音漏れを防ぎ切れていないから音抜けをすることで定在波が成立しにくくなっている面があると思われる。
後でこれは検証してみようと思う。

とりあえず低域でリスニングポジションを決めてしまおうと思う。
中域のスピーカーからリスニングポジションへの一次反射のコントロールは低域よりは物量がいらないので、
後で反射板もしくは拡散板を入れることで対応できると思うので、低域で決めてしまう予定。

変えられるようで少ししか変えられない高さのポジションであるが、耳の高さを94cm→104cmに上げると30%の位置になるので49Hzのピーク緩和 98Hzのディップ緩和に繋がるかもしれない。
10cmくらいなら椅子の高さ調整でできるかもしれない(そもそも背筋伸ばして聴けば確実にできるのだが)
これも後で検証する予定。
自分はせいぜい3.5mだからまだマシなのものの、オーディオルームは天井が高い方が音が良いと言われ、それを支持する根拠も多数あるが、定在波に関しては必ずしもそうとは言い切れないように思われる。天井が高いほどリスニングポジションが相対的に床に近くなり、定在波の腹に近くなってしまいがちだからである。
どうやら拡散体は適当ではなく狙って作るもののようだ。

http://actools.tunetown.de/prd/
 上記サイトで拡散体のシミュレーションが可能で、散乱させる各種数値を入力すると、こう作ると入力した帯域は散乱するよという拡散体の設計図を自動生成してくれる。
 結構真面目にみんな室内音響を考えているんだなあと思いつつ、なかなかオーディオの世界から、この世界にディープに入る通路がなかなか見つからないのがなんとも言い難い。
 簡単に手に入るのは何を買って繋げるとどうなるというのばかりだから。

シミュレーションしてみると結構奥行きを必要であることに気付く。
人の定位を感じやすい周波数帯域は100Hz~5000Hz(諸説あり)
その中でもより定位に敏感なのは4000Hzと高音の方。
一般的な声の帯域は男性で500Hz、女性で1000Hz
歌声なども含めれば100Hz〜2000Hz

これらを勘案すると500Hzくらいは拡散できないとね、と思うと
拡散体の奥行きがすぐ30cmくらい行ってしまう。
しかも30cmも確保してもようやく拡散帯域限界に辛うじて入るという状態だ。
一番出っ張ってるところでしか拡散効果が十分発揮できないので、
効果抜群とまでは期待しづらい。


↑をPrimitive Root Diffuser(PRD)と呼称するようだが、設計の計算の仕方によるものであり、別の形態のものもPRDと呼ぶようだ。
区別する名称が分からないのでここではモザイク型PRDと呼ぶ。

このタイプだと小さな直方体の単位を小さくすればピンポイントの部分で幅広い拡散を細かくできるのだが、CAMを使って削るとかしない限りはいかんせん手間が際限なくにかかってしまう。しっかり中低域まで拡散しようとすると先述したようにかなり奥行きも必要になる。

ではQRD Diffuserのような拡散体(今回はバーコード型PRDと呼称する)はどうか。
引用:https://www.takenaka.co.jp/rd/research/gihou_2014/paper3.pdf
九州大学椎木講堂の音響設計 竹中技術研究報告 No.70 2014


で公開されているディフューザーの設計でも厚みは26cmと30cm弱必要になる。
QRDの計算サイト(しっかり探せばもう少しいいのがあるかもしれない。)でも適当に入力しても20cm以上は必要そうだ。
QRD Diffuserも奥行き23cmタイプのものがある。
結局厚みが必要なことには違いない。
それにバーコード型だと網羅したい周波数ぶんの溝の幅の合計が数十cm〜1m程度ある(バーコードを細かく出来るのかは不明)。リスナー近くの一次反射音部分にピンポイントに置くような使い方をしても、一次反射面は溝3つ程度と考えられるので均等な拡散が起こっていると期待しづらい。
講堂やスタジオなど大きめの室内空間の一次反射や二次反射以降の拡散には有用だが、狭い部屋の一次反射音の拡散にはベストな選択肢と考えるには疑問が残る。

それならば日東紡のシルヴァンアンクタイプはどうか。個人サイトのためリンクは伏せるが、直径14cmくらいあれば500Hzが十分拡散できるようだ。
14cmの円柱を入手できるかどうかの問題はあるが、比較的奥行きや圧迫感や異物感を減らすには有利かもしれない。
こう考えるとスピーカーを2種類使いこなす人もいるが、案外音響に悪くない選択なのかもしれない。キャビネットが局面のものであれば、20~30cmくらいの木の円柱の類似物と扱えるので、正面の一次反射面に使っていない方のスピーカーを置けば一次反射音を拡散できる。

