ここ最近で様々な文献に当たったが、ここらで自分の考察をしてみようと思う。

まずはこの論文について

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/74/3/74_130/_pdf/-char/en


この論文でオーディオリスニングに関して、8mの立方体と思われる大きい部屋での間接音を付加したものと5mの立方体のそれとでは、
間接音の方向で多少の違いはあれども、全体的に8mの方が明らかに聴感上優れていると明らかになった研究があるということだ。
また5m部屋の環境でも反射音を8m部屋レベルまで減衰させると聴感上の成績は良くなるが、減らしただけでは8m部屋に及んでいない。
8m部屋と5m部屋でどう違うのか考察してみた。

2次元鏡像反射シミュレーションではあるがそれで30~80ms(茶色の下線)のインパルス応答を調べてみる。
8m正方形


5m正方形


反射音の大きさは調整しても優劣は残っていたので大きさ自体は今回の問題ではない。
どちらにしてもおおむねなだらかに減衰しているので減衰の有無に違いはない。
こうやって見ると残っている要素として反射波の個数の違いが聴感上の善し悪しに関わっているとしか思えない。
この論文では横方向の反射波は減衰させれば5m部屋でも聴感上の印象はかなり良好だったので、以上から考察するに、
「30~80msの反射音を付加した際に小部屋でも明瞭に聞こえるようにするためには、大部屋の反射と同じくらいの大きさに減衰させることに加えて、正面と背面から入射する反射波の密度を均等に減らしていく必要がある。特に背面の密度は積極的に減らして良いと思われる。」
ということが言えるのではないだろうか。拡散してしまうと、反射波の本数が逆に増えてしまう。30~80msの反射波は直接音への位相干渉効果はほとんど無いと本文でも論じられており、非相関にする必要性はあまりない。反射波の本数を少なくしようとすると、方向逸らすか吸音材を使うかということになるだろう。
目的を達成できるようなピンポイントの吸音はできるのかどうか一考の余地はありそうだ。

第一波面の法則が成り立つ立ち上がりよりも、聴覚として感じている違いは立ち下がりにあるようなので、小さい部屋で大きな部屋のような響きを取り入れるためには、減衰の仕方を密度を小さく遅く、響きは短くなりがちなので吸音率を低めにしていかなくてはいけない。

ITDGはいろいろ考えてみたのだが、小さい部屋の場合、一次反射音は捨てつつ、距離が程よく稼げる二次反射でしっかり入れて大部屋の一次反射音に近似させていくと良いのではないだろうか。
今回は英語論文に挑戦

David Griesinger氏は今もそうなのかは分からないがハーバード大学でルームアコースティックの研究をされている人のようだ。
割と分かりやすくピンポイントで多くのスライド式のペーパーがあるので読んでみた。

The Theory and Practice of Perceptual Modeling - How to use Electronic Reverberation to Add Depth and Envelopment Without Reducing Clarity

今まではインパルス応答の瞬間的な音でいろいろ読んできたが、瞬間的ではなく一定時間連続した音を聞いたときの構造が図示されている。



時系列的に最初は直接音しかなかったところに反射音が積み上がり、定常状態になる。直接音が終わった後間接音が残り、早い反射順に徐々に消えていく。
考えてみれば分かることではあったが、インパルス応答だけ見ているとなかなか想像がつかないものであった。
重要なのが「what we hear」の部分である。
直接音が出てから40~50msくらいの所から聞き始めており、直接音が消えてから20~30msくらいまでで聞き終えてしまっている。
最初の知覚が遅いのは第一波面の法則により区別できないというものを表現していることと思われる。
そういう意味では50ms以内の反射音はラウドネスは大きくなるが周波数特性が悪くなるのであまりメリットがないようにも見えるが、ここから読み取れる早期反射音の重要性はむしろ音の消える際にあるように思える。
直接音が消えてからも20~30msは声として聞いているのだが、そこに早期反射音があれば、音として残り、早期反射音を吸音してしまっていれば直接音が終わったらすぐさま余韻なく音が消える。その消え方で直接音の距離感を感じていると書かれている。
直接音が消えてから30ms以降はリバーブとして直接音とは別に知覚されている。


The Science of Surround
http://freeverb3vst.osdn.jp/doc/Lexicon/aes99.pdf

スピーチや大部分の楽曲は響きが3領域に分かれる:
– 早期反射音 (20-50ms) は距離感を感じさせる。
– 中期反射音 (50-150ms) は距離感と不明瞭さを与える。
– 後期反射音 (150ms + ) 残響感と包まれ感を与える

早期反射エネルギー(15〜50ms)
• 早期エネルギーは音源の同一音として近くされる。
• 早期の側方エネルギーはマイクが近くにある感じを取り除き、距離感を感じさせる効果がある。
• 早期の内側のエネルギーは音圧を付加し音色を変える
• 反射エネルギーの絶対量よりも直接音と早期反射エネルギーの比が重要である。

中期反射エネルギー(50 - 150ms)
• 中期のエネルギーはつながりのある音楽の距離感と音圧上昇に寄与することができる。
• アクセントを付けた歯切れのよい音楽やスピーチのは不明瞭となるデメリットがある。
• この時間帯に一次反射が反射が入ってきたり、密に集中した反射音が入ってくると特に煩わしく不快に感じてしまう。
• 内側に入ってくる反射音よりも外側から入ってくる反射音の方が煩わしく不快に感じる

後期反射エネルギー(150ms〜)
• 後期に到達するエネルギーは前方に展開される音像とは別に知覚される。
• 後期エネルギーはその絶対量が重要なのであって、直接音とリバーブの比の問題ではない。
 →直接音を大きくすればリバーブを感じることが出来やすくなる!

