火事があれば、亡くなった人の年齢を見る。高齢者が多い。すると、アパートを貸している大家は、ますます高齢者は入居させられないと思う。実際に、わたしが青森にいたとき、浅虫温泉の家を売ったら、住むところがなくなったが、それは市内まで30分車でかかるのと、買い物難民と病院難民になった年寄りの両親のためであった。若いときは、海と山に囲まれて、温泉のあるという風光明媚なところでのびのびと暮らしたいと思って、そこに土地を買ったのだが、まさか、みんな年とる後のことまでは想像していなかった。バスと電車にも乗れなくなると、誰が病院まで連れてゆくのだ。内科、外科、眼科、耳鼻科と連れてゆくところが多い。二日に一度は病院通いだが、それも市街なので、送り迎えがある。こっちは古本屋の仕事がある。それで、市内の賃貸マンションを借りるに、不動産屋に行ったが、高齢者はダメだと断られた。それで、わたしが女房子どもたちと別居することで、両親と同居するということで、ようやく古本屋に近いところにマンションが借りられた。浅虫温泉では、バスはあるが、それも杖をついては乗れない。電車も同じ。駅の階段はどうするのか。タクシーなら市街まで4千円だ。

 

 そういうことがあってから、親父が他界し、おふくろが施設に入り、わたしが今度は出稼ぎで60歳過ぎてから上京したが、最初の小石川のボロアパートは古本屋の会社の契約で、事務所兼倉庫にするというので貸してくれたが、そこから引っ越したときは、断られた。たまたま同棲する一回り年下の女性と出会い、二人で暮らすということで、目黒区や千代田区の賃貸マンションが借りられたが、わたしも65歳過ぎて、世間では高齢者、一人では貸してくれなかった。連れがいたから借りられた。

 それでも連れと別れて、またシングルアゲインで一人暮らしと、千葉に引っ越したときは、そこは別に高齢者どうのと言わず古い首吊り自殺したいわくつきのアパートだったが、貸してくれた。三軒のうち二軒だけ年齢で断られたが、入居できたのは、仕事をしていて、元気だったからだ。不動産屋が家主と電話で話していたら、元気な方で、勤め人ですと、そう話してオーケーになった。そこから翌年にいまの湘南に越してきたのだが、わたしは70歳になろうとしていた。もうそろそろヤバイかなと思っていたが、いまは空き室も多く、古い物件なら年齢関係なく貸してくれて、年のことは言わなかった。その代わり、千葉でもそうだったが、見守り保険みたいな、連絡すればすぐに駆けつける全国どこにでもある高齢者のための団体があって、そこに年会費を払って加入はさせられた。いまはそういうのがある。セコムなんかもやっているが、動態感知器みたいなものを部屋に設置して、高齢者の一人暮らしを24時間体制で見守るというのを子どもらが同居していない離れた老親のためにやっているところもある。

 湘南ではそれはなかったが、ともかく70歳は過ぎても入れたが、みんなよく入れたねと言う。だいたいは断られるという。孤独死もあるし、死んだら腐って畳も床も落ちたり、臭いもすごいので、部屋の内装はすべて取り替えないといけなくなる。大がかりな補修もいる。それで年寄りは入れたがらない。わたしもそろそろかなと思う。勤めていればまだしも、年金暮らしで病院通いはまずい。それでどうするか。この先はあちこちで断られ、住むところがなくなる。

 そこで見つけたのがアドレスという月額9800円からできる、空き家やシェアハウス、ホテルが利用できる住まいのサブスクだ。定額で利用できるが、長期滞在はできないで、一週間か二週間滞在したら、全国各地にあるので旅行者のように移動して歩ける。いろんな人と出会いもあるし、一人住まいではなく、旅人たちと同居生活なので、楽しいかもしれない。わたしのようにあちこち引っ越したい人にはうってつけで、月に4万円あれば、移動生活が可能なのだ。

 それと似たものが、中古でキャンピングカーを買って、そこで移動生活をすること。それも年取って、運転が怪しくなったら終わりだが、事故がなければ、それも高齢者の住まいとしては狭くても快適かもしれない。わたしはそれをしたいとキャンピングカーの展示会にも行ったし、ネットで見たりしている。

 

 他には、安いビジネスホテルも使える。ホテル住まいの人もいるし、なにより入居保証金とか契約とか、保険とか面倒なものがない。年齢関係なく、ホテルなら誰でも泊まれる。しかも、観光地でもない地方の小さなビジネスホテルなら、一泊2千円くらいからある。月に6万円で暮らせる。光熱費もWi-Fiもいらないし、風呂も毎日入れる。それで朝食が簡単についているところもある。掃除もいらないし、ランドリーもある。フロントでは電話受付もしてくれる。高齢者はそういうところも暮らせると思った。

 いまは円安で大変だが、そういうホテル住まいは東南アジアなら安く、一泊500円からある。汚い古い部屋でもシャワールームがついて、月に2万円もしないで生活ができる。老人ホームに入るよりずっと安い。外の屋台で飯を喰っても、国によるが、百円くらいでいっぱい喰えた。物価の安い安全な国を移動して歩くが、パスポートだけでは三か月、それで出たり入ったりすればいい。

 

 そういうロマのような移動生活は憧れる。毎日が旅なのだ。だけど、何をしても健康一番で、まずは医者の世話にならず、薬は何か月分かもらって持ち歩いてもいいが、持病がないのに越したことはない。それで健康なら、老後の一人暮らしもいろいろとやり方はあるのだ。

 高齢者になると住むところがない。いまはNPO法人で、シェアハウスでみんなを住ませているところもある。一人なら断られるが、老人たちが集まれば、ちょっとしたグループホームみたいに暮らせて、それがNPO法人で管理すれば、使わないアパートや空き家の活用になる。若者たちもシェアハウスには入っていたりするが、寂しくはない。みんなと共同生活で、風呂もトイレも共同で居間も台所も冷蔵庫と洗濯機も共同。食べ物も分け合って、いろんな人たちと話ができる。なにより寝袋かスリーピングシーツと着替えと身の周りのものだけあれば、家具家電付きで食器などもあるので自炊ができて、トランクひとつで引っ越してこれる。余分な引っ越し代もかからないし、生活道具も最低必要なものでいい。老人ホームに入るより金はかからないし、楽しいではないか。そんなアパートに宮古島に行ったときは広い部屋に一人四日も台風で足止めで連泊した。そこで自炊して飛行機が飛ぶのを待ったが、一泊1800円だった。 

 

 わたしのおふくろは、老人マンションなんかでは暮らせないと、わたしにも入るなよと話している。退屈で孤独でいいことなんかないと。老後の居場所はこれからの全員が考えないといけないことだ。それはすぐやってくる。国もまたいい生活の場として孤独死を防ぐために何かいい姥捨て家のシェアルームの方法を考えないといけない。