結局の所、中域を網羅的に拡散させようとすると、どうしても大きな拡散体が必要なようだ。
今どういうチョイスをするかは決めていないが、圧迫感などを考慮して設計する必要がある。

既製品だとそこまで大きいモノはコストがかかるし、客も嫌がるから薄くて軽いモノになりがちだ。そういうものでも中低域の効果が無いことはないし、中高域の方が敏感なので変化を求める意味でのコスパは良い。
だが、ただでさえ拡散されやすい高域ばかりがさらに拡散され互いが干渉してしまうため、高域の残響時間が短くなってしまう可能性がある。
拡散パネルを無計画に置きすぎると普通の音の部屋になるといわれ易いのはそのあたりにあるのではないだろうか。
残響成分は低域が多目だと良いようだが、中域も高域も同じくらいある残響が良いと言われている。
引用:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/47/10/47_KJ00001456312/_pdf


改めて思うのは大きい部屋は有利ということである。1次反射面が遠ければ拡散パネルが厚くても気にならないし、ピンポイントで拡散する必要性もあまりなくなる。
そもそも大きな部屋では残響時間が長くなり易いので小さい部屋よりも拡散の必要性が比較的少ない。小さい部屋だと大きな拡散体を使うべきなのかも知れないが、そもそも小さな部屋にそんなものを入れ込むデメリットも考えないといけない。いろいろと悩ましいが、大きい部屋なら苦労しなくてよかった苦労ばかりだ。

やはり大きくなっても中域を網羅的に拡散でき、なおかつピンポイントでの網羅的な拡散もできるように設計していきたいとは思っている。
 先日某オーディオショップで試聴会に行ったのですが、(レポート自体は作成したのですが、かなり主観性の強いものになってしまい機種名で検索すると引っかかってくる悪影響の方が強いので今のところ非公開)
 拡散パネルで一次反射面を覆いかぶせた音場は前はあまり好みでは無いかなと思っていたのですが、今聴いて見ると決して悪くないことに気付いた。
同時に自室では一次反射面を活かすという手法を実践しようと思ったが、その手法ではない方が良いのかもしれないことに気付いた。


 先日のインパルス応答を測定した際も1次反射面の壁面は石井式の吸音部または調音パネルまたは吸音材を背面に仕込んだスクリーンが設置されているのにも関わらず初期反射の量はそれなりに豊富なことが示唆される測定結果になった。
そして残響時間はあまり長くない結果になっていた。

 これが示唆するのは室内空間として一般論で扱われるよりも自室が小さいので、スタジオの理論をそのまま利用すべきでないということである。
室内空間が小さいほど初期反射音が多くなるし、反射面を多く置いても残響時間は短めになるのは当然ではある。
 だから一次反射音はそのまま残す必要はないのかもしれない。計算しきれない2次反射3次反射があたりが残っていれば音の芯を作る初期反射音として十分機能してくれるのかもしれない。
一次反射音と比べて二次三次反射音は反射回数が多いだけに、到達時間が遅く、位相や波形も直接音とは非相似であることが期待でき、コムフィルタ現象が起こりにくいことが予想される。
 狭い部屋で初期反射音を活かす室内音響作りをする場合、一次反射音を活かすよりも二次三次反射音を活かすくらいが良い結果につながるのかもしれない。

 ただ、一次反射音を吸音すればいいわけでもないようだ。現状残響時間が短めなので一次反射音を吸音させると部屋の吸音面積が増えて今も短い残響時間がさらに短くなってしまう。

 そこで棚上げしていた疑問が俎上に上がるのが全帯域吸音と全帯域遮音というスタンスをどこまで貫くのか、ということである。石井式の中でなぜ全吸音と全遮音を組み合わせるかというと帯域を選択的に吸音した場合その部分からの反射音は音が悪いから(高域の選択的な吸音は薄いグラスファイバー、中域は有孔ボード、低域はヘルムホルツ吸音器)というのが根拠になっている。
 残響時間を延ばしたい場合、全吸音部分の上に中高域を拡散しつつ低域をスルーするような拡散パネルを置いても全反射全吸音理論の根拠的には問題ないような気はする。
低域をスルーさせるというのは別に特段の工夫が必要なものではない。低域はもともと透過性が良いので拡散パネルは分厚く頑丈に作るのではなく、多少スカスカさせればそれで低域はイヤでも透過してくれる。透過した上で壁内部のグラスウール層で吸音されればいい。

 というわけでやっぱり一次反射を拡散してみようという方針にした。ただ問題は

これくらいの粗さの拡散体では音は大して拡散せず、おおむね反射してしまっているとスタジオ設計者は認識しているということである。自室は初期反射音が多いので拡散体を荒くしてしまうと結局は初期反射面が十分拡散されないことになる。


しっかり拡散しようとするなかこれくらいの細かさが必要なのかもしれない。

 結局考えている拡散体が存在しないので作るしか無いが、細かすぎるのをDIYするのは無理がある。ひとまず18mm×18mmのラワン材をランダムに切って拡散体を試作してみる。
ランダム性(完全にランダムであるよりも、狙って隣接する部分の高さに差をつける)をつけて材を切ってそれをひたすら接着する。
 正直面倒臭い。賽の河原で石を積むようだ。前世のどんな悪行に対する報いなのだろうかと思えるほどだ。
まだ20cm四方すらできていないがひとまず試作品。
仕上がりが荒いのは面倒くさいのと、粗い方が拡散するのでまあいいやという理由。
これ、ちゃんと壁になるくらい大きく作るのか。。。。?

