ものより体験というだいぶ前の車の宣伝にもあった。子供たちには何か買って与えるよりは、そのお金で体験させたほうが勉強にはなる。いまの親はなんでも欲しいというとすぐに買い与えて終わり。それだから、ゲームでもネット機器でも部屋に閉じこもって遊んでるものばかりで、不健康の助長だ。そういう子供の傾向は全国的で、外で遊ばなくなったのは太陽光線も浴びないので健康にも悪い。青白いもやしばかりになる。

 平塚のピーチに行っても、海水浴シーズンでも人はまばらで、母親たちも肌が焼けるのを嫌って子供たちを海に連れてゆかない。若者の姿が少ない。いまどきはアウトドアよりインドアが増えたといい、スキー場もがらがらで、悲鳴をあげている。海水浴場はわたしはよく廻るが、そこも昔ほどではない。前は鎌倉の由比ガ浜や江の島の片瀬海岸などはシートを敷く場所もないくらい、人でいっぱいだった。それがいまは余裕で場所の確保も心配ない。プールはどうかと見たら、そこも昔ほどではない。芋洗い状態のときが懐かしい。

 親もそうだから、子供もそうで、親からして面倒くさがり、せいぜいがディズニーやどこかの遊園地。最近になってキャンプブームが起きて、あちこちにテントが張られ、山や海のキャンプ場は流行っているが、グランピングというものもあちこちにあり、それはわたしに言わせたらキャンプの恰好をした野外ホテルなのだ。手ぶらでゆけるが、サウナからバーベキューまで用意されている。テントの中はホテル並みの設備。それがキャンプと呼べるのか。

 

 なんとなく自然と親しむこともなく、山歩きを見ていたら高齢者が多い。若者たちはどこに行ったとなる。日曜日など、電車の中はおばさんたちから元気な高齢者たちがポールを手にリュックを背負い、ハイキングスタイルでグループで山歩きの人たちでいっぱいになる。

 

 息子たちには、わたしもそういうアウトドアの体験はさせてきた。サイクリングも北海道に二回連れて行った。いま一緒に暮らしている三男が小学二年生のときで、兄も中学生のときだ。恵山まで函館から往復して、海から離れた砂浜にテントを張ったら、満潮になり、翌朝、足元が冷たいと目覚めたらなんとテントが海の中。慌ててみんなを起こして、津軽海峡に流されるところだった。鍋や西瓜がぷかぷかと浮かんでいた。

 夏休みが多いが、道南サイクリングはその翌年だ。室蘭まで青森からフェリーで行って、そこから昭和新山、洞爺湖、支笏湖、苫小牧と四泊のキャンプに三人の息子をサイクリングに連れてゆく。キタキツネも出てきたり、熊とは遭遇しなかったが、そういうキャンプは毎年したし、東北は行き尽くした。なんでも体験がいいと、連れまわす。

 わたしにそういう体験をさせてもらったのに、息子三人はインドア派。三男もキャンプ用具は揃えて、いまわたしの書斎にあるのに、この半年でも一度もみんなで行っていない。

 孫にはそういう体験をこれからさせてやりたいと、そこはじじの出番なのだ。息子たちは仕事で忙しすぎる。とても家庭サービスの時間がない。四歳児の孫は男の子だから、鍛え甲斐がある。冒険だ、探検だというと喜ぶ。去年は秋から、近くの山に連れて行って、虫籠と虫取り網を買ってやり、それでバッタなどを獲った。息子は虫が嫌いで、バッタも捕まえられない。怖がりなのだ。虫の獲り方も知らない。そこはわたしが教えていないからだ。

 

 孫はこれから、いろんなところに連れてゆきたい。遊園地もいいが、これからの夏はボードを持って海だろう。熱海のマリンスパは温泉とプールもあるし、出たところには人工の浜があり、チビたちが泳げて安心だ。それからお隣の大磯ロングビーチにも連れてゆきたい。温泉もあるがなにより巨大な長いプールが喜ぶだろう。真鶴岬も磯遊びで、水族館でしか見たことのないイソギンチャクや蟹や貝や小魚をとってやろう。三浦半島も日帰りで一周できる。伊豆半島は車だろうか。

  先日はパパも休みの平日に、孫は保育園を休ませて、たまに三人で遊ぼうと、辻堂海岸に案内した。ららぽーとなどのショッピングばかりでは飽きる。孫は一週間どこにも連れて行ってもらえない。部屋にばかりいた。それでは発散できないだろうと、これからは日曜は両親共に仕事があるから、じじが面倒を見ることにした。辻堂は駅二つ横浜寄りで、車なら何十分もかからない。そこにわたしのお気に入りの海浜公園がある。湘南の雰囲気があり、広くよく造られている公園で気持ちがいい。南国ムードいっぱいでヤシの木やソテツがグリーンと池の中にある。そこに交通公園があり、チビたちの遊び場で200円くらいで乗り物に乗れる。パパとペダルを漕いで宇宙船のようなスカイサイクルに乗って一周。わたしは写真とビデオを撮る。夏になるとジャンボプールもある。そこから海岸に出ると砂浜。茅ヶ崎は隣なので、烏帽子岩が見えて、すぐに江の島が見える。孫に面白い石と貝殻を拾わせる。これは宝ものだと。暑くなったら泳ぎに連れて来よう。

 今年は孫に泳ぎも教えたい。海と水を怖がることなく、泳げれば、水難事故もなく助かるときもある。災害のときでも生き延びる方法も教えるにはキャンプがいい。そういうサバイバルの方法もボーイスカウトのように教えたい。いま、そういう本もいろいろと図書館から借りてきて、災害時の過ごし方とか、キャンプなどの本は参考になる。ネットでもそういう情報ばかり見ている。

 単に遊びではなく、これから何が起こるか分からない自然災害が増えるから、そのときに、防災グッズでわたしも揃えているが、それで生きてゆける訓練をキャンプで教えたい。