音楽における後期反射音
• 空間的に拡散された後期反射(特に外側方)は包まれ感を生み出す。
– ステージハウスの残響はそれは内側のものであるため含まれない(真意不明)。
• 包まれ感はコンサートホールとオペラの音響として究極の目標である。
• 交響楽にとって300ms以上の残響は特に隣接音符によるマスキングを行うために特に重要である。

つまり「大半の」音楽にとっては
• 響きを知覚は反射の強弱で成り立っている。
早期反射音にとってはその強弱とは直接音と残響音の比であり、後期反射音にとっては音圧の絶対量である。
• 響きの知覚は反射音の遅延や方向性に強く依存している。


筆者は異なるがITDGに関する英文解説
室内設計についても論じられている。抄録するというよりも拙い直訳にはなってしまっているが、後で自分がじっくり読み返すために抜粋して機械的に訳した。

Acoustics and Psychoacoustics Applied – Part 1: Listening room design
https://www.eetimes.com/acoustics-and-psychoacoustics-applied-part-1-listening-room-design/


7.1.3 Energy”time considerations
音楽鑑賞におけるアコースティックデザインの大きな利点は、時間とともに変化する部屋に起因した音響エネルギー、つまりは残響時間の構築を任意に実現できることにある。その構造を細かく言うと早期反射の大きさはチャプター6で論じている。 サウンドにおける早期反射に関して、部屋は音響エネルギーの時系列的に詳細な展開を調節する機能として部屋が重要になってくる。

現在の音響測定機器は部屋の時間曲線を直接調べることができる。それにより音響デザイナーは自身の神がかり的な聴覚に頼らずとも、部屋の中で異なる周波数でどのようなことが起こっているかを見るということができる。1つの理想的な音響エネルギーの理想的な曲線を以下に示す。



ここには3つの特徴がある:

直接音と第一反射音の時間の空白が存在する(ITDG)。これは室内空間のの大きさの印象に関わったり、ほとんどの空間においては音の自然な印象を与えてくれる。その空白は長すぎてはいけない。30ms以内であることが前提となる。それより長いと第一反射音はエコーとして認識されてしまう。とはいえ多少の遅延は音の明瞭さの改善につながるのであることが望ましい。短いITDGは聴感上として開放的な空間の印象を与えず、プライベートな小空間のような印象の音場になってしまう。
主に側方から到来する早期反射音を細かく拡散するという手法は空間の大きさを大きく感じさせ、その手法を利用することで扇形のホールよりもシューズボックスタイプのホールの方が聴衆全体に聞かせるのは容易になる。早期反射音は理想的には直接音の20ms以内に到来すべきである。早期反射の周波数特性は理想的にはフラットであるべきで、同時に高い音圧の側方反射音の必要性とする。これは側方壁は最小限の吸音であるべきで、拡散反射が必要であることを意味する。
スムーズな減衰を伴う拡散された残響はは明らかな欠点はなく、形態的な挙動がなく、その減衰を伴う残響時間は音楽のスタイルを適正化することをに役立っている。それを達成するのはかなり難しいのでほとんどのケースで妥協が必要になってくる。アコースティックな音楽を作る際に、残響音場で緩やかな低音の立ち上がりを作ることは「音の温かみ」を与えるので望ましいことであるが、そのサウンドはスタジオにとってはあまり望ましいものではない。

7.1.4 Reflection-controlled rooms
自宅のリスナーやコントロールルームのサウンドエンジニアにとって理想的な音響システムとは録音された際のオリジナルの音響的の響き方を「完全に聞ける」ことである。不幸にも録音された音源は一般的には原音のオリジナルの空間に比べてずっと小さな空間で聴取されている。その影響は下図で表している。



このリスナーが聴取する第一反射音はリスニングルームの壁によるものであって、録音されている音ではない。この反射が支配する優先効果により、リスニングルームのサイズとしてはっきりと理解できるように知覚される。何が必要かというと近くの壁からの早期反射音を抑制することによってあたかも大きな空間が現れたようなスピーカーからの音作りをしていくことである。それを下図に示す。



そのアプローチの例として
「ライブエンド・デッドエンド(LEDE)」(Davies and Davies, 1980)
「Reflection free zone (RFZ)」 (D'Antonio and Konnert, 1984)
「controlled reflection rooms」 (Walker, 1993, 1998).
がある。
それらを達成するための一つの手段として吸音を用いるという方法がある。以下に示す。



壁を傾けたり特定の形をつけたりする方法もある。以下に示す。





これは「反射調整法 “controlled reflection technique” 」として知られており、部屋の特定のエリアで早期反射の抑制を行い、ITDGをより長くするために用いられている。この効果は(ふかし壁を多用するために)部屋の容積を縮小しないと実現できず、そうでなければ無響的に作るしかないが、それは受け入れられるものではない。

スピーカーから最も遠い壁を除外した全ての壁からの一次反射音を吸音もしくは逸らして反射させることによってITDGを最大化させるというアイディアは単純である。もし原音のITDGよりギャップが大きければ、リスナーは部屋の反射音を聞くのではなく原音の空間の音を聞けることになる。

