老後は趣味があったらいいと言われる。仕事ばかりして、いきなり空白の老後生活に投げ出される。何も趣味もなかったら、何をしていいのか分からない。時間だけが有り余る。家にいたら、邪魔な粗大ごみ扱いで、外に出るが居場所がない。そういう定年退職したお父さんの如何に多いことか。定年後の趣味の見つけ方とか、大学院に入るとか、第二ステージの再就職とか、いろんな本も出ている。

 その点、わたしの場合は多趣味で困らない。いっぱいあって、へたの横好き、ひとつもものになっていない。若いときからずっと続けているものばかりで、それが半世紀以上どころか高校生のときからのものが多いのだから、もう七十をとっくに過ぎたじいさんでも、いまだにやっているのは習慣だろうか。

 そのひとつがマリンスポーツだ。海が好きなのは子供のときからで、青森は三方が海で囲まれて、夏は短いが、子供のときから水中眼鏡をつけて潜っては貝を獲ったりしていた。高校のときは水泳部。大学では名門のヨット部に入部申し込みしようとしたら、一年は留年覚悟で葉山の合宿場に詰めると言われて諦めた。そこまではしたくない。

 それで、従兄がお茶の水の大手スポーツ用品店に勤務していたので、そこでウエットスーツを合わせて作り、学生のときから伊豆や九州まで足を伸ばしてシュノーケリングをしていた。当時コダックで出したコンパクトカメラに防水ケースがついた水中カメラも買って、海の中で写真も撮っていた。いまだに、それは続いていて、湘南に越してきたのは、それが目的だった。マリンスポーツでは他にシーカヤックと簡単な一人用のヨットも持っていて、青森にいたときは浅虫に家を建て、そこで休みのたびにやっていた。いまは、平塚に来て、ショートボードを中古で2980円で買った。それとサップも買ってたまにやる。波のひどいときはできないので、天気次第だ。

 運動は肥満解消と健康のためにやるが、若いときは合気道に通い、子供たちも連れて行ったが、ジムにも通い、トレーニングは最近までしていた。千葉にいたときと平塚でも市営で安いから、一回200円でマシンが何十と並ぶトレーニングセンターで鍛えている。それと、こちらに来て太極拳も始めて三年だ。それがいまは面白くてのめりこむ。禅と似たポーズもあるしヨガと共通するところ、合気道や古武術との共通点もあり、よく考えられていると感心する。

 

 カメラは若いときから、親父が暗室まで持っていたが、ニコンSの戦後の名機をもらい、それで学生時代は撮っていたが、デジカメも何台取り替えたか。いまは面倒くさいので一眼レフのようなカメラは持たないで、スマホで毎日撮りまくり、ブログと詩に添えている。

 そのブログも毎日更新し、詩も毎日書いているが、ブログはここ20年のものだが、日記は高校生のときから欠かさず書いてきたので、そのノートがいっぱいあった。それらはすべてスキャンしてSDカードに保存した。詩も毎日一遍だから、10年で3650編になるが、それを40年以上続けている。何万という詩を書いてきても、その中でいいのが何編もないと言われるのは駄詩ばかりなのだ。ものにならない。それでもいままで四回は賞ももらった。高校生のときは高校生新聞という全国紙に選ばれたことがあるし、姉の女学生の友の月刊誌に投稿して入選し、賞金ももらう。そのときは女性の名前で出したが、住所が書かれる時代で、何十通という文通申し込みの手紙が男子から殺到して困った。

 小説も下手だがたまに書いている。青森のペンクラブや同人の文ノ楽という年に一回の発行だが、それに書いたりしている。新人という年ではないが、何年か前まではあちこちの新人賞にも出して、いままで何十回と落選したことか。

 

 旅行好きはそれも若いときからで、いまでもバタバタとしている。国内海外問わず、バックパッカーで行きたがるのは病気だ。それに温泉も入る。関東の温泉、国内の温泉の主だったところはかなり入った。海外でも温泉というと必ず入った。いまは周辺のスーパー銭湯巡りだが、関東は行きつくした。

 

 料理も好きで、パンとお菓子も作る。それはパン屋で若いときに働いていたことと、ケーキ屋の息子であったので、工場には若いときから手伝わされていた。レストランも喫茶店もやっていたが、厨房にも入りメニューの組み立てから原価計算もした。それは仕事であったが、いまも毎日のように作っては孫と息子に食べさせる。昨日は豆腐とラムレーズンのケーキを焼いたら好評で残りわずか。パンも手作りでオリジナルで様々なものを焼いた。料理も面倒くさがらず、最近ではYouTubeのクックパッドを見ては、これを作ろうとすぐに実行する。スマホのメモ帖にメモして後日作ろうというのもいっぱいレシピが入っている。

 

 音楽の趣味もあるが、楽器もいろいろとやってみて、どれも才能がなく、続かない。それでリスナーに廻る。いまも気に入った歌や曲は録音してライブラリーに入れる。イヤホンも買ったので、いま、マックでこれを書いているが、書きながらクラシック音楽を聴いている。シャカタクも久しぶりに二枚組のヒットメロディを聴いた。

 

 趣味は音楽鑑賞と読書ですと言うのは平凡だが、わたしの場合は徹底する。音楽も学生時代からレコード千枚、食べないでも買いまくり、社会に出たらCD三千枚集めた。いまはみんな売り払い、microSDカードにすべて保存した。本も好きで古書マニアであったのが生活のために古本屋になり、すべて蔵書は店で売ったが、一万五千冊からスタートした。いまは図書館で借りてきて読んでいるが、手あたり次第だ。

 

 それと最後の趣味は散歩で、よく歩く。いまは自転車が多くなるが、それは孫の迎えがあるからで、それまではどこまでもよく歩いた。一日目標は15000歩だ。それは歩きすぎるとネットに書かれていた。平塚から大磯と茅ヶ崎までは隣町なのでよく歩いた。そのうち東海道の旧道も歩いてみたいし、葉山から小田原までの湘南海岸を歩いてみたい。健康と老後の暇つぶしなのだが、老後になると逆に忙しい。多趣味でもどれも人並み以下で、それだから芸は身を助けることもなく、パチンコをしたりゲームをしたりするのと変わらないただの遊びには違いない。