ソナ社のパーソナルスタジオデザインに関する連載が企業サイトから閲覧することができるのだが、他でも扱っている情報も比較的分かり易くまとめられている。自分には良い機会なのでスタジオ音響設計者達がどんなことを考えて室内を作っているのかお勉強。

その中の備忘録として気になったところをかいつまむ。
vol.1のTips
室内音響のシミュレーションに関しては波長によって挙動が異なるのでシミュレーションの仕方が異なる。
低域は固有モード周波数の解析
中域は高校物理のような鏡面反射の解析
高域は拡散しやすいので統計音響の解析
そしてオーディオルームのようにスタジオよりも小さい部屋の場合は
中域も低域のような処理、高域も中域のような処理が必要になってくるようだ。

vol.2のTips
 低域の固有モード周波数に関する解説。他でも解説されているものだが比較的分かり易く記載されている。(それでも理解仕切れていない部分も多々ある)
石井式でも言われている部屋の寸法比の重要性がうたわれている。
そして広い方がより有利であると言われている。
理由は狭かったり寸法が適切でないと「一部の低音が出ない」からだという。
小さい部屋では低音は抑える以前にちゃんと部屋に存在させることに一苦労するようだ。
そして理論上は存在できないはずの低音も実際はそこそこ出ているのは、室内に吸音する要素が存在するため、そして壁や天井が低音は反射だけでなく透過もするため、理論値通りにいかないおかげだという。
 低音を増やすために吸音が有効という考えは目からウロコであった。てっきり吸音とは過剰な音を減らすためだけの物だと思っていた。
だから吸音は拡散の下位互換的に考えてしまいがちだったが、決してそうではなく低音の為には吸音は必要だということなのだ。
逆に言えば低音のために吸音は必要だが、低域は定位を感じにくいため、定位と関係ない部分で吸音して定位に関連するところは拡散すればいいとも思える。
上記の理由から部屋の寸法に問題があったとしても、苦手な帯域の低音が出てはいるものの、他の周波数に比べると出が悪い。
それが測定上のディップとして現れるのだという。
自分の部屋も多少場所をずらしても、何度測定しても40Hzあたりに軽いディップが存在する。
軽めで済んでいるのは助かることだが、小手先での対応が難しいものなので、分かってはいても処置は後回しになりそうだ。


1次元、2次元、3次元のモードを考慮したリスニングポイントとスピーカーの設置位置についても比較的分かり易く解説されている。
が、軽く読んだだけではなかなかモノにするのは厳しそうだ。
ひとまず部屋の中央は定在波の節や腹の場所になりやすく、リスニングポイントとして最悪であるとのこと。
5/8くらいの後方寄りが丁度いい感じとのこと。
スピーカーの位置を計算して調整するともしかしたら40Hzのディップを解消できるかもしれない。これ以上は難しいので後日理解と測定と計算と実践をすることを検討。

vol.3のTips
中域の処理方法の解説が中心
直接音と相似した初期反射音が僅かな時間差で耳に届くと、直接音と干渉し、音色にカラーレーションが生じることをコムフィルタ現象という。
コムフィルタ現象は日常的にも耳で受容する現象なので極端に不快な音では無いが、音の濁りに繋がるのでミキシングの現場では回避されるべきものである。
床からの反射によるコムフィルタ現象は170Hz程度の低域で生じやすいらしい。
ゆえにその影響を避けるため、ウーファーはなるべく低い位置にあった方がいいようだ。
3wayのスピーカーのウーファーが必ず一番下にある理由、800diamondのバスレフが下を向いている理由などこの辺りを考慮してなのかもしれない。
単純に重いウーファーは下にあると重心が安定するからだと思っていたら、それだけではないようだ。
そしてサブウーファーはやっぱり床にあった方が良いようだ。重いので上に上げる人もいないだろうが。