しかしながら、これは残響の拡散の処理を十分に行いつつ達成されなければならない。そのためには後壁は拡散構造の形を作らなければならない。ITDGはできるだけ大きい方がいいが、音が後壁に行きリスナーの後ろに到達するまでの時間はっきりと制限されている。理想的にはこのギャップは20msであるべきで、それより大きければエコーとして認識される。ほとんどの実用的な部屋は自動的にこの要求は満たされており、ITDGは8~20msの範囲で到達している。

吸音よりもむしろ反射の音の方向を変えることに注目すると、それは部屋の中に通常よりも高いレベルの初期反射が入る「ホットエリア」が存在することになる(リスニングポジション以外の特性の改善にはつながらない)。一般的には反射を逸らすよりも吸音を使う方が建築的には簡単なので、吸音すると残響時間が短くなることにはなるのだが頻繁に使用される。

7.1.5 The absorption level required for reflection-free zones
RFZを達成するために早期反射の抑制が必要である。しかしどれだけ抑制すれば良いのだろう?下図はステレオの音場に邪魔になる早期反射音の平均レベルの基準である(このデータは個人的にかなりの有用資料と思われる)。



このデータから感覚的に反射音を聞こえなくするには少なくとも15dBの減衰をしなければならない。逆二乗の法則(距離による減衰)によりそれなりの削減ができれば、約10dbの削減ができればよく、つまり一次反射面に吸音率0.9の吸音を行えば良いことになる。

家庭内のセッティングでは反射面近くにカーペットやカーテン、本棚などを設置すると効果的な拡散体として機能しうる。だが家の同居者に説得してカーペットやカーテンを天井の表面にシックに設置するのは困難だろうけれども。スタジオでは究極的な処理が行われる。しかし大事なのは音響が全体的にみて良好で心地よいものであるべきだ、ということである。それは可聴帯域を無響にすることではない。小さなパッチで処理する手法はただ中高域にのみ顕著に変化するだけのものである。

7.1.6 The absorption position for reflection-free zones
下図では部屋の早期反射のコントロールのためにどこを吸音するかを計算したものである。


鏡像法でイメージした架空の部屋をつくりだすことで早期反射の方向を見ることが出来る。リスニングポジションの周りの反射回避スペースを決め、架空のスピーカーからの線を書くことで下図のように吸音する範囲を見ることが出来る。



これは長方形の部屋では非常に簡潔であるが、傾斜壁のある部屋では若干複雑になってくる。それにもかかわらずこの手法は未だに使用されている。ステレオでもサラウンドシステムでも利用できるもので、ソースの数が異なるというだけだからである。

後壁は通常拡散材を配置するところだが、上記の図ではそうしていない。後壁の反射が抑制されるならば、後壁により作られるもう一つの鏡像が作られないことになるので、吸音材を配置している。

この後壁全体を吸音する手法の利点はどこを吸音するかという工夫が不要になることである。実際にはドアや窓などが複雑などんな吸音効果があるかは難解であるので、利用しやすい。

吸う音量を最小化するために吸音部はできるだけ最小限にするには、反射しない部分できるだけ大きくし、大きな吸音パネルが必要になる。この手法は垂直水平方向どちらでも等しく利用できる。

7.1.7 Non-environment rooms
初期反射をコントロールするもう別のアプローチとして多くのコントロールルームで利用されているのが“non-environment” roomである。これらの部屋は早期反射と残響を同時にコントロールする。音響的にはかなりデッドになるが、無響室ではない。

実際は部屋でいくつかは堅い反射壁からの反射があり、部屋内ではいくつかの早期反射が存在し、無響室とは異なる状況を作り出す。とはいえスピーカーから放出された音は吸収され、残響空間に決してならない。なぜそうなるかは上図で示すような挙動で示されている。

これらの部屋では反射壁内にマウントされたスピーカーと反射性の床で構成されているが、後壁は高度に吸音されており、側壁や天井も吸音している。

この反射と吸音の組み合わせは、スピーカーからの音を反射せずに吸音する効果があるので、床からの反射を除けば直接音のみ聴取することができる。しかし2つの反射壁の存在が音源にない早期の反射音を生み出してしいる。これにより室内の音響環境がデッドではあるが完全な無響空間ではないということになる。

このスタイルの部屋の支持者は他の音がなくても、直接音があれば音源の細かい音が再現しやすく、優れたステレオ音像を作れると言及する。床の反射はステレオ音像にほとんど影響しないので、音像形成に障害となる大半の音を除去しているので、概ね正確な事柄である。

これらの部屋は下図で示すように広範囲の吸音材を必要とする。


これらの吸音材は上図のとおり、かなりのスペースを必要とする。部屋の50%以上の容積を占めてしまう。しかしチャプター6で取り上げたような広範囲帯域の吸音材を使うことができれば30cm程度の厚みで広い帯域を十分に吸音することができる。そのテクニックを使えば15m^2程度の小空間でも適応することができる。下図は典型的なnon-environmentの部屋を実装した、リバプールミュージックハウスの「The Lab」である。



non-environmentの部屋は残響のある空間ではないので、スピーカーの音圧を補強する残響が存在しない。直接音のみによって音圧が作られている。

通常の室内環境は残響がほとんどの音響パワーを担っており、直接音よりも10dB程度上積みされる。そのため、non-environmentの部屋はパワーアンプのレベルを10dB上げるか、必要な音量の再現のためプロ用途のスピーカーシステムは高能率のものを使わなければならなくなる(Newell, 2008).

