またまた共感できる本に出会った。知己に出会ったようで嬉しく、さっそく紹介したい。それは、『分散する生き方 多拠点ライフ』という一年近く前に出た新刊だ。著者はよくテレビで見るコメンテーターをしている石山アンジュさん。社会活動家とある。ご本人がシェアハウスで育ち、いろんな他人と暮らした経験から出てくる発想だろう。エコな生活からライフスタイルの提言をするという単なるわたしのような好みの問題ではなく、いまの社会が抱えている難題を解決できるのがこの本で提言していることで、読んでいて思わず拍手。

 よく言われるのが、セカンドステージとかサードステージということが叫ばれて、人は一か所でずっと暮らしてゆくのもいいが、あるときは逃げ場もいる。だいぶ前の雑誌に男の隠れ家というのもあり、わたしは憧れて読んでいた。会社と家庭の往復だけで、どこかにプライベートな書斎が欲しいと。わたしも長く書斎が欲しいと思っていた。それでアパートを借りたときはとてもそんな部屋など持てない。狭い空間だった。家を建てて自室はできたが、書斎ではなく夫婦の寝室。わたしの居場所、書斎は?と女房に聴いたら、あんたはトイレで本を読んでいて、トイレにいっぱい文庫本を並べているでしょ、そこが書斎じゃないの? と言われた。それではあまりにも可哀想。それで、わたしはいつしかアウトドア派になる。いまもわたしの部屋があっても、物置にされて、デスクと座る椅子の上までモノでいっぱいだ。居場所がないから、ノーパソと本を持って、外に出る。今日も、掃除の後に、駅前のガストに行って、モーニングとドリンクバーで読書。それはポイントで無料。それから駅ビルにこの前オープンしたマックでシェークでこれを書いている。そういう癖がついてしまっていた。

 

 セカンドハウスは贅沢で持てないが、これからはそんなに金がかからずに、全国あちこちに暮らせるという住まいのサブスクもあると本でいろいろと紹介している。実はかなり前から、わたしもチェックしていて、将来は利用したいと思っていたのが、ADDressという月額9800円からある全国270箇所以上の空き家を利用した簡易宿泊所のサブスクなのだ。初期費用なしで、旅行みたいにあちこち渡り歩ける。わたしのようなフーテンの寅さん大好きな移動ノマドスタイル向きの人間にとっては最高だ。そこには家具家電、食器も揃っていて、自由に使えて、共同生活を送れる。老若男女、様々な人がいるのは、ユースホステルのような雰囲気でいいだろう。旅行でもそういう若者たちと共同生活をするというのが好きで、友達もできるし、いろんな人と話せて、料理も作ってやって分け合える。

 子供の教育向けに、よく夏休みだけの里山体験と、滞在させる家がある。学校でも連れてゆく林間学校のような雰囲気で、子供たちに自然体験でふるさとのない子には動物や虫、収穫体験という勉強になる。Co-Satoという会員制の事業が全国展開している。

 他におてつたびという、農家で仕事をしてそこで暮らして旅もするというのはワーケーションとしても海外でもやられている。普段街にいては絶対にできないことだ。

 そういう空き家バンクのようなものも全国でいま進められて、都会でないと生きられないのではなく、地方が疲弊してゆき、地方消滅と言われているとき、それに逆行するような運動にもなる。それは普段は街で暮らして、田舎にセカンドステージを設けて、行ったり来たりすることなのだ。それによって交流も生まれ、若い働き手も季節労働者のように確保できて、地方も潤うという発想で、これからの都会への一極集中を分散されるという明るい将来を照らしている。

 

 実は、年内にまた青森に帰ろうかと、先日から、ずっと青森の賃貸情報を調べているが、平塚より安いところがぞろぞろと出てきて。地方都市は空き家ばかりで家賃が下がっていると、このブログで書いた。息子はわたしがいなくなるとまた精神的におかしくなると困るので、心の支えで、行ったり来たりするのだと話しているが、実際、佐藤春夫ではないが、都会の憂鬱もあれば田園の憂鬱もある。一長一短で、いいところはどちらにもある。わたしのように飽きやすいのは、ふらふらとあちこちに移動するのがいい。そのためにこれからの現代人は昔の別荘生活のように、最低二拠点で生活をするようになるというのだ。人口が増えすぎる都会は緩和され、人口減少の田舎は観光客ではなく、渡り鳥たちが増えるとそれはそれで商売も潤う。盆正月だけでなく、週末ごとに帰ってもいい。わたしの場合は二か月おきに、行ったり来たりしようかとか、真冬の雪と寒さは苦手なので、冬は湘南で、真夏は青森でと、気軽に行ったり来たりしようと思う。いまは大人の休日倶楽部では新幹線でも青森までは1万円少しで行く。夜行バスで行くと4500円の早割りもある。おふくろもまだまだ生きそうだから、青森に住民票を移すことも考えている。青森市営の霊園も10年間青森市に税金を納めていないと駄目だとか。それは従妹に名義を移してもいいのだが、青森市民から出稼ぎで関東に出て10年。関東生活も飽きてきた。そろそろまた海外旅行も長く行きたいし、自由に羽ばたきたい。地球にも飽きたら、次はあの世かな。

 

 石山アンジュさんという自由闊達な生き方をしている人の本は素晴らしい。小さな世界で細かいことに悩んでいる人たちには必読と勧めたい。