そして中高域は床よりも壁との鏡面反射を考慮すべきものという。
 壁の一次反射するポイントは正面、背面、スピーカー側の側面、反対の側面にある。
反射音の到達する早さは早い順にスピーカー側の側面、反対の側面、正面、背面の順だそうだ。到達が早い=距離が短い=減衰が少ないので反射音の大きさもこの順かもしれない。
 鏡像法的に鏡像スピーカーがリスニングポジションを向いていない場合、指向性の強い高域は減衰しやすい。
なので鏡像スピーカーがリスニングポジションを向いている背面、反対の側面からの反射音は高域の減衰が少ない。逆に正面、スピーカー側の側面からの反射音は高域の減衰が大きい。
 そして問題なのは背面、反対の側面から幅広い反射音が返ってくるのだが、右から来る筈の音が左や後ろから聞こえてしまうことになり、それは回避すべき現象であることだ。
 そのため背面、反対の側面の一次反射ポイントは中高域を減衰させた方が良いということらしい。
低域の話では無く中高域の話なので拡散でも対応できるだろうが、拡散させるなら存在感を消さないといけない音なので、ラフな拡散よりもかなり細かく散乱させるディフューザーで対応した方がいいだろう。

自室の場合、
正面の一次反射面は石井式の吸音部

スピーカー側の側面の一次反射面は調音パネル
反対の側面は石井式の吸音部

背面は吸音スポンジを仕込んだスクリーン


計算はしていなかったが案外理には適っている。音響障害となる反対の側面と背面は吸音すべきものを吸っているので、弄らなくて良いだろう。
弄るなら有用な正面とスピーカー側の側面だが、そのまま反射させると先に述べたコムフィルタ現象で直接音のカラーリングが起きてしまい、直接音の明瞭度が下がってしまう。
ソナ独自の手法として、反射の際に反射率の高いディフーザーを使って直接音と干渉しない音に変えて反射してコムフィルタ現象を軽減している。
初期反射音があった方が迫力があり聴いていて楽しいので自分もこれに倣いたいとは思うが、個人的には目からウロコの事象として、今までは反射音は正しく反射をすれば正しい音に近付くと思っていた。
だが、コムフィルタ現象の原因となる壁に関しては正しく反射をしない方が最終的な音は正しい音に近付くということである。ビックリだ。この部位にはまったく他とは違う壁を作っていかねばなるまい。

積極的に音の波形を変える、つまり音色を変化させるにしても室内に響く音なので、不快な音にするわけにもいかない。
あえて音を歪めて結果的によく鳴る音というと響板を想起させる。
ピアノや弦楽器の弦の金属的な音をまろやかにする響板からの知恵も借りていきたい。
響板はスプルースがよく用いられているようである。
響板のスプルースは最高級だろうが、一般品はホワイトウッドと言う名で簡単に入手できる。
オークとは対極の柔らかさはあるので、叩くと軽い音だが心地良い音なので一次反射面に良いかもしれない。
粗いディフーザーになるように加工しないといけないが、ホワイトウッドなら加工も容易だし、何より安価でどこでも買えるので仕入れに困ることは無い。
そして上手く行かなくても金銭的なダメージが少ない。
ホワイトウッドで自作の↓みたいなものを作る構想を練ってみようと思っている。
結局のところ初期反射音ってどうすればいいんだろうというのを調べたりしていると、
正直オーディオ系界隈だけ調べてもどうして良いのかが分からない。
十人十色でこれが良くて他がダメだめと言ってしまって、結局自分はどうすれば良いのかを考察する手がかりに乏しいのだ。

他分野をということでまずはコンサートホールの音響関係で調べると、
初期反射音は方向感、定位を補強するなので積極的に利用するようだ。
表面に凹凸を付けずにそのまま押し出す。天井から音響板を付けて距離を短くしたり
側壁を押し出す感じにして初期反射効果を強調するといいと考えることがあるらしい。
大空間での初期反射音の扱いは分かったが、あくまで参考程度。
小規模のリスニングルームには使えない。

次に音楽スタジオ関係で調べてみると、自分が知りたかった知見がてんこ盛り。
良い悪いではなく、こうなってるからこうするとこうなるよ、という科学的な考察が蓄積されている。
オーディオ界隈で紹介されていた理論も非常に分かりやすく解説されてもいた。
スタジオ自体はリスニングルームより若干広いスペースを相手にしており、楽しく聴くより正確な音を聴くことが重視されるため、スタジオの真似をすれば良いわけではない。
だが、自分は室内の響かせ方をどうすべきかという手掛かりは、まさしくここにあったと思える。
そもそも15年もオーディオやっていて防音室まで作ったのに、なぜそっちの方面に首を突っ込まず、ろくに勉強しなかったのかと我ながら不勉強にもほどがあるが、遅いにしろこれからのためにいろいろな知見を収集することにしている。
あとで整理するためにTipsを以下に。