7.1.8 The diffuse reflection room
吸音や反射方向の変化ではない、早期反射音をコントロールする新たなアプローチは早期反射音を拡散することである。これは反射音レベルを減少させるが吸音はしないという効果がある。

一般的に反射の際に音響エネルギーは殆どの壁で吸音され減弱される。(反射率1に近いものはほとんどない)。そのため反射音の大きさは反射面の吸音により減弱され、それは逆2乗の法則により予測できる。

吸音材が配置されたエリアを除いた音響エネルギーの総量はエリアを単位分けししたエネルギーの偏りに依存する。音圧強度は単位エリアあたりの音響エネルギーつまりは反射して吸音率分が減弱した音の強度の測定しているものである。それ故に早期反射の強度は下の式で表される:

I direct sound = [QW Source (1 – α)] / 4πr 2 (7.1)

上記の式(7.1)から、1.18の式の吸音面の効果の追加を行うと、鏡面的な早期反射音が距離の逆二乗の割合での強度的な減少が明らかになる。

拡散面で拡散した音は鏡面反射よりも他のいろいろな方向に向く。理想的なディフューザーの場合、そのエネルギーは半円状のパターンで拡散する。拡散されたエネルギーのモデルとなる効果の計算を単純にアプローチすると入射エネルギーにより与えられるソースの初期強度から計算される。

従って理想的な拡散体にとっての反射強度は、音源の強度とディフューザーにより放散された音圧強度を含めた方程式から与えられる:

I diffuse reflection = (W Source / 4πrs 2 ) × (2 / 4πrd 2 ) (7.2)



factor 2のsecond termで半円球状に放射された場合のみその式が成立し、2の「Q」がある。7.2式から拡散反射の強度は4の距離の逆比例とわかる。これはつまりそれぞれの拡散反射の強度は同じ音を鏡面反射するよりも ずっと小さいということである。

そのため拡散は結果的に早期反射音の振幅の減少という結果をもたらす。しかしながら拡散により、下図のようにリスニングポイントに入射される反射音が様々な場所からくることになる。



このことは拡散という手法の他の利点を打ち消す物ではないのか?さまざまな長さの遅延の反射がリスニングポイントを通過することが上図のより明らかになっているのだが。追加された反射音の経路は元々の鏡像反射よりも全て長い経路になっている。

それ故に、位相反転する拡散構造は反射に一時的な広がりを付与する。ITDGの結果として低い音圧の早期反射音が密になって集まって満たされている。対して拡散しない場合は大きな反射音が疎に入ってくる。特筆すべきは吸音を全く加えずとも拡散反射したレベルはステレオイメージに影響をまったく与えないくらい十分に小さいことである。下図のとおりである。



大きな早期反射音がもたらすコムフィルタ現象の効果は大きな減少をもたらす。拡散による遅延の多様性が、振幅の減少や拡散を起こすことによりコムフィルタ現象をなだらかにすることができる。コムフィルタ現象はステレオイメージの混乱をきたすと考えられている(Rodgers, 1981)ので、早期反射音が理想よりも大きい場合にパフォーマンスの改善を期待できる

リスニングポジションに最適な場所から外れたフォーカスのない散乱効果も引き起こす結果になるという事実は、リスニングポジション外での響きを徐々に減衰させるという結果をもたらす。下図は最大の拡散壁を側壁に設置したときに最大の鏡面反射壁を設置したときとの音圧強度の関係を示す。この図から大部分は直接音よりも15dB以上の減衰をしていることがわかる。



下図はそのような数少ない例である。


この部屋の体験は壁からの音の反射を認識できない。ほとんど無響室のようにも聞こえるが、残響はまだある。ステレオやマルチチャネルの音源をこの部屋で再生すると、セオリーどおりに広範囲に安定したリスニングエリアをイメージする。部屋は高いレベルの拡散反射音場としてレコーディングに適しており、音響ミキシングでも楽器によって放出された音を統合することに役立つ。

Summary
このsectionではステレオやマルチチャネルの音楽の聴取に良好な音響環境を達成するためにいくつかの手法を調べた。しかし実験的に批評的なリスニングルームのデザインは部屋の処理、音の分離、空調などに関して多くの詳細な考察を必要としている。それらはNewell (2008)でカバーされている.
そもそも拡散はすべきものなのか、初期反射は良いものという根拠はあるのかということについて調べてみる。

日本音響学会誌65巻11号(2009)より、名誉教授なので最新鋭のバリバリの人ではないだろうし、少し古いコラムだが非常に分かりやすく核心的で示唆に富んだ拡散とはどうあるべきか論を残されている。
出典:室内音響と拡散性について(<小特集>室内音響における拡散研究の最新動向)
安岡 正人氏
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/65/11/65_KJ00005821991/_pdf/-char/ja
一部を抜粋
「測定用の残響室で音楽を演奏して聞きたい人はまずいない。逆に、無響室で演奏させられるのは拷問に近い。
完全拡散壁に囲まれた室内で空間感もなく残響のエネルギーだけを聞くのは、ランダムノイズに電気的に指数減衰を掛けた音を聞くのに近い。
音源との相互相関の少ない残響音は拡声系にとってはうれしいことであり,(中略)敢えて蛮勇をふるって言えば,室内音場を聴感的にうれしくするには鏡像反射音を時空的にコントロールすることが第一義的に重要であって,拡散音は背景に過ぎない。フラッターなど音響障害を拡散で処理するだけでは好ましい室内音場は決して得られない。そうでなければ直接音とゆらぎのない確定的,離散的な付加反射音で行われて来た拡がり感などの時空的聴感評価研究はどうなるのか。」

