青森でも三か月に一度はおふくろの顔を見に帰るのだが、市内のビジネスホテルの料金を見たら、なんとどんな古く安いホテルでも一万円はしていて驚いた。ねぶた祭りの時期でもあるまいし、別に、青森市は観光地でもないが、そこを拠点にして、外国人観光客が十和田湖八甲田、恐山と足を伸ばすようなのだ。温泉地や観光地はまた高いから、街中のビジネスホテルで我慢する。インバウンドはまだまだ続きそうで、青森駅前でもうろうろと外人の団体さんが大勢目につくから、地方都市でもいまはどこでも時期に関係なく混んでいる。それはいいことだが、ビジネスマンたちが出張で歩いていても、泊まりが高いから渋い顔をしていると新聞にも出ていた。わたしのような、ただ故郷に帰るだけの帰省者もとばっちりで、前に2500円で泊まった狭い部屋でさほど綺麗なところではないビジネスで一泊朝飯はつくが1万円となると、ぼられている感じがして泊まる気がしない。親戚や友人の家に泊まれば気を遣うし、なんとなくそれはしたくない。妹の家には前に初めて、一度だけ泊まったことはあるが、そこも門限があり、わたしのように夜中まで飲み歩くのは泊められないのだ。迷惑がかかるところには遠慮する。

 10月の初旬に、また大人の休日倶楽部のフリーパス五日間で、青森に帰るが、いつものように、行きはどこか行ったことのない東北の温泉に泊まって行こうと探す。あちこち行き尽くしたようでも、鄙びた温泉場でお勧めがネットに出たらチェックする。今回も、山形の赤湯温泉の宿をとった。掃除の仕事が終わって、そのまま山形新幹線で赤湯まで行く。その翌日は仙台に出て、東北新幹線で青森に入る。また北海道と東京の姉と妹と四人が揃って、おふくろの102歳の誕生日祝いにかけつける。妹は早めにホテルの予約をしてくれて、今回は野宿はしなくていいなと、メールで嬉し泣きのイラストを入れた。高いが、それでも仕方がない。

 いつもこのごろは青森に帰ると、ネカフェにばかり泊まっていた。そこは全国チェーンの大手だが、会員カードがあり、シニア割もあって、個室があればそこでベッドになるシートでごろんと寝る。ドリンクバーにソフトクリームもあるし、朝飯もつく。それはトーストとゆで卵だけだが、それとコーヒーがあれば十分だ。ナイトパックで申し込み、予約もいらないし、結構土曜日でも空いている。それで二千円もしないから安い。

 

 そのネットカフェを覚えたのが、出稼ぎで東京に出てきた十年前だった。それまでも2時間とかネカフェは青森で利用はしていた。休憩で寄る。スタバでコーヒーを飲むぐらいで、マッサージ機が使えてドリンクバーもある。DVDで映画を見たり、マンガ本は見ないが、図書館で借りた本は持参して読んだりする。500円くらいで休憩ができるので、古本屋の休みのときはよく利用した。

 東京に出てきたとき、小石川の四畳半のボロアパートの契約ですったもんだしてひと月も投げられた。その間、ネカフェを渡り歩いて、古本屋のおやじがネットカフェ難民になった。そのときにどこがどういう料金でサービスはと知ることになる。次に利用せざるをえなかったのが、海外放浪から帰国したとき、相方と二人で不動産屋を当たり、都内の賃貸マンションの契約をして入居するまでの二週間だった。埼玉までうろうろしてネカフェ巡りをした。

 

 いまは、旅行でもたまに使う。宿が高いし満室となると、ネカフェでもいいかと探す。フーテンのように高齢でも気にもしない。

 それか、スーパー銭湯で泊まれるところをネットで探す。結構24時間やっているところはある。リクライニングシートの休憩室で寝るのだが、毛布やテレビもついていて、リラックスできて温泉に入れる。それで秋田や長野、金沢でも泊まった。近くでは千葉や神奈川にもあり、2千円くらいからだから、カプセルホテルよりも安い。

 

 日本にはまだバックパッカー専用のゲストハウスがそんなにない。ユースホステルのようなドミトリーの相部屋で、二段ベッドの六人部屋などあればいい。外国ではそういう若者たちと一緒に泊まった。東欧では一泊800円くらいからあり、アジアでは一泊500円からあった。そういう安宿も空き家を利用してやればいい。外国人はみんな金持ちばかりではない。長期滞在の旅行者は、できるだけ滞在費を安く抑えたい。どうしてか、外国人にはぼるように高くする日本の観光業者はそのうちそっぽを向かれる。国際基準というものに照らし合わせて、日本は高いとなると、そのうち誰も来なくなる。食べるものも、そろそろ外人たちに呆れられ、ひと儲けしようとするのが見え見えで、そういう店から潰れてゆくだろう。