引用:https://www.japrs.or.jp/pdf/news_2009_No2.pdf
日本音楽スタジオ協会(以下JAPRS)の2009年の雑誌。NHKのスタジオを2部屋改修した際のレポートが掲載されている。5.1chのスタジオなのでまるまる使えるわけでは無いのだが。

1件はお馴染み日東紡の円状拡散体と吸音を組み合わせたスタジオ

ここでの知見
 広くスタジオで行われ、石井式でも使われている反射部と吸音部を組み合わせる方法だと、リスニングポイントが少し変わるだけで特性が大きく変化してしまう。
 反射と吸音の組み合わせだと一次反射によるコムフィルタ効果により直接音にカラーリングされてしまうが、拡散と吸音だとそれが起こらない。
 拡散と吸音なので、一次反射は少なく、残響はあるが短めという仕上がりになっているようだ。

2件目はソナという会社が作ったスタジオ

初期反射音を積極的に利用したスタジオということだ。まさに自分が参考にしたい情報が沢山詰まっていそうな感じだ。

ここでの知見
 初期反射音をコントロールルームで活用するのは未だに賛否両論がある(そっちの界隈でも定説はないようだ。という意味では家庭用オーディオでも好きに扱っても不正解はないということになる)。
 ただ世代の新しいスタジオは拡散で一次反射音をキャンセルしてしまう傾向が多いようだ。
 Reflection Free Zoneという概念があるらしく正面と側面の一次反射面をピンポイントに吸音し、後壁を拡散させることで初期反射をなくしてしまいつつ、残響は生じさせる考えのようだ。
 Nashville’s Blackbird Studio Cというスタジオは贅沢に四方八方を細かい拡散体で覆ってしまっている。一次反射音はキャンセルされ残響となり、無響室に控えめの残響が付与されたような音になっているそうだ。Dolby atmos 9.1.6chののリファレンスにもなっているらしい。


 つまるところ一次反射面を含めて拡散体を沢山置くような部屋というのは現代的モニターライクな部屋であり、そういう音が出せるということになる。
(自分の中でモニターライクな部屋=吸音の多い部屋だという不勉強な概念があったが新しく塗り変わった。)
 モニターライクな音に関して否定的な言い方をすれば、拡散体を沢山置きすぎると正しい音で鳴るが、神経質だったり、面白みが無い音になる可能性を秘めている。QRDや日東紡の様な高級調音オブジェはそういう方向のグッズであることは認識して使う必要がある。
 ただ、一次反射をそのまま出すとコムフィルタ効果によりカラレーションが付いてしまい、モニターには適さない音になる。
 ソナはこのスタジオを設計する際に一次反射を活用しつつカラレーションさせない手法として反射はするが反射の際に波形を変えてしまい、直接音と干渉しないようにしてコムフィルタ現象を生じさせにくくするという手法で解決させたようだ。
これは是非倣いたいメソッドである。
どうするかというと反射効果の強い拡散体を反射板として使うことで波形の相似性を解消させるとのことだ。


こんな拡散体売ってないし試験管状に木材を加工できないので作るのも難しいし真似できないじゃないかと途方にくれていたが、
理屈的には反射効果の強い拡散体であればいいので、全く同じ形で無くてもいいのかもしれない。
black birdのように細かい凸凹ではなく、大きさの粗い拡散パネルであれば反射効果の強い拡散体ということになり同じ効果が期待できるかも知れない。
このスタジオの音はモニターとして有用な特性を獲得しながらも一次反射音が残っているせいかガッツのある音、芯のある音だそうだ。自分の志向としてはそういう音を目指したいのかもしれない。

別の比較的新しい記事でソナでは同じ非相関一次反射を目的にして東映のatmos用のスタジオやカプコンのスタジオで平面に正方形の穴をランダムに開けたパネルを設置していたようだ。こっちの方が最新版なのだろうか。自作するならこっちの方が作りやすそうだ。




気になったので自分の部屋のインパルス応答を測定。今までも測定していたようなのだが、
理解できていなかったのでスルーしていた。
割と読み方が簡単だし測定結果があまりぶれないので再現性が高く、素人でも有用な測定法のようだ。


初期反射面が吸音部だったり調音パネルを置いたりクッションを置いたりと割と消音させたつもりなのだが、初期反射はいたって普通にありそうに見える。決して少なくはないようだ。
そして-60dbの残響時間はせいぜい300msくらい。短すぎて話にならないほどではないが、割とモニターに近いデッド気味の環境だった。
シアター面のスクリーンとその背面にある吸音材や部屋の中央にある足置きと自分の足(測定中は毛布で代用)などが追加の吸音作用を発揮して想定以上にデッドになっているのかもしれない。
もっとライブでもいいくらいなので吸音部を一部潰して非相関一次反射部などの機構を入れてもいいのかもしれない。

ソナのホームページに行ったところさらに興味深い記事もあったので後日Tipsを纏める予定。
 
https://www.phileweb.com/news/d-av/202001/09/49427.html

 映画の音源として定着しつつあるDolby atmosではあるが、新たに音楽用の規格Dolby Atmos Musicのサービスが始まったのだという。
 マルチチャンネルのオーディオとしてはDVD-audioやSACDのマルチチャンネルなどがあったが、オブジェクトオーディオとしての音源規格は初めてではないだろうか?