完全な拡散音場というのは音響学的に理想で計算通りの挙動となる、周波数特性やインパルス応答もきれいなものになるので、理想の拡散状態を追い求める研究も多いのだが、
そもそも反射や吸音と同じで拡散も完璧にしてしまうことが音響心理学的に理想なものではない。文中にもあるとおり、無響室と同じ空間感がない音場にノイズが乗るだけという理想にはほど遠いものになる。
現時点で利用されている拡散体は拡散性として完璧なものではないが、音楽関連では、そもそも完璧を突き詰めるものではない。拡散性が完璧でなければ何らかの偏在が生じていることになる。その偏在を有効なものにするためにはどういう工夫をすればいいかを考えるべきなのだろう。
そして室内音響で大事なのは鏡像反射音の時空的なコントロールであり、拡散音は脇役だと述べている。拡散とひとまとめに言われているが、反射音の時空的なコントロールのために不完全な拡散性を利用するというのが必要なのではないだろうか。
また相互相関の低い反射音が有用と述べられているが、位相干渉を避ける意味ではそのとおりではる。相互相関を低くするのにはどうすればいいのかはよく分からない。ある程度細かく複雑な反射が必要なのだとは思うが。

続いて日本音響学会誌74巻3号の論文。2018年と最新で、NHKBS8Kの22.2chシステムを用いた実験をしている。
小空間における音楽の明瞭さに関する評価要因の調査
今村秀隆氏 芸大の先生のようだ
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/74/3/74_130/_pdf/-char/en
リスニングルームなどの小空間での様々な種類の初期反射の心理的評価を行っている。
位相干渉による周波数特性の変化による明瞭さの低下を無視するために
遅延は30msから80msまでの反射音に限定されている。
正直30ms以内が除外して小空間における初期反射の研究として妥当なのか不明だし
コントロールルームやリスニングルームの研究であるにも関わらず
容積が125m^3と512m^3の2つの部屋というかなり大きめの設定ではある。
条件がいろいろピンポイントから外れてはいるが研究内容自体はピンポイントではある。



512m^3の情報や無響室録音の評価は想定されるケースではないのでそのあたりを除外して125m^3の結果を抜粋。
プラス方向のものは比較的好ましいと感じられ、マイナスのものは比較的好ましくないものという評価である。
ラベルの最後にマイナス記号がついているものは小空間の反射音ながらも大空間と同じだけ減衰させているものである。
諸々の条件でリーグ戦をして貯金借金を示しているようなものである。
借金組が多いのは512m^3部屋勢にほとんど負け越しているからである。
それだけ大きい部屋というのは聴感上良く聞こえるということである。

傾向として言えるのは反射音を減衰させない(ラベルにマイナスがついていない)小さい部屋の反射音は明瞭感が軒並み悪い。
そして後ろからの反射音は部屋の大きさや減衰量に関わらず比較的明瞭さを失わせる作用が大きい。

大部屋相手にかなり健闘したのが小部屋の横方向の減衰反射音を付加したケースである。
他に小部屋で比較的マシだったのは正面方向の減衰反射音だ。

明瞭感を出すためには80msまでの場合後ろの反射はいらないということになり、側方はそのまま反射させるなら有害だが、反射率を落として若干小さく出来るならあった方がいい。
正面は反射率減らさないなら有害、減らせる場合はあった方がいいのかもしれないが微妙。

そんな知見が見て取れる。全般的にリスニングルームレベルの小空間では反射音が明瞭性に寄与するのはかなり限定的というのがこの研究の結果のようだ。
東大の環境音響学研究室の公開情報からかいつまみ

出典:小空間音場の拡散性に室仕様が及ぼす影響について(ポスター発表) 
http://www.env-acoust.t.u-tokyo.ac.jp/public/p/pb12-1.jpg
10cm深さの横リブを入れると拡散性はどうなるだろう、という自分が考えていたものをソフトでの解析を行ったもの。低域がメインで検討されている。
結果としては100Hz以下(63Hz)の低域でもリブにより影響を受けている。リブの間隔が大きいほどディップの緩和効果があり、残響時間を抑制している。



出典:室内インパルス応答における反射音構造の分析評価

http://www.env-acoust.t.u-tokyo.ac.jp/public/p/pa10-2.jpg

研究としていかにも途上の時点でのポスターのようだが、リブは縦と横を向かい合わせにするとより拡散性が上がりそうな感じということのようだ。

出典:壁面音響乱反射率の実験室測定と数値解析に関する研究

http://www.env-acoust.t.u-tokyo.ac.jp/public/x/x004.pdf


曲線の波面、ギザギザ、凹凸で拡散性を比較検討



リブの凹凸は他の形状よりも中低域の周波数では良好なのだが高域の拡散性がガクッと落ちるようだ。
理由は簡単でリブの大きさと波長が似た大きさだとリブに当たっても当たらなくても位相が変わらないことにあるのだろう。
著者はリブよりも他の拡散体の方が優れていると結論をつけているし、このデータだけ見ればそうだが、
間隔を微妙にずらしたり、大きさを微妙に別の使ったり幅を変えたりと小細工で対応できそうではある。施工の容易さや材の入手性を考えれば変則リブがいいのではないだろうか。


