掃除の仕事を四月いっぱいで辞めると連絡したら、縛られるものがなくなる。それと、コロナも落ち着いて、海外渡航が自由に行けるようになった。円安だが、短期間なら、そんなに気にすることはない。いまは、海外旅行も減ったらしく、日本からだけでなく、中国からも前のように入ってこない。インバウンドという言葉も下火になったか。そんなときに、ネットの旅行会社のサイトから、格安航空券の案内が来る。それを見たら、いまは燃料サーチャージはもうかからないのだとか。サイトによると、安いと総額を出させたら、倍の料金になったりしているところがある。それは詐欺に近い。三千円ぽっきりよと、呼び込みでピンサロに入ったら、出るときは何倍もふんだくられたというボルのと同じではないのか。わたしが見た大手のサイトでは、掛値なしで、そのままというから、どこに行こうかと、また旅の病が疼く。

 そんなに長期は行けないから、せいぜいが一週間から十日。それも近場でないといけない。一度行ったところは二度と行かない鉄則があり、どうせ行くなら、初めてのところがいいと、前から行ってみたかった上海が出てきた。中国の航空会社で、前に一度乗ったことがある。どうせ、三時間ぐらいで行くから、サービスもへったくれもない。日にちで料金は変わるから、安い曜日で探したら、往復で羽田から上海まで37000円と出た。曜日で50000円以上になったりする。五月の半ばの一週間の往復を衝動的にチケットを買った。平塚から羽田は近いが、成田は遠い。前にはジェットスターなどで飛んだが、成田までの往復の電車賃もかかるのだ。それで羽田空港からの利用便を探した。

 まだ一度も更新してから使用していないパスポートを出してきた。10年ものだが、それを更新したのが4年前で、すでに半分が使わないで過ぎていた。それもコロナで行けなくなったからだ。

 そのころは相方と暮らしていた東京にいたときで、二人でコロナが始まる前のことで、チェコのプラハ往復で二人で16万の航空券をクレカで購入した。前に東欧に行ったとき、財布をすられてすってんてんになり、三か月もしないで帰国したので、その続きをしようと、チェコからオーストリア、ドイツ、ポーランド、ウクライナ、ロシア、バルト三国とフィンランドと20カ国ぐらい回る予定でいた。その前に、豪華客船で、韓国の釜山まで長崎にも寄る十日のクルージングも申し込んでいた。それがその年の二月のダイヤモンドプリンセス号のコロナから、すべての渡航が禁止になった。そのときに、わたしは相方と別居して、千葉に引っ越した。

 東欧以来、海外には行っていない。フラストレーションは溜まる一方で、まさか、ロシアとウクライナの戦争も起こるとは思わなかった。円安もあり、しばらくは静かにしていようと思っていた。

 

 中国は四回行っていた。北京と広州、香港は二回。それでも上海は行ったことがない。近代的な東京のようなマンモス都市は見たくはないが、できれば、芥川龍之介が行った時代の面影があれば、探して見たい。内山書店のあった街区もきっとがらりと変わって、面影はないかもしれないが、古い上海の歴史が残されていれば見てみたい。歴史的建造物と美術館、博物館巡りか。ついでに魯迅の墓参りもしてこよう。それと、国内航空でマカオは行ったことがないので、その飛行機も片道1万円くらいと安いので、上海から飛ぼう。それでポルトガル時代のレンガ色の歴史的建造物を見てみたい。歴史にしか興味はなく、カジノやショッピングもグルメもどうでもいい。それと文学散歩か。ついでだから、マカオから香港までフェリーで1時間というから、まだイギリスから返還される前の香港に最後に行ったのが昭和56年だから、いまはどう変わったのか見たい。民主化の弾圧でデモも終わり、不景気の香港も見てみたいと、一泊で歩いてみよう。そこから上海まで新幹線で戻ればいい。

 

 泊まりはアゴダで調べたら、安宿でも綺麗なシングルの部屋が一泊1200円からある。そんなのでいい。星いくつのホテルは何万円かするが、そういうところには泊まらない。どうせ、朝早く出かけ、夜晩く帰ってくる。ホテルライフを楽しむ時間はない。寝るだけの部屋があればいい。

 治安はどうなのか。中国はいまは失業者か多く、倒産破産もすごく、前に行ったときよりかなり悪いとは思うが、見た顔は中国人と同じだから、そんないい恰好では行かないようにする。食べるものも屋台とか市場だから、外で庶民と混じっていただく。公園の太極拳にも混ざってみよう。今度は翻訳機も買って持参したい。同時通訳で会話ができる。それも安くなって、3000円から売っている。

 アゴダは調べたら、ものすごい不評で、口コミの嵐、アゴダのサイトにもそれが載っていて、アゴダは開き直り、中にはそういう苦情もあるが、それで済むくらい事故は少ないと書かれていて、自虐ネタにして逆手で利用しているところがすごい。わたしもイタリアに行ったとき、ローマのホテルをアゴダで予約してクレカで払ったが、現地のホテルで二重に取られた。アゴダで支払ったメールを見せても信用しない。頭に来て、三千円くらいだが、そのレシートをケータイで写真を撮って、帰国してから、アゴダにクレームを入れたが、返金はなし。騙されたわたしが悪い。

 なのだが、そういうことはいままでもかなりあって、スムーズに泊まり歩けることはない。泊まるホテルが日曜で閉めていて、予約して支払っているのに、ドアが開かないし、誰も出なかったり、別のホステルでは、予約していても、満室と断られ、ダブルブッキングかと、交渉しても埒があかないので、高いホテルに泊まることになる。そういうトラブルは普通にあるから、わたしは怒らない。野宿してもいいし、ファーストフードでもどこでも寝られる。トラベルとトラブルも楽しむ。そのアゴダで上海四泊、上海では、日帰りで杭州と蘇州にも行ってみる。それとマカオ二泊、香港一泊を予約した。安宿ばかり。その宿だが、YouTubeを見たら、中国人の案内で上海が入ったが、外国人は安宿に泊まれるところと泊まれないところがあるとか。警察でいちいち登録しないといけなくなるとか。面倒だが、どうなのか。そのホテルによって違うらしい。まだ自由ではないのか。

 新幹線の切符も予約。香港から上海は距離がある。8時間くらいかかるとあった。陸路の景色も明るいうちだから、見て行きたい。

 長く旅行するときは、行き当たりばったりで、予定もどうなるか判らないので、日本から予約することはないが、前後で十日くらいの旅なら、みんな予約しておく。即日、チケット発券で送られてきた。マカオは海の傍のリゾートの宿なので、五月でも泳げるかもしれない。

 これからは、また年に何回か行こう。いれば息子も便りにするが、いないといないようにするのだ。また老後の自由で羽ばたきたい。