 だが正直なところあまり期待していない。
 なぜなら需要が少なすぎるからだ。オーディオやっている人はあまりサラウンドに手を出す人がいないし2台以上のスピーカーを置きたがらない。自分みたいに若干の妥協をすることでシアターと共用している人も一定数はいるが、ガチな人ほど共用はしていない印象はある。
 シアターをやっている人でもちゃんとしたatmosの再生環境はハードルが高いからシアター好きの人の需要もそれほど高くない。そもそもシアター好きは音楽聴くよりも映画を見る方が好きな人達だ。一般人はもはや語るまでもない。

 そして供給側も問題を抱える。
とりあえず国内でatmosが音源を製作できる場所が非常に限られている。
映画の日本語音声トラックにオブジェクトオーディオを実装しているのを滅多に見ないのに、オブジェクトオーディオの音楽が作られるとは思えない。
海外であるにしてもクラシックでこれが効果が大きいとも思えず、映画のサウンドトラックや洋楽の物好きくらいしか作らないのではないか。

 5.0chのマルチチャンネルですら結局音源が充実しないことにはあまり使う機会もなく、使う機会がなければ良い規格だとしても重視できないと言わざるを得ない。
さらにハードルが高く需要も供給も期待できないDolby Atmos Musicが爆発的に普及することは期待しづらい。
ただサブスクリプションのストリーミングがメインらしいので映画のatmos環境を作っておけば比較的低コストで利用することはできそうだ。
今後機会があれば聴いて見たい代物ではあるので、自分が利用を始める頃までに少しでもタイトルが充実して欲しいところだ。
なんとなくの感覚でステレオの背面に板を張り付けたり側面を拡散したりしたけれども、
どうしてそうすると納得いく音になったのか、
スピーカーと壁との距離をどうした方がいいのか、
など理屈としてどう考えて良いのかと思い、
ステレオフォニックの定位に関して基礎の基礎の部分を調べていたらシンプルで腑に落ちる理屈が頭の中に降りてきた。
それと同時に15年以上オーディオやってきてなんでこんなところに気付かなかったんだろう、考えてやらなかったのだろうと恥ずかしい気持ちになった。

2台のスピーカーで音の位置を作り出すのがステレオフォニックだが、左右の位置だけでなく、
奥行きもある程度は作り出せると言われている。(上下の定位を2台で作り出せるかは諸説あり)
左右間隔上下感覚は今回は割愛するとしても、録音ソースレベルで奥行きをどう作るかというと、①録音に残響や反射音を入れ、②距離や反射で減衰しやすい高域を抑えて、③直接音に相当する音を小さくする、という操作をすると音に奥行きが出るということである。

これが、なぜオーディオをやる部屋があえて部屋の響きを取り入れるのか、十人十色で音の為に作られたものではない素材の反射音というピュアとは言い難い間接音を受け入れるのか、
間接音がなく無響室でやった方が結果的には最高の音になるのではないかという疑問を否定する理論的な解答にたどり着く。
答えとしてミキシング・マスタリングの際にリバーブやディレイなどのエフェクトを音楽ジャンルを問わず多少は付与することが多いらしいのだが(純音楽の場合機械的に発生させるのではなくホールの残響をマイクで拾って付け足すというのであるにしても)、
録音の中に入れた残響成分のみでは十分なはずがない。ミキシング・マスタリングをする際の空間は無響室ではなく、ある程度は響きのある室内だ。
そうした環境の中で音源が作り出されるとすれば、それは部屋がある程度は響いて間接音が含まれて初めて良い塩梅になる音源だ。意識無意識問わず結果的にそのように調整されていることに疑問の余地は無い。
そして程度こそあれ一般的にはリスナーに届く音は直接音よりも間接音の方が多く、その付与されるはずの間接音の量は決して無視して良い量では無い。
ある程度響く部屋でミキシングをして、多少は響く部屋で視聴されることを想定して作った音源を無響室の如く完全にデッドな空間で鳴らされでもしたら制作側の意図しない、想定されたよりも響きの少ない状態で音源が再生されてしまうことになる。だから無響室の音が良いと感じない人が多く、誰も無響室でオーディオをしようとはしないのである。

部屋の響きを加えて音が完成するのであれば、それをどうデザインするか、一定の基準があれば良いのだがそれは残念ながら答えは一つではないようだ。
ミキシング・マスタリングの環境を再現するにしてもそちらの方にも明確な基準はなさそうだ。
音楽再生の味付けというものは、オーディオ機器の選定が世間では一番有名ではあるが、そちらの方は原音忠実系というそれなりの逃げ道はある。機器の選定の際に必ずしも積極的に味付けをする必要はないのだ。
だが部屋の響きは違う。無響室が否定されてしまっているので、何らかの味付けをすることが強制されてしまっている。

再生音楽は室内の響きを付与しないと完成しない。その結果、音源作成側でも定位の一部の要素はコントロールすることはできずリスナー側の調整に委ねられてしまっている。その要素が奥行知覚である。
録音で多少の奥行きはコントロールされているが、それでコントロールできるのは各楽器の相対的な奥行きであって全体的な奥行き感の半分は否応なく部屋の響き方に影響される。
先に述べた様に、①音源側の間接音が多い②残響成分が多い③反射音の高域が減衰する、と音により大きな奥行きが出る。奥行きの表現という意味では特に音源側の壁の響き方にこういった性質があれば音が遠くで鳴っているように感じ、奥行きの深い音になる。その逆であれば近くで鳴っているようになる。
このことを音場型、音像型と呼ぶケースもあるのだが必ずしも正しいとは思わない。定位を奥に調整した音は立体感があり、手前に調整した音は平面的であるというのも正しいとは思わない。
なぜなら、定位を奥に調整した場合は全ての音が奥に行ってしまうからである。奥の中での比較的手前か奥側かの音像を作っているに過ぎないからだ。特定の音を選んで手前に残せれば奥行きのレンジは広がるが、そんなことはルームチューニングでできる仕事では無い。
逆に定位を手前に調整した場合でも音源の中に設定されたそれぞれの相対的な奥行き関係を表現することに支障があるとは思えない。手前に定位させると立体感がなくなるという説の納得出来る理屈が私には見当たらない。

だがハイエンド環境でしばしばQRDやシルヴァンアンクで覆い尽くして定位を明らかに奥に追いやるセッティングをより良いものとされることがあるのか、という疑問にぶつかる。
もちろん定在波対策であったり反射する音の帯域であったりというのはあるだろうが、それだけなら他の対策のしようはあるし悪いものを取り除いたというだけにしかならない。
これは定位の奥、手前というよりリスニングルームがコンサートホールよりも小さいのを補償するためだろうと思われる。
音源の演奏が行われていたホールが大きいにしても小さいにしても、リスニングルームよりも大きい空間であることがほとんどである。
仮にリスニングルームをホール並に大きくしたとしても、スピーカーが大きなホールでの音楽再生という条件で良く鳴るようには出来てはいないので良い結果にならない。
そのため録音の室内よりも再生の室内の容積が小さいというのは定説と扱って良い。
聴衆として比較的大きな室内でライブ演奏を聴く時には、リスニングポイントの近い場所に壁は無く自分の近くで反射した一次反射音が多く入ってくることはほとんどない。
だがリスニングルームでは特別な対策を行わない限りリスニングポイントのすぐ近くで反射した音が大量に入ってくるわけである。一次反射音の①量が多く②遅延が少なく③四方から聞こえるといかにも小さい部屋で鳴らしている印象を感じるわけである。
部屋に質の良い拡散体で敷き詰めると一次反射音が極端に減るため小さい部屋で鳴らしている感じがなくなり、実際の部屋の広さ以上に定位が奥に設定され、実際以上に広い部屋で響いている様に感じるというメリットがあるのだろう。

だが、正面壁の拡散を多くすると、どうしても定位は奥に行ってしまうので、遠くの演奏を聴いている感じになる。実際のライブでも近くで聴くというのはあまりないのだからそれがリアルで良いと言えばそれまでだが。
それに拡散により一次反射音の量を極端に減らすと定位に関する情報が減ってしまうことになるので定位として不利になってくるのではという懸念がある。
さらに迫りくるような近い定位の音像にも魅力はある。というか奥の方でゴチョゴチョ鳴らしているのはもどかしく感じてしまう性分の人間もいる(私がそれである)。
拡散させないなら小さな部屋で鳴っている感が出てしまうが、そもそも部屋の大きさ相応で大きさに相当する響きだったとしても妥当、自然なことであり違和感はない。大きな部屋と錯覚させることが絶対に必要なのかというと検討の余地があるだろう。

正面壁に拡散や吸音を多用せず一次反射音を利用する場合はその質は重要になってくるだろう。
共振する脆弱な壁や特定の周波数のみを吸音する壁であれば、共振した濁った音や痩せた音が乗ってくるし、背面の壁とスピーカーの距離が近ければ背面の一次反射音がより早く大きくなるので、より近い定位になる。
スピーカーと壁との距離にいくつかの理論はあるが、壁が碌な音を返さないことを前提とした理論も多い。定位のデザインに大きく関わるので壁に音響対策を施してあるならスピーカーの位置は割とゼロベースで考えてもいいのかもしれない。

ただ、現時点での理屈では正面壁はまだしも、他の壁は拡散させてもデメリットが少なくメリットばかりな気もしてくる。
拡散を増やしすぎると乱反射ばかりになって吸音効果が高くなり、響きが足らなくなるリスクがあるのかも知れないが。今後正面以外の拡散体を増やすべきかせざるべきか、改めて実践や考察が求められるところではある。

いずれにしろ室内でどう拡散させるか反射させるか吸音させるかに絶対的な正解はないだけに、
室内音響による定位作りは音楽再生への拘りを自覚するのであればそれなりのポリシーや信念や思想や嗜好を求められる。
機材の選び方と同じくらい自分の音作りを表現する重要なポイントなのではないだろうか。
そんなことを15年経ってようやく思い至るようになりました。遅すぎ?
今年もCESが開催されているが、オーディオ関係では今年も目立った内容はなさそうである。
ビジュアル関連は毎年のように新技術が公開されているが、
何より感じるのは以前のような急速な進歩はなくゆっくりであること、そして着実に新技術の製品が手に入りやすくなっていくであろうというところか。
逆に言えば一昔前のビジュアル製品はポンコツになりがちであったが、以前よりは陳腐化しにくいとも言える。

全体的に8Kの出展が多いようだ。放送は日本の誰も見ていないようなBS以外にはなく、光ディスクでも対応している規格はないのに、である。
まあ今更4Kを出展してもインパクトはないだろうから予想していた流れだが、普及機として8Kが下りてくるのかどうかは疑問を抱かざるを得ない。当面は4Kのアップスケーリングとしての機能が活躍のメインではあり、それにどこまでの付加価値を見いだせる人がいるかという問題になってくる。
では8Kの映像作品が増えていくかというと甚だ疑問ではある。映像作品の4K化もローエンドまで普及しているとは言い難く、8Kの映像処理は相当に負荷がかかる。
また今後配信による販売が増えていくことは避けられないが、8K映像配信が支障なく行えるほどインフラとしての通信帯域が極端に広くなるとも考えづらい。
そして何より需要が少ない。4Kでも十分なマニア向けの世界である。
以上を考慮するとネイティブ4Kを買えばそれなりの期間現役を維持できそうな見込みであり、8K伝送端子を備えたネイティブ8Kであれば壊れるまで現役で使えるだろうと思われる。

プロジェクター関連での画期的なニュースはなさそうである。
HDMI2.1の認証プログラムが近日開始されるということで、認証の生むが信頼できるかどうかの大きな目安にはなりそうだ。
HDMI2.1ケーブルは長尺が困難と言われており、今後プロジェクターがそれなりに難しい立ち位置になりそうな理由の一つではある。今後10m以上で認証通過するケーブルが出てくるかどうかは気になるところだ。

有機ELは使うときのみ天井からスライドさせて降ろしてくる、巻き上げ式スクリーンのような使い方ができる製品が出展されている。
有機ELのフレキシビリティを有効利用した良いケースだろう。折り曲げ可能だからと言ってあえて曲面にして試聴する必要は必ずしも無いと思っている。
大型になればなるほど搬入や設置の際に薄くて大きくて脆いパネルだと設置性の困難がつきまとう。それを柔軟に扱えるだけでも大きなメリットだとは思える。

液晶は1万個程度のLEDバックライトの個別制御でコントラストを高める製品などが出展されるようだ。
マイクロLEDそのものを画素にしたテレビは次世代のテレビとして期待されてはいるが、コスト面でのブレイクスルーがないと厳しい。現状まだそれを克服できている気配はないようだ。
その環境では1万個のLEDバックライトの個別制御は有効な選択肢にもなりうる。
いかんせん画質を見てみないと仕方ないだろう。現在でももっと粗いバックライトの分割制御は行えているが、有機ELのコントラストには及ばないという評価だ。その延長線上でどこまでコントラストを追求できるか?
分割数が増えれば増えるほどコストは上がるが、有機ELが普及している中で多少高コストな画質重視の液晶がどこまで存在価値を認めさせることができるか、実機を見る機会があれば確かめたい。

液晶も有機ELも大型化しており、80型〜90型くらいまで出ているようである。
プロジェクターからの置き換えも視野に入ってくるが、節目の100インチを超えて欲しいところだ。それにコストももう少しこなれて欲しいところだ。
マザーガラスの大きさの都合上突然大きなサイズは発売されることは無いので当面は待つしか無いし、当面無いのであれば4Kプロジェクターも十分買い時と言ってもいいのかもしれない。