幅10cm、周期20cmのリブで高さを変えたときの周波数別拡散率
これを見て4cmがいいという見解があったが、特定の高域の周波数のみ拡散性が良好な事が良いことなのかは自分には理解できない。中低域もある程度拡散できる10cmの方が良いような気もするのだが



リブの幅を変えるとどう変わるかというものであるが、10cm幅が一番良好ではあるようだ。これもコスパとの兼ね合いであるとは思うが。
拡散体を置きまくって拡散させると最終的には残響時間自体が短くなったり、吸音材と似たような要素が出てくるということが言われておりその認識だが、
どれくらい拡散させると吸音効果が出てくるのか、別途の吸音材がいらなくなるのか、疑問に思っていたがそれを調べてみた。また拡散させない反射板でもどれくらいの吸音率があるのか、というのも今まで見たことはあったが、stdwav2の設定の際により必要になったので調べてみた。

出典は日本音響学会誌65巻2号2009年、スタジオ設計会社sonaの中原雅考氏。このブログで部屋をあーだこーだ言っているのは、ぶっちゃけこの人の理論の拝借しかしていないのだが、今回もこの人の解説がわかりやすすぎるので今回も参考にさせてもらった。
最近の著書が少ないのでさらに調べてみたところオンフィーチャーという企業に在籍しつつ、芸大の非常勤講師もしているようだ。そのあたりで検索かけると新たな発見もあるのかもしれない。

スタジオ音響設計の現状
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/65/2/65_KJ00005185656/_pdf/-char/ja


全般的にとてもためになることではあるが、ピックアップするのは自分の備忘録として残しておきたい部分のみにしておく。
一次元QEDと二次元QRDの周波数別減衰量

扱っている周波数の横グラフの目盛りがかなり高域にフォーカスを当てているのがよく分かる。
ほとんどの音がこの周波数で収まっているであろう5000Hzが1目盛りで収まっていてなんと可聴帯域を超えて25000Hzまで表示されている。
拡散って高域の高域の話なのかと疑問を持ちつつも、拡散による反射音の減衰量は−10log(縦溝数×横溝数)とのことである。
それによりBlackbirdの拡散スタジオは壁面181×769の拡散体を設置しているので-51dBの効果があるのだという。
実際の測定で一次反射音も全て-30dB以下を達成できているということだ。
計算式と現実の反射音の大きさをどう符合させればいいのかよく分からないが、
拡散体の合計数の常用対数が反射波の減衰量と比例するということは覚えておいていいだろう。
細かな拡散体を敷き詰めた部屋の残響時間は0.3秒で吸音率は0.375になるとのことである。
究極レベルで拡散させると吸音材入れなくても吸音率はそこまで上がるということになる。

中原氏がセミナーに引用していた資料の孫引き
http://www.aes-japan.org/special/aes2009/tutorial/AESTC09_TS2_RoomAcoustics.pdf

出典:建築・環境音響学第2版

吸音率(おそらく透過損失も入っていると思われる。)
コンクリート下地にクロスやタイル、大理石などで仕上げたもの
125Hz以上の全周波数で1〜3% 

木製サッシのガラス窓
125Hzで35% 中域で20%前後 高域で10%以下

ひだなしカーテン
125Hzで5% 中域で10〜20% 高域で30%
ひだありカーテン
125Hzで15% 中域で25〜80% 高域は85%

人物
125Hzで25% 中域から高域はほぼ40%

モケット張りの劇場座椅子
125Hzで15% 中高域は30%

クロス仕上げの高密度グラスウール10cm(背面空気層なし)
125Hzで70% 中高域は70〜100%

厚さ2cmの木質ボード(背面吸気層45mm)
125Hzで27% 中高域は6〜8%

根太床
125Hzで16% 中高域で10%前後

スリット構造諸処の条件あるが吸音材噛ませず、空気層10cm未満の場合
125Hzは10%弱 中高域は20〜30%

これをどう使うかは考えどころではあるが、コンクリート壁や地下室などでも無い限り、
普通の壁は木質ボード厚み2cmや根太床などが参考になるのではないか。
つまるところ100Hz前半くらいの低域は16〜27%、つまり20%前後透過損失が起き、それ以下の周波数はさらに透過する。
それより上の周波数だと10%程度吸音する。
stdwav2で壁の吸音率はそれくらいを意識して設定するとうまくシミュレートできそうだ。
家作っている時に間接照明とか付けてみたい、けどよく分からない!
ということでLDKと寝室にお任せで間接照明を付けて貰って
それがコーブ照明ではあったのだが寝室で少し明かりを付けても眩しくなく今でもお気に入りである。

今の照明に不満はないのだが、音も光も波動なので、音波シミュレーター使えば間接照明もある程度シミュレーションできることに気付く。
光を波動として考えれば、良く分からない!ではなく、もっと理解しながら家づくりができたのではないかな、と今更ながら反省。
オーディオルームもダウンライト以外の工夫の仕方もあっただろうし、オーディオ好きのはしくれとしては恥ずかしい限り。

