旅行は準備からもう始まっている。旅支度というのは慣れているが、次第にいいものが出てきて、だんだんと便利にはなってくる。海外旅行では、飛行機に持ち込めないリストがあるので、それを厳守しないと、持ち物検査で没収される。液体のものは100cc以上はダメで、わたしは小さなプラの容器を百円ショップで買って、それにいろいろと詰めて、化粧品入れのビニールケースにまとめて入れておく。それにはちゃんとサインペンで中身を書いておく。ひとつは歯磨き、短期間の旅行では一週間分あればいい。できるだけ荷物を少なく軽くするために、工夫をする。わたしの泊まる安いホテルからは、英文でお読みくださいと確認事項が来た。それを読むと、アメニティは何も部屋にはありませんと言う。一泊1200円だから、それは当然だ。だから、全部少しずつ容器に詰めて持ってゆく。わたしは毎朝、かかとが歩くので割れる。そこに尿素クリームを塗っている。爪も割れるのでワセリンを塗る。それらを小さなケースに詰める。歯磨きも詰める。シャンプーやリンス、ボディソープ、洗顔クリームというのは女性ならいるだろうが、じじいはいらない。薬用石鹸ひとつあればいい。それで顔を洗い髭も剃る。髪もそれで洗い、体も洗い、どうせシャワーだけだから、石鹸ひとつでなんでも済ませる。さらに石鹸で洗濯もする。洗剤なんか、「この白い粉はなんだ?」と問い詰められると面倒くさい。石鹸なら固形なので、ひとつあれば足りる。

わたしの親戚に近畿ツーリストにいた人がいた。彼から聴いたのが、添乗員で何日も帰れなかったら、ホテルで用意している使い捨ての歯ブラシはいろんな使い方があるというのだ。まずは歯を磨く、終わったら、ヘアブラシの代わりに髪を整える。それが終わると、上着をブラッシングして、最後は靴を磨く。一本でいくつもの使い方がある。わたしはそれを実行している。

 

やたらと大きなスーツケースになんだかんだと入れて、たった一週間で何を持ってゆくのかと思うほど荷物が多い人がいる。それをがらがら引いて行くのか。ツアーならバスで移動だから楽かもしれないが、一人旅では、街中や移動のときに、大きなスーツケースは邪魔だ。階段や石畳、エレベーターもない駅ではどうするのか。エスカレーターもみんなあるわけではない。それより、背中に背負うバックパックひとつでいい。両手を空けておいて、歩きやすくする。

着替えなんか一組でいい。ホテルの部屋で毎晩洗って、エアコンの近くに干す。それを毎日やる。部屋に入ったら、真っ先にやるのは下着と靴下の洗濯だ。上着とズボンなんかは期間中は着たまま。わたしの場合はボロボロの服を着ていって、下着も靴下も穴の空いたもの。それらをみんなホテルのゴミ箱に捨てて、現地で安い服を買って着替える。それが自分の土産になる。韓国ではスニーカーも買って、履き替えた。デザインが日本にはないものだった。インドでは珍しいラクダの革の靴を買って履いてきた。

今回の中国では上から下まで、太極拳グッズの専門店をチェックしてきたので、帰る日にそこで全部履き替えてくる。ついで剣の布ケースも買ってくる。


コンセントの口はA.B.…タイプといろいろと国によっては違うが、どこの国でも使える差し込みの形が五つ取り替えられるものと、変圧器も買って持っているが、変圧器が重い。ひとつで500gはありそうだ。今回はネットで調べたら、スマホもタブレットも充電コンセントが100Vから230Vとどれもいまは書いている。昔は100Vだけで、海外では使えない国が多かったので変圧器が必要だった。いまはそのまま差し込み口を変えるだけでコンセントに差し込めるとあった。よかった。これで荷物が少しまた軽くなる。思えば、スマホもタブレットも中国製で、向こうで使えないはずがない。


土産なんかあまり買わないが、空港の売店でも前は酒とタバコぐらいが免税店で安いから買ったが、いまは酒もタバコもやらないし、息子もやらない。小さな軽く薄い荷物にならない記念品ぐらいは買う。

旅行ガイドブックも地球の歩き方の本を買ったが、それとて、まずは表紙を破る。グルメや土産物、ホテル、アミューズメントなどのわたしに必要のないページはすべて破り捨てる。本も重いので、そうして三分の一くらいに見るも無残な姿になる。ガイドブックを片手に歩いていると、さも観光客ですと、カモ扱いにされるので、必要なページだけ破ってポケットに入れて見るようにする。


MicroSDカードは予備で持つ。向こうでも安く売っているだろうが、小さいから、動画や画像がいっぱいになりましたと、空きがなくなれば困るので、それは持ってゆく。現地で売っているものは極力持って行かない。向こうで買えばいい。円安で高いときはこちらで買ってゆく。

 

クレカがあれば、ATMから現地通貨が出て、キャッシングになるが、リボ払いにしないと、手数料は2%ぐらいと安い。これが日本で両替すると高いところは10%も取られる。一番安いのは現地の銀行か両替商。闇では偽札を掴まされるので、替えても、スモールマネーにしたらいい。高額紙幣が危ないし、どこでも支払いに難色を示す。フィリピンに行ったときは、日本の紙幣は銀行ではチェンジできなかった。やはりクレカが一番便利だが、古い機械では対応していなかったり、カード会社でできなかったりする。VISAとマスターカードは使える。それでもいろんな小さな国に行けば、あちこちショッピングセンターのATMに入れても使えなかったら、焦る。顔が青ざめてくる。いくつもの店を周り、新しい機械で試したら出てきてほっとしたことがある。


バックパッカーは旅が生活なので、最低必要な生活用具は持ち歩く。それも小さく壊れにくく、軽い折りたたみのやつとか、そういうスプンとフォークセットなどがアウトドア用品で売っている。刃物は空港で取り上げられるから、持ち込めないので、現地の百円ショップで買えばいい。缶切りと小さなナイフなどがついた十徳というのがあるが、それも現地の1ユーロショップとか1ドル、10元ショップで売っている。それはあれば便利で、果実など部屋で食べるときに剥けるしフォークもついている。折りたたみの小さなプラのトレーもあればいい。晩飯は外食しないし、スーパーや市場で買った食材をホテルの部屋で食べるので、そういう簡易食器もあればいい。

なんだかんだと持ってゆかないで、逆にこれはいらないと切り捨てて、持ち物はできるだけ少なくなる。それは旅行だけでなく災害のときの知恵でもある。防災バッグにはそういう生活に最低必要不可欠のものだけ詰めて逃げるので、たまにしか使わないものはいらないのだ。ロマのように移動する生活では、人間が生きるために何が必要で何がいらないか考えさせられる。