JRではみどりの窓口を縮小する方向だと発表していたのを撤回した。それは困ると反論が出たからだろう。考えてみたら、銀行もATMで足りるし、ネットバンキングでいい。有人の窓口や支店はなくても困らない。わたしも銀行に行くことはほとんどない。コンビニのATMが平日の昼間なら三菱もみずほも手数料はかからないから、そこでおろしたり、入金したりしている。わざわざ平塚駅前の銀行支店まで行くことはない。

 役所も次第にそういう市民課の窓口で出す住民票などもコンビニの複合機で出せるようになり、マイナカードはそのために普及させたいところだろう。あらゆるものがネットになり、人が対応しなくなる時代だから、みどりの窓口もそうなるのだろう。ところが、老人たちが困る。ネットなんかやらんわい、マイネカードってまいねんだべと、津軽弁で、まいねは駄目だということで、老人たちには意味不明。ちゃんと人が対応してくれないと。

 

 平塚駅のみどりの窓口は二人の職員さんしかいない。暇なときは一人でやりくりしている。それでもずらりと並ぶ。並んでいるのはみんな年寄りばかり。わたしも年寄りだが、そういう負担軽減はさせたいと、えきねっとでやれば千円安くしますというので、それではとえきねっとのアプリをダウンロードして、スマホから大人の休日倶楽部のフリーパスを予約購入した。そうすれば、19800円が18800円になるという。ところで、いつ値上げしたものか。前は大人のの休日倶楽部のフリー切符は15000円くらいでなかったか。それが値上げしていた。しかも、いままでは四日間使えたのが、五日間になっていた。長くしても、わたしの場合は仕事もあるから、木曜日も掃除の仕事を午前にして、それからそのまま旅に出るが、日曜日までの四日間しか使えない。月曜日の朝からまた仕事なのだ。三泊四日の国内旅行はできる。

 それで、すべてネットでできるのかと思ったら、まだそこまでは行かないのだ。えきねっとは予約とクレカの支払いだけで、切符は駅の券売機で受け取らないといけないのだ。なんだ、完全ではない。まだどこかデジタルとアナログが同居して、すっかりと移行していないのだ。てっきりと、定期券やPASMOのように、スマホでピッと改札口を出たり入ったりできるものと思っていた。そこまでは行っていないのは残念だ。それでもみどりの窓口は通さなくてもいいので、仕事が終わった午後に、駅の券売機に大人の休日倶楽部のビューカードのクレカを入れて、フリーパスを出せたが、それは違うのだ。ただの予約券なのだ。改札口は通れない。それで、指定席を取ろうと、カードを入れて新幹線の指定をとろうとしたら、5500円ぐらい支払えと出たので、それはおかしい、大人の休日倶楽部のフリーパスは指定券も特急券も五回までは無料だろう。どうなっているのか、わたしの操作が悪いのかとそこでストップ。これは老人はできない。

 仕方なく、そこで隣のみどりの窓口に並んだ。高齢者ばかりでもないが、10人くらいが椅子に座る。職員の女性が一人発券していた。その前のじいさんとばあさん二人が長い。じいさんだけで20分以上かかる。自分の乗りたい電車ぐらい時刻表で見て、メモしてきたらいいのに、そうではなく、京都に何時ころに着きたいが、途中、熱海で用事があり、午後の何時ころの新幹線はないのかと聴いていた。東海道新幹線は自由席があるし、平日なら満席ではないから、いつでも乗れるだろう。券売機で買えよとイライラして待っていた。そのうち、指定席はあるが、窓際がいいか通路側がいいかと聴かれて迷う。即答即決ができない。なんで何時間も乗らない新幹線で席に悩むのだ。早くしろと心の中で叫んでいたのはわたしだけではない。後ろに続く人もそういう目をじいさんに向けている。老人は仕方がないのだ。わたしもそのうちそういう認知も出るとそうなる。