少しシミュレーション結果を掲載。
コーブ照明の光の拡散


天井との隙間を小さくした場合のコーブ照明の拡散。あまり広がらない。


天井との隙間を大きくした場合のコーブ照明の拡散。広がりは良くなるが、距離による減弱とのトレードオフになるか。


奥行きを小さくした場合のコーブ照明。近くが明るくなり、広がりは悪くなる。



コーニス照明


天井との距離を縮めた場合のコーニス照明、こっちの方が広がる感じ


バランス照明

少し前まで半円柱を配置することを提案していた室内設計であったが、
リブでも容易な割にそこそこ拡散してくれるのではないかという結論を先日の記事を扱った。



↑の間取りを半円柱で壁の拡散させた場合の部屋が↓だが



10cm深さのリブに置き換えるとこんな感じ



二次元のQRDとか柱状拡散体とかいかにも拡散してくれそうな視覚効果もないし、実際にそれらに比べると拡散性は良くない。
大して豪華ではないスタジオとかによくありそうな外観になるが、
水平の深さ10cmもあるリブだといろいろメリットがあり、総合力としてこれを越えられるものがあまりないような気もしている。

メリットとして
・250Hz〜8000Hzくらいまでそれなりに拡散する研究結果がある。複雑な形状をした既製品の拡散体は数多くあるが、250Hzまで拡散できる拡散体は案外少ない。
・コスト的に安価で加工難度が低い。
・内壁の太鼓現象を抑制する効果が期待できる(構造柱は垂直に走っているため、内壁は水平方向に共振運動をする可能性があるが、水平リブがその運動を押さえつけるように固定される。)
・リブ間に深さ10cm高さ15cmの空間ができるのでそこに物を置くことができる。
・拡散体を置けばさらに細かい拡散を行う壁にできる。
拡散体は比較的高い所にあると効果が高いが、それなりの重量の拡散体を壁の高いところに設置しようとすると、壁へネジを入れるなどしないと不可能。試しに置いて調べてみるということすらハードルが高いが、棚があれば置くだけなので着脱や位置の調整が非常に簡単。
・リブ間に吸音材を入れれば石井式的な吸音部を作れる。深さは10cmあるのでそれなりの吸音率は期待できる。吸音部の量や場所を簡単に素人でも調整できる。
・リブ間に吸音材を入れた上で、その上に壁を固定すれば二重壁にできるので、防音が不十分であれば簡単に防音を強化できる。



壁の耳の高さ付近でいろいろ調整しようとするとハードルが高いのが基本ではあるが、大きめのリブを入れるという拡散方法だと後々のチューニングのハードルがグッと下がる。
そう考えるとかなり実用的なのではないかと思う次第。

DIY感が出てしまうことと少し寸法が小さいが2X4材の寸法が38mm×89mmなのでそれを並べてみるのだとかなり入手性加工性コストパフォーマンスも良くなる。
5cm×10cmのリブを15cmおきに配置することで、程々にコントロールしやすい拡散ができそうだ、
というのが前回の論文から推察されることであったが、
資材的に5cmの厚さの板は全くないとは言えないものの入手性が悪く、おそらくコストも高めと思われる。

それならばキノコ型というかTの字のリブ(キノコの傘の部分が5cmにしたもの)だと、常識的な厚みの板が使えるのでおそらく入手性が良いと思われる。厚3cm幅7cmの板と厚3cm幅5cmの板をTの字に重ねれば作れるし、厚さ3cmの板は入手が比較的容易だからだ。
断面積としても5cm×10cmの直方体のリブだと50cm^2だが、Tの字だと断面積が36cm^2と資材削減にもなるし、厚み3cmあれば剛性はほとんど問題にならない。

拡散はどう変わるのか、鏡面反射のシミュレーションで検討してみることにした。
左上が音源で右下が反射壁である。

平滑な壁45度



直方体のリブ45度


キノコリブ45度


全反射でシミュレーションしているので、リブが入っていると反射していく方と音源に帰ってくる方に二分されているように見えるが、実際は鏡面反射しきれていないのでその中間を埋めるように音が分布すると思われる。
この前の記事での反射音の分布でもそのような分布ができている。
直方体とキノコでは拡散性にさして大差はなくむしろキノコの方が良いかもしれない。

続いて約30度でのシミュレーション

平滑な壁30度


直方体リブ30度


キノコリブ30度


キノコでもほぼ変わらないか、素直に鏡面反射する量が少し減ってくれている感じ。

キノコの間に小さいリブを入れると拡散性が変わるか試したがあまり変わっているように見えない。
先の考察で完全な拡散を目指した拡散壁ではなく、ある程度拡散性をもちつつ、拡散方向をシミュレーションでき、コントロールできる壁形状として、半円柱を並べる提案をしたが、
半円柱は原木の形体に近く、ログハウスでも使われている形態であるため、コスト的に有利だろうという仮定の下で行った提案である。

だが、壁に半円柱を並べる部屋はネットで調べてもあまりなく、そもそもハードルが低いものなのか疑問に思えてきている。
直径20cmで半円柱のため厚み10cmの建材が果たして入手が容易なのかどうか、
ログハウスは円柱を積み上げるだけだが、先の提案は、石膏ボードに半円柱の木材を取り付けるものである。重すぎて建物への負担が大きいのではないか。
原木のままだとさすがにワイルドすぎるが、そのあたり控えめのコストで違和感なく加工できるのか
など考える逆にコストがかかったり無理なアイディアな気もしてくる。

そもそも拡散性がある程度担保されるのであれば別のアイディアでもいい。
古典的ではあるがリブを使えばそれでいいような気もしてくる。

リブの拡散性はどんなものかというのを論文を少し漁ってみた。
多分同じような研究は沢山ありそうだがさらっと探すだけでも豊富に見つかる
より核心的な論文も他にありそうだが、2編読むとある程度知りたいことが分かった印象。

出典
日本音響学会誌65巻11号の東京大学の佐久間哲哉先生の小特集
壁面の拡散性指標としての乱反射率の測定法

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/65/11/65_KJ00005821986/_pdf


測定法に関しては素人なのでスキップするとして、



厚みの違うクサビリブと矩形リブをで拡散性を比較実験をしている。
結果が以下のとおり



クサビよりも基本的には矩形の方が拡散性が良さそうだ(入手性、加工性も良いので文句なしである)。
とはいえ厚み2.5cmだと750Hz以下の拡散性がイマイチなようである。




もう一つの論文はパラメトリックスピーカーの研究に関する論文。
パラメトリックスピーカーの比較として普通のラウドスピーカーでも対照実験を行っており、今回は対照の方を見るのみ。

出典
東京大学の坂本慎一先生の科研費事業の経過報告書。
パラメトリックスピーカを用いた建築音響材料特性の計測法の開発
https://kaken.nii.ac.jp/ja/file/KAKENHI-PROJECT-26630260/26630260seika.pdf



厚み10cmの矩形のリブ2種類を3種類の排列方法で



反射壁から3mの距離で同心円状にマイクを並べて測定している。



Case.1の5cm×10cmの長方形のリブの拡散性。ラウドスピーカーの測定結果(青)の方のみを見ている。低域の250Hzまで比較的良く拡散できている。




Case.2の10cm×10cmの正方形リブを10cm間隔で並べた場合の拡散性。拡散性は若干落ちる。資材的なコストパフォーマンスとしても悪そうである。




Case.3の10cm×10cmの正方形リブを30cm間隔で並べた場合の拡散性。拡散性は割と良好である。Case.1とコスパの比較は悩ましいところだがCase.1の方が拡散性と勝手が良さそうか。





上の2編の論文を参考にすると5×10cmくらいの矩形リブを15cm間隔で配置できるならリブでもそこそこの拡散性は確保できそうである。
10cmの深さは結構大きいが、それくらいは入れれば250Hzをコントロールできるのなら仕方ないのかもしれない。それより下は定在波の領域になってくるのでそれより大きくする必要はないように思える。

リブの場合のいいところはリブ間の15cmの間隔により細かいリブを入れたり、QRDのように深さを変えたり、シルヴァンアンクのように円柱を入れたりと、さらに細かい拡散を入れる余地があり、
また吸音材を間に入れることで吸音率を調整することもできる。
その追加をDIYで行うのも容易であるところも良い。(リブを水平に走らせることが前提であるが)

さらに10cmの深さというとちょっとした壁シェルフである。棚として本やリモコンやCDなどを置いておくスペースであったりケーブルの遮蔽もしやすかったりと使い勝手がよさそうというのもメリットである。
結構長いこと自宅のwin機が故障していたりサーバー専用のため非力であったりで
.exeアプリを利用が困難な時期が続いており、興味があっても使っていないものがあった。
定在波の計算を行うstndwave2もその一つで、今まで使わずにいた。
定在波のモードの計算くらいは自分でもできるのだが、スピーカーのセッティング状況やリスニングポジションでどのモードがどれだけ励起されるのかは複数回は正直計算しきれないので、
一般的にバランスの良い寸法比を採用するということしかしてこなかった。
stndwave2を使えば設置場所や寸法やリスニングポジションをちょいちょい変えても再計算してくれて精密なシミュレーションの計算が簡単にできる。
しかも定在波だけと思いきやコムフィルタ効果も計算してくれているようだ。アプリの名前的に正しくないがうれしい誤算ではある

今の部屋のシミュレーション

実測(チューニング前)

低域はそれなりにシミュレーションの追従性は良さそうだ。今の部屋もまあ寸法比は意識していたので定在波の特性は割と悪くないようだ。

これまでに何度か考察している仮想部屋は5.1×6.8×3.5mとしていたが、そんなに定在波の特性が良くない。
5.1×6.0×3.9mとすると定在波の特性はかなり良くなる。24畳部屋から21畳の部屋になったが天井高がさらに高くなってしまった。容積は121m^3から119m^3に少し減ってくれた。



それを元に仮想部屋の設計図を再構成



壁の部分は丸太のような半円柱を利用。



吸音部は立体的にしたり、機材部屋の一部を削り取って90cm厚の強力な吸音部を設定したりしている。
別に近日中の実現計画があるわけではないのだが、思考を巡らせるたび構想が変わるので
やはりチャンスが巡ってきたときから考え始めても納得いくものはできないと感じる。
構想はチャンスが来る前から練っておくべきと考えている。まあ一生チャンスが巡ってこない可能性が高いことも承知の上で趣味で構想を考えているだけなのだが。