 ばあさんも次に控えて、それも同じ。どうしようかと悩む。どこでもいいだろう。隣の中年男性の貧乏ゆすりが移る。なんでも自分で決められず優柔不断は年のせいか。それでは全自動でネットでどうぞとはできない。それができない老人たちは切符も買えない。やはりみどりの窓口はなくせないのだ。

 わたしの番になる。1時間かかっていた。こっちは暇だからいいいが、用事のある人は1時間も並んで待つと時計ばかり気になる。わたしはネットで電車の時刻を調べてちゃんとメモしてきた。2分とかからないで発券してくれた。行きと帰りの新幹線の指定だけだが、東北新幹線は全席指定なのだ。自由席がないから、取らないと乗れない。席はどうしますか?どこでもいいですよ。

 

 六月末にフリーパスで青森まで行くのだが、いつものようにその前に、温泉二つに泊まり歩く。最初の一日は土浦の友達に会いにゆく。駅前の温泉付きのホテルを予約した。その翌日は、勿来の関所を見て、そこの勿来温泉関の湯にも日帰りで入りたいと安くなるクーポンをネットで取った。それと海水浴場で泳ごう。福島のいわき湯本駅近くのホテルがとれた。湯本でもホテルと別で広い日帰り温泉があるとこに入るので、一日四回もあちこちの違った温泉のはしごをする。どうしてか青森のホテルはどこも何倍もして高くなったのに、福島はインバウンドではないのか。空室もあり値段も安い。先にホテルをとって、それから切符だった。行きは座席未指定券のある特急ひたちなどはいつでもどこでも乗れるから、指定はとらない。湯本からは一関まで出て、そこから東北新幹線二つ乗り換えてゆく。仙台止まりで行って、新青森駅までの新幹線に。帰りはまっすぐ青森から東京駅までだ。空いていると思うが、修学旅行や団体が入って、席がないときもある。

 

 実際、みどりの窓口に並ぶ老人たちはみんな手に手に大人の休日倶楽部の切符を持っていた。その期間は全車両、ほとんどがミドルからシニアばかりで、こぞって大人の休日倶楽部なのだ。高齢者だけでなく中年も多い。おじさんよりおばさんたちが多い。大人の修学旅行なのだ。毎年何回かその発売期間と使用期間があり、姉たちも必ずその切符を買って青森に帰る。わたしもたまたま木曜日の午後から日曜に帰ってくる期間に当てたら、姉たちと一緒になる。月末の土曜日の2時前に、東京の姉と北海道の姉とわたしが駅で揃うことになる。青森にいる妹が車で迎えにくる手筈になっていた。それで四人姉弟妹がまた揃う。墓参りに行って、102歳のおふくろの施設に会いにゆく。わたしは青森では泊まるホテルがばか高いので、ネットカフェの個室にいつも泊まる。二千円くらいでシャワールームもあるしドリンクバーから漫画喫茶だから、映画からなんでも見られる。それで泊まれるので気楽でいい。翌日の日曜に帰るが、姉たち女三人はいつものように、どこか温泉旅館に泊まるようだ。妹がその手配は毎度していた。女三人だから姦しい。

 

 切符はとれたから安心だ。これからも毎月どこかに旅に出る。東日本は行きつくしたので、今度は関西に行こうか。息子はせっかく旅行するなら能登半島もどうかと言っていた。そこで金を落としたほうが現地のためになると。だけどいまだインフラが整備されていない復興中のところにのこのこと出かけて観光もない。ご迷惑だろう。それは落ち着いてからでいい。若いときは能登半島は一周した。金沢は四回も行った。富山には旅行会社の出張所の所長で単身赴任していた。

 ただの温泉巡りならそれでもいいが、目的のある旅もいい。去年は高村智恵子を訪ねる旅で安達太良山の岳温泉に泊まりに行った。いつも文学とは切れない。見たり聴いたり湯に入り、よしんば海で泳ぎたい。

 旅の気分はみどりの窓口